11 おまけ4 王、年齢を知る
くた王が地味にランクインして頂いているので小話の御礼です
よろしければお楽しみください!
「二千才…?そんなにわかいのか」
驚いていうのは王。処は帝都――帝国主星の都にあるカフェ。
何でも帝都観光に欠かせない有名処なんだよ!と光華が主張した為に、何故か摂政がその正体である美少年まで連れてきているおしゃれなカフェである。
「深狼は、おれが造ったもんね!王がいなくなってから、惑星管理に迎撃システム副管制がほしーなっ、ておもって!」
「そうなのか、…それは、おれのことがわからないはずだな」
明るくにっこりいう光華の言葉に、深くうなずいていうのは王。
対して、王の正面に座って少しばかり居心地わるくちんまりといるのは深狼である。光華は白銀の髪に翠の瞳が明るい美形。その右隣におとなしく座っている摂政少年は同じく白銀の髪に水色に蛍光の僅かに乗ったような不思議な瞳の美少年。さらに、向き合う深狼は、灰黒の髪は緩やかに波打ち無造作に背に括られていて、伝統的な民族衣装を着ている美形にみえる。
「…――光華、おまえ、めんくいだったか?」
それをあらためて確認して、王が光華をみてたずねる。それに、不思議そうに見返して。
「めんくいって、なに?あ、調べてみたけど、別に人間の容姿なんてどうてもいいよ?」
人型をしてはいるが実際の本体は恒星間航行船のメインシステムである光華が、王の言葉に意味を尋ねてから瞬時に調べたのだろう。首をかしげて答えるのに、王も首をかしげる。
「いやな?このカフェに入ってから、おまえのそのどうでもいい容姿に対して、この一団が実に目立ってるというのは、―――もしかして、本当に他意はなくて、何か企んでいるからこうして目立ってるとか、容姿の良い集団として認識させているとかではないんだな?」
重ねて訊ねる王に、きょとん、として光華がこたえる。
「え?何にもないよ?そっか、人にしたら、おれたちの容姿って、…――目立つの?どんな感じ?」
本当に不思議そうに訊ねる光華に、かるく息を吐いて王が答える。
「そうだな、…多分だが、この地域――少なくとも帝国星域での流行としては、―――周囲の反応からして、綺麗だとか、美しいとかいう感じの評価になるんじゃないかな?摂政殿、この地の流行はご存じかと思うのですが、いかがでしょうか?」
訊ねる王に、摂政少年――とんでもなく麗しい美少年の姿だが――が応える。
「はい。おそらく、王のように平均的な容姿とは異なり、大変麗しく平均を1とすれば、100程の評価を受けるかと」
「――――…そうか、――…で、光華。本当に意図はないのか?」
疑わしげに王が訊ねるが、そこへ給仕がいちごパフェ他を運んできた為、光華が応えずにそちらに応答する。
「ありがとう!おいしそうだね!」
給仕が礼をして、全員にそれぞれの注文の品を置いていく。
無論、光華にはいちごパフェ。
「光華様、――食事をとられるのですか?」
深狼が不思議に思って訊ねる。その前に置かれているのは、光華がせっかくカフェにきたし!良い経験でしょ?と勝手に深狼の分を注文した――抹茶パフェだが。
美しく盛られた抹茶パフェを前に、どうしましょうか、と思いながらいる深狼だが。それに、明るい笑顔で光華がいう。
「いいでしょ!一応、食事がとれる機能もあるし!食べてみよーよ!」
「…そうですか、…。わかりました」
えへへ、いちごー!とかいいながら、光華がいちごパフェにスプーンを入れるのをみて、しばしその食べる様子を観察してから、真似をする。
正直にいえば、抹茶パフェがどんな味であるのかもまったく理解はできないのだが。
摂政少年の前には、珈琲といちごショートケーキが置かれていて。
ちら、と深狼が上品に珈琲を飲み、いちごショートを食べていく摂政に驚きながらも、そちらの仕草も真似るデータに収納していく。
王はといえば、一人甘みは頼まず、珈琲をくちに運んでいるだけだ。
深狼としては、人が使用する目的を主として開かれているカフェなどに入るのもはじめてな上に、抹茶パフェに挑戦するなど本当にどうしたらいいかわからない体験であるが。抹茶パフェに乗っている、栗のきれいに丸く剥かれた甘いシロップにつけられたものを匙にとって、しみじみ見つめる。
何かわからないですが、――…光華と摂政の処にあるいちごとかいうものよりは、取り扱いが楽そうだ。匙で取り扱う加減が、どうもあちらは柔らかそうで難しそうにみえる。データベースと参照し「いちご」と「くり」及び「抹茶」そして、「パフェ」というものを検索して確認はしたのだが。生体を使用して、その手に匙を持ち、硝子の容器に入れられた柔らかなものから、ある程度の堅さを持つものまでが複雑な構成をとりまぜるようにされているパフェを生体が食べるようにしてくちにしていく、という動作は案外大変なものだった。
―――難しい、な、…。
そもそも生体を使ってはいるが、食事といった栄養源を摂取する方法をとる必要性はまったくない。したがって、いまもくちに運んだ抹茶パフェは、生体内に入れた瞬間に分子分解してエネルギー貯蔵庫に保管している。
おそらく、これに有機生命体ならば「味」というものを重視して食事をとる文化があり、このカフェというものはそうした文化交流の場であるのだろうが。
――それにしても、何故、光華様は私をこんな場に付き合わせておられるのか、…。
何とか、硝子容器をこわさずに、がんばって抹茶パフェを食べている深狼と。
少しばかり眉を寄せて、光華を疑うようにみている王。
そして、にっこり笑顔で。
「おいしーパフェだよね!いちご最高!」
と、満開の明るい笑顔でたのしくいちごパフェを食べている光華と。
「確かに、こちらのいちごは大変おいしいですね。流石、農業惑星の中でも果実類を得意とする豊穣惑星を複数擁する大麗貴永華が経営されているカフェだけのことはありますね」
「糖度も酸味のバランスも完璧っ!」
涼しげな顔でいう美少年摂政に、光華が満面の笑顔でいちごを褒める。
そして、深狼は。
――本当に意図はないのか?と。
重ねて訊ねた王の意図を、ようやく知ることになっていたのだった。
背後に立つ気配が、寒い。
長身――おそらく、光華や深狼と同じくらいの身長だろう――の人型をしたなにものかが立つ。
一体、何ものなのか。
ちなみに、壁際に設けられたクッション性の良いソファに腰掛けている王を正面にカフェの通路側を背に深狼は座っている。つまりは、一番無防備な位置だ。
光華が何も考えていないように王を連れて座らせたのは、王を一番警護しやすい位置。その隣に光華が座り、さらに隣に摂政少年が座る。
このカフェは透明なシールド越しに景色がよくみえるのが売りだが、王から景色はよくみえても、外から王を狙うには深狼、そして、摂政少年に光華が邪魔になる。王が座る左側は開いていて、逃げる動作がしやすくなっている。さらに、隣席――空席だが――との間を仕切る板がある為、そちらの側面からも狙うことはやりにくくなっている。
というわけで、背に立たれた深狼は随分と居心地がわるいのだが。
光華がにこやかに相手を見あげていうのがみえる。
こちらの笑顔も、あまり至近距離でみたいものではないな、と深狼はおもう。
とても綺麗な光華の笑顔だ。
「こんにちわ!このお店の方ですか?とっても美味しいいちご!ありがとうございます!いちごパフェ、むっちゃおいしかったです!」
「ありがとうございます。御客様」
言葉は丁寧だが、淡々という声は氷点下まで冷えた気配がする。
この冷えた気配は気のせいではないだろう。
これを感じ取ることができるのは経験だな、と深狼がしみじみ考える。
光華に対して、あきれと怒りなどを絶妙にミックスした宰相。
光華と宰相にはさまれて、幾度もこうした感覚を覚える経験をしたことが、いまこの状況を読み取るに際して役に立っているとはいえるだろう。
――――…あまり、したい経験じゃないがな、…。
そして、大麗貴というのが、帝国内の階級であり。大麗と簡単にいわれることが一番多いその階級は、皇帝を軸として運営される帝国において、五大貴族に数えられることを確認する。
――――…船に帰りたい、…。
無窮の宇宙空間に浮かんでいる方が、よほど気楽だ。そこが実際には無ではなく、さらに放射線や突然のバーストなど、いくらでも危険を伴う対処を必要とする空間であったとしても。突然、ブラックホールが発生した方が、この状況下よりましだろう。
にこやかに笑顔で相手を見あげている光華。
対して。
深狼にはまだ外見などを認識できていない相手が、冷えた声で続けているのを。
「お久し振りです。光華殿、――――大層珍しい外観をなさっていますが」
「そう?結構気に入ってるんだ!」
王がそっと、額に手をあてて眸を伏せるのが深狼の目に入る。
「そちらはかわらないね!永華!」
「――――そのようですね、…兄上」
怒りと深い――あまり追求したくない感情を感知して、深狼が動けないまましみじみとおもう。
―――宰相、…に連絡を、――…休暇中でしたか、…。
本来なら、ここで何があっても掲示板を立ち上げてでも宰相に緊急連絡を、と思ってから、眸を伏せる。
――もしかしなくても、宰相が休暇中であることも、…計算に、…入れておられますね、…。
宰相は、恒星間航行船内部でしばし休暇をとっている。確か、しばし周辺との接触を制限して内部整理を行うメンテナンスに入っているはずだ。航行時にはできないメンテナンスだから、七十二時間は外部から接触することはできないはずで。
つまりこれは、―――…。
深狼が王をみる。深い溜息を吐く王に、しみじみと同意したくなった。いま危険を伴う為に、溜息を吐くというリアクションはとれないのだが。
「うん!久し振りっ!」
にこやかに笑顔でいう光華が、眩しい。
――つまり、いま光華様を止めることができるものは誰もいないというわけですね、…――。
正確にいうなら摂政は止めることができるだろうが。この場に付き合い、しかも光華に似た美少年な姿を選択している点で、すでに光華に加担していると考えた方がいいだろう。
――――たすけてくれ、どうしたらいい?
単独で宇宙空間に浮いている迎撃システム内部に、生体を操りながらも何とか別領域に区画を区切り、深狼はそれを立ち上げていた。
某氷華国掲示板
なんでも相談伝言板
相談です
誰かたすけてくれ!将が暴走して、宰相が不在で誰も止められるものがいない!
王に摂政までいるんだが、どうしたらいい?
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かなり切実な掲示板への書き込みに、
はたして新装備に換装中の仲間達から返信はつくのか?
何にしても、この寒い空気は遠慮したいと真剣におもっている深狼である。




