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くたびれたおっさんが酒場に落ちていたのでひろったら王だった件  作者: 御厨 つかさ


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17 闇の光 3 



「困ったな。」

そして、退出した静華を見送って。

光華は風に髪を任せながら、首を傾げていた。

「…こまった、」

そうして苦笑する。

静華の見開いた眸、蒼褪めた容貌。

かれを凝視したその眸。

 …けれど、その驚きと、そこに予感されることは別によかったのだ。

 まあ、よかったなんていうと、また怒られるんだろうが。

真面目な弟の性格を思ってすこし首を傾げる。

まあ、親父があれだからなあ、…良く似た親子って奴か。

そういう光華自身は、どうも聞くにつけ、過去をしるものからすれば似たのは静湖の方にらしいが。

いや、それはともかく。

「…真面目だからな、」

苦笑する。顎を軽く撫ぜて、苦笑を零したままいまは閉じた扉を見た。

別に構わないのだ、それがいつ訪れようと。

それが事実だ、―――。

おそらく静華がいま見たものが、いつ訪れようとそれはおかしくないいまの氷華の都の現実なのだ。

それだけのことだ。

戦に命を落とすのは、唯それだけのことなのだから。

いまは平時ではなく、いつからこの都が戦でなかったかなど、数えるのが無駄なことだ。

それだけだ。

 ――だが、な。

それは困るのだ、とおもう。

少しは困っている。

いや、困るというと、本当にですか、と以前詰め寄られたから一応訂正はしているわけだが。

 …本当だぞ…?

静華、とおもう。

それは本当に真実なのだ、…。

戦に己が虚しくなるのは当然のことだ。

だが、そう。

「――おまえが、くるしむのはな、…」

それは、困るんだが、と。

優しくいつくしむまなざしでみつめて、そっと呟く。

「…本当なんだが、な、…」

そして、桟を強く掴んだ。

弟が、静華が気づいていながらみない振りをしてくれた原因が。

「…――っ、く、そ、…、――――、」

 …闇王、と。

思わず呼んだ。くちに出しはしなかったが。

桟を強く握り締め、歯を食い縛り堪えるが。

「――…ああ、くそ、…―――、」

握り締める、堪え切れずに蹲る。

床に落ちて、悪寒に。

闇の黒い傷が、…――――暗國の近いこの場所で。

闇の主が近い此処で、比較にならぬほど強く内側から。

「…冗談、じゃ、…」

冗談じゃない、…と。

擦れた声が洩れた。

戦はすぐだ。

けれど、わかっていた。

此処はより、闇に近い。

それは仕方の無いことなのだ、…―――。

氷華の都は、闇に近く、だからこそ長き戦いを。

失われる戦を、つづけてきたのだ、…。

「…闇王、…――」

さっさと、こい、よ、…と。

呟いて。

弟との会見の間、何とか意識を保っていた光華は。

急激に襲う傷の痛み、闇の傷が息を吹き返し、闇の近さに歓喜を発し、力を得る中に、――――。

ことり、と意識を手離していた。

無防備な程に、床に髪が広がり、端麗な横顔が晒される。

四肢は、動かず無防備であれば、人をして驚嘆させるほどに細い。

少なくとも、常に氷華の都に光華将ありといわれた姿の呼び起こすものとは遠く思えるほどに。

光華は白い容貌を風に髪を弄らせたまま人形のように動きをとめた。

まるで、静華の予感を擬えるようにして。

氷華の都に吹く風は音も忘れ、静寂に落ちる都に吹いていた。









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