Ep.1 -炎夏-
西暦2019年08月11日 火曜日
今年の夏も相変わらず暑い。そんな事を去年も言ったような。そんな事しか考える事ができないくらいには暑い。
いわゆる地球温暖化だろう。二酸化炭素とかの気体が地球中に充満したんだとか。でも西原はすでに地球温暖化は終わってるって言ってたぞ?
なのになんでまだこんなに暑いんだよ。おかしい、おかしすぎる。
「……って、そんな事考えてても頭痛くなるだけか。やめやめ」
これは、生まれて間もない無知な少年がこの炎夏を飛び出し、摩訶不思議な世界を冒険するお話だ。
少年が小さな歩幅で山道を駆け上っていく。
青色のキャップ帽に半袖半ズボン。夏場にはもってこいの服装。それでも暑いのか、首には汗を拭くために使うのであろうタオルが掛けてある。
山道の周りは木々ばかり、そして整備されている割にまあまあな斜面。誰がどう言おうと山だろう。
そんな山道でも、すいすいと登っていくところが若人のすごいところだろう。
「はぁはぁ、ほんとにこの先に公園があるのか?」
少年が向かう先は山の中腹より少し上にある子供達が遊ぶには十分な広さがある広場がある。そこから見る町はどんな展望台よりも綺麗だとか。
「……それにしても、暑すぎるだろ。しかも登っても登っても全然公園見えんし!今度西原に会ったら1人で登らせてやる」
夏の暑さと永遠と続く道に愚痴をこぼす。こぼすのも理由はない。
兵六山。戦国時代、とある脱獄兵数名が約6年この山に身を潜めた事から兵六と名付けられた。標高は約240m、広場が中腹より上となれば、少なくとも120m以上登ることになり、それが小学生ぐらいの小柄な少年が登るとなれば、相当の時間と労力が必要となる。
それでも少年の心が折れることはなく、どんどん上へと足を動かしていく。
「はぁはぁ……え、あれじゃね?頂上じゃね!?」
その先には数十分少年が見てきた斜面はもう続いてはいなかった。
少年は急ぐように山道を駆け上がる。コケそうになるが、自慢の脚力でその場をしのぐ。
「はぁはぁはぁはぁ……やっと着いた……はぁ」
久しぶりの平地に歓喜しつつ、数十分間斜面を登った事により足と体力は限界を迎えつつあった。
少年はあまりに疲れ、膝に手をつきさっきよりも呼吸が荒くなる。
「はぁはぁ…やば、ちょっと吐きそうかも…」
そう言いつつ少年は頭を上げる。
本来少年の目の前に現れるのは随分前に見飽きた木々の緑だが、今回は違った。
「………………え………え」
少年の先には真っ赤な色をした“何か”の身体だった。
巻かれた長い尻尾、広げると数十メートルはありそうな巨大な翼、いかにも凶暴な手足の長い爪、長い首の先にはトカゲのような顔、2本の角、紅色の体表。
誰が見てもこの名前を口にするだろう。
「ど、竜だ……」
『目が疲れてた全然気づかなかった。てかデカすぎんだろ!普通にプールくらいはあるぞ!』
どうやら竜は睡眠をとっている様だが、少年の身体は奮い立っていた。
普通の人間なら何かの映像か何かだと思うかもしれないが、この少年はまだ子供、この状況をすぐ信じてしまうだろう。
ドラゴンはどのアニメでも強く凶暴で人を殺す生き物だ。子供からしたらドラゴンはかっこいいと思いつつ、自身の目の前に現れたら必ず死ぬだろうと考えるだろう。
だが、この少年は違った。
「……かっ、かっけえぇぇぇぇぇぇえぇぇぇ!!!」
先ほどまで恐怖で奮い立ってしまっていた少年は、ドラゴンは怖いという印象よりもかっこいいという印象が勝り、少年は恐怖の感情から興奮の感情にきり替わっていた。
少年は竜に触れれる近さまで近寄る。
「す、すげえぇぇええ!触っていいかな?触っていいかな??触っちゃお!触っちゃお!!」
我慢できず少年は竜の身体を撫でるように触る。
竜の代表は鱗のように硬く、少し光沢がある。魚類や両生類のような特徴もありつつも、素は爬虫類に酷似している。
「……ツルツルだ。意外だなぁ……ほかはどうかな?」
それから少年は竜の至る部位を触りまくった。尻尾、翼、爪、残されたのは顔だけだ。
「最後は顔かぁ…起きないかなぁ……」
少年は深く考える。もし起きたらどうなるか?ワンちゃん友好にできるか?などと考えているが、その考えは無意味となった。
「好奇心は止められねえんだわ!」
そう言い少年は顔の側まで立ち寄る。そして口元を撫でる。
「でかいなぁ…牙もすごいな、それに鼻息も」
鼻息はこの星にいるどんな生き物よりも荒そうだ。腔内からむき出しになっている牙は1本1本が大きく、象ぐらいなら人噛みで逝ってしまいそうだ。
「………目はどうだろ……いや起きそうだな……いや、好奇心を優先しよう」
少年は竜の瞼に手を伸ばした。
「あれ、全然上がんない。ふんっ」
少年は勢い良く両手で瞼を開く。そこには綺麗な“ゴールデンイエロー”をした猫のような目があった。
少年はその綺麗な眼球に夢中で、竜が鼻息をやめている事に気付いていなかった。
「…………やっぱ綺麗やな。いや〜こんな綺麗な目してるのにアニメとかだったら基本悪役だもんn」
少年が言葉を失う。竜の眼球が360°動いた。
少年は一度瞼を閉じた、すぐに開く。眼球は動く。もう一度瞼を閉じ、また開いた。この時少年の表情は無だった。
「どいてくれないか?」
竜が口を開く。
「!?」
少年は動揺する。竜が人語を口にした事に。
少年はすぐに竜から距離をとる。
「はあぁぁぁぁぁああぁぁぁぁあよく寝たぁ」
竜は立ち上がり、大きな身体を広げ欠伸をする。
「で、君誰?この星の生き物?」
顔が無表情で固まっている少年は、しばらく言葉を発さない。
「…………大丈夫?」
竜は固まっている少年を心配する。
「まあ固まるのも仕方ないか。僕、竜だし」
「はっ!」
少年が意識を取り戻した。だが動揺は収まらない。
「き、君なんなんだよ!?急に日本語喋りだすし、人間なんじゃないのか?」
「質問を質問で返さないで頂きたい。それに今言っただろ?竜って」
少年は大きな身体に圧倒され、なかなか頭が回らなかった。
「………そうだね、この身体じゃなかなか話せないよね。僕もその身体になろうか」
そう言った竜は突如光を放つ。その光はどんどん小さくなり、やがて少年と同じくらいの大きさの人間の形となる。
光が消える。少年の目の前に現れたのは、先ほどの竜と同じ目の色をし、緑色の髪色をした少年だった。
「どう?これならそんな怖がんないでしょ?」
『やばい、余計情報が完結しない。なんで日本語喋れるんだ?なんで人間になれるんだ?まずなんでここにいるんだ?』
少年の頭の中はすでにパンパンだった。
「とりあえず、君の名前教えてよ?」
「お、俺の名前?“一ノ瀬碧”だけど?」
「………それはどこまでが個人名でどこからが苗字?」
「一ノ瀬が苗字で、碧が個人名だよ。で、お前の名前は?」
「僕の名前は“ユーリ・フォールン=ヴァルキリー”だよ。ユーリが個人名でヴァルキリーが苗字、フォールンは知らない。気軽にユーリって呼んでよ」
『なるほど、いわゆる外国人の名前だ。苗字よりも先に名前がくる。でもフォールンっていうのがよくわからん。まあそこは考えんようにしよう』
「じゃあ俺はアオイでいいよ、よろしくユーリ」
「よろしく」
碧は右手を差し出す。ユーリは少し違和感を感じるが、受け入れるようにユーリも右手を出し、握手を交わす。
「それで、1つ1つ問題を片付けていこう。まず、ユーリは何者だ」
ユーリに指を差し、細い眼差しで問う。
「だ〜か〜ら〜僕は竜なんだってばぁ〜」
「………………」
少し沈黙が走る。そのまま次の問に行く。
「じゃあなんで日本語喋れんの?」
『何気にここが1番気になるかも』
「それはね、“BG”だよ、BGを使ってるんだよ」
碧は困惑する。いつもの日常から聞き慣れないものが耳に入っていき、さらに不思議が増える。
「BGって何?妖怪ウォッチとかポケモンとかの?」
「そのなんちゃらウォッチとポケモンってやつは知らないから、1から説明するとなら…そうだな……あそこのゴミ箱見て、空き缶があるでしょ?」
ユーリが指を指す先には、作業員がサボっているのか、パンパンになった鉄製のゴミ箱があり、そのすぐ右にコーラの空き缶がある。
「…あるけど…なんかできるの?」
「その通り!よくあの空き缶を見ててね」
ユーリが空き缶の方へ手を伸ばす。そしてユーリは手のひらに力を込める。
すると、空き缶は突然ユーリの手のひらの方に勢い良く向かっていき、そのまま手のひらで掴める距離で急停止し、空き缶を掴む。
「……どう?これがBGだよ?」
そう言いユーリは空き缶をゴミ箱へ投げ捨てる。
「全く分からん、逆に今ので分かるのか?」
「えー前行った星の人たちならすぐわかったんだけどなぁ………この星の生き物の頭が悪いのかな」
「失礼な!」
「ごめんごめん、じゃあBGについて語ろうか。まず、BGの名前から。正式名称はBreakGalaxia、宇宙の破壊できる力って意味らしい」
「じゃあギャラクシアブレイクにすれば良かったのに」
碧に疑問が浮かぶ。だがユーリはすぐに解答を答える。
「そんなことしたら不謹慎じゃないか…って誰か言ってた」
「不謹慎って何?」
「僕も知らん……じゃなくて、BGの話。BGはいわゆる超能力みたいなものだ。僕がさっき使った引寄の能力も、翻訳の能力も全部BGの力。あ、能力って言うのは技みたいな感じ」
今ユーリが説明した事を碧は全て頭の中に入れた。そう、入れただけであり、理解はしていない。碧の頭も限界が来ているようだ。
「……わかった、わかった。じゃあこれが最後の質問だ。…なんでこの星に来た」
『正直もっと聞きたいことあるけど、ここが1番心配だ。一応名前を呼び合う仲にはなってるけど、この星壊しますとか言われたらもう俺の人生詰みだからな。会話が出来るなら聞いてみよう…』
「そりゃあまあ暇だからだけど?」
「…………え?」
突然の言葉により、碧は前半の考えが全て無駄になった事を知る。
「…………まじかよぉぉぉぁおおぉぉ」
それから碧はユーリと別れ、自宅へ帰った。
「んー疲れた、久しぶりに同い年くらいの子と喋ったなあ〜。にしてもこの星……綺麗だな、海水も青色だし、夕日も美しい。もうちょっとここにいるのも、ありかもなー」
そう言いユーリは芝生に寝転がる。
「ただいまあ〜」
碧が玄関のドアを開ける。廊下とリビングの間のドアは開いており、そのままリビングに入っていく。
「あら、おかえり。こんな時間までどこいってたの?また滝野くんたちと遊んでたの?」
キッチンにはエプロン姿の母がいる。
「いや、ちょっと山登ってた」
その発言に母は驚愕する。子供1人が兵六山に登ったことを。
「え!?兵六山!?碧1人で!?凄いわね、ケガとかしてない?」
「うん、特にしてないよ。一応人いたし」
母は碧に側による。碧の身体を隅から隅まで見る。
「人ってそれ、危ない人じゃないわよね?」
「うん、俺と同い年くらい」
「そう…ならいいけど」
「それにね!あいつ実は…」
碧は思い出した。帰り際にユーリから言われた事を。
「いいかい、今日僕と出会った事は誰にだって言っていい。だけど僕が竜っていう事は誰にも言ったらダメだからね!絶対だよ?絶対!」
「わかったわかった。それくらい記憶できるよ、俺もう4年生だし」
碧は自信に満ち溢れているのか、自分の胸を叩く。
「?」
母が不思議そうな顔をして碧を見る。
「えー…そう!実はあいつ外国人なんだよ!」
咄嗟に頭に浮かんだ事を口にする。それでもかなり動揺している。
「そう。その子はとっても日本語が上手なのね」
「うんうん、めちゃくちゃ。ほんとに」
「お兄、ゲームどこやったの?」
階段から妹が2階から降りてきた。
「俺のベッドに置いてあるよ」
「う〜い」
そう言い妹が2階へ上がっていく。
「あ、栞里〜お風呂沸いたからすぐに降りてきなさいよ〜」
「私お兄と入る〜〜」
「はあ…ほんとかまってやなあいつ」
こうして碧とユーリが出会う事になったのだが、まだまだ2人の関係は進んでいく。
To Be Continued…
Characters
No.01 一ノ瀬碧 2009.09.03
備考:小学4年生
No.02 ユーリ・フォールン=ヴァルキリー ????.??.??
備考:竜
BG所有者 固有能力:???
No.03 ????? ????.??.??
備考:一ノ瀬母
No.04 一ノ瀬栞里 2012.09.26
備考:小学1年生




