15 闇の光 1
「闇の光」
迷うことを忘れよう。
希望を捨てず、そこに掲げて。
高く掲げ、灯を点し、闇に誰もが迷わぬように。
誰もがそれを見ることのできるよう。
誰もが道に迷わぬように。
闇に光を、灯火を。
灯火を迎えよう。
誰もがみることのできるように。
闇に光を。
1 プロローグ
「…――光華?」
冥暗道に足を踏み入れていた。
ふとひかれるように顔をあげる。何故、そうしていたのか。
何が顔をあげさせたのか。わからぬままに闇王は荒涼とした道を。
険しい峡谷の丈高い山脈を見上げて闇王は足を止めていた。
「どうしたの?」
「―――千歳、いや、…」
先を急がねばならぬ道だ。迷う暇も振り返る刻もない。
千歳が問い掛けるようにみる。吾千も足を止めて闇王を振り返る。
「どうしたんだ?闇王」
道に迷ったか?という吾千に微笑む。迷おうにも道は無い。
「…――いや」
短くいうと歩を進める。その闇王に。千歳と吾千は、足を速め無言で道を急ぐ背に目を見交わして、かれらもまた歩を速めた。
2 光華
馬を駆けさせる。
常態であるなら五日。けれど、光華は馬を駆り、一日半で到着していた。
氷華の都、華央の眠りの塔が見える。
走らせたまま馬を飛び降り、尻を叩く。馬は勢いのままに駆けていく。
駆け去る馬に視線を微かにおき、光華は地に立ち改めて氷華の都を見上げていた。
剣を手に確かめる。灰色の影が落ちる氷華の都。
無言で見上げ、息を整えた。
足に地を踏み締めて歩き出す。
灰色に都が翳るのは、眠りの塔に悲歎の色彩が色濃いのは。
光華は周囲を見渡した。
馬を放ちいま一人大地に立つ光華の前にそびえる白き防壁。
けれど、大地に人の気配はなく。
まるで、既に華央は墓標のようだ。
碑であるのだと。
既に、この氷華の都は。
滅んだ鳳都と同じように。
歯を軽く噛み締め、光華は浅く俯いた。
いま、此処に姿を現した光華に、誰何の声ひとつ掛ける兵もおらぬ。
防衛に兵は割かれ、もはや通常の旅人を見咎める衛兵さえいないのだ。
目を一度閉じ、静かな貌で光華は立ち止まった。
誰もいない地に独り立つようにして、しずかにたたずむ。
白く氷華の都を覆うのは灰色の影。
天を覆う雲が晴れず、暗雲がこの地を浸しているのだ。
黒雲が闇が覆い、空に青さをみることがどれだけ遠いか。
旅に出て、光華は知ったのだ。
空に青さがあるのだと、子供の頃にみたきりの、その空が存在するのだということを。
絶望を胸に飼っていた。
戦いながら疲れ果て、いつかこの地に我が血を吸わせるのだと。
それに疑いを抱いていなかった。
…そう、いなかった。
けれど、そうだ。…
静都に青空があった。
美しい空がそこにあった。
亜千達は、何と戦をしらなかったという。
…善きことだ、それは。
そうして、そう。ならば。
答えはいつも単純なのだ、…。
瞳をあげた。
灰色の空は変わりはしない。
この氷華竜国を、氷華の都を、闇は既に取り巻いている。
既に都は落ち掛けているのだ。
なれど。
闇があるなら、はらせばいい。
雲を払う風があるように。
いつか明けるのだと、知ればいいのだ。
夜の明ける前は一番暗い。
暁光の射し染めるその前が、一番夜は暗いのだ。
笑みが光華の口許に浮かんでいた。随分と不適な笑みだ。
剣の柄に軽く手を置き、城壁を見上げ歩き出す。
不敵な笑みの気配を軽く漂わせ。
光華は歩を進めていた。
くた王、連載中に変えていてようやく続きをUPできました
少しずつですが、よろしくお願いいたします。
しばらくファンタジー路線です、はい
でもSFなので安心してください(?)
それでは、よろしくお願いいたします!




