第4話 先の後
暑い…
「つまり、君は一度死んだと…?」
「はい。」
俺は今までに起こった出来事を全て話した。
「驚いたよ、正直。私は今…いや、君のように一度死んで冷静でいる人間は見たことがない。」
長いロングヘアを髪ゴムでとめる姿は、まさしく美人である。しかも、胸がでかい。F、いやGはあるかもしれない。俺だって真っ当な高校生なんだ。そうも思いもする。
「あの、名前…名前はなんていうんですか?」
「ん、ああ…まだ言ってなかったな、私は日見風総というものだ。訳あって偽名だが、君の父親がわりをしている、北川から君を探してほしいと頼まれた。しかし、実に奇妙だ…」
「何がですか?」
「警察だよ。」
「警察…ですか?」
俺は顔をしかめて、彼女の方を見た。
「本来ならば、行方不明者を探すはず、しかしだ。北川は警察に君が行方不明になったことを伝えても、君はこの世に存在しないと言ったらしい。さらにここに来るまでいくらの方法を試したと思う?」
「歩いてきたんじゃ…」
「君は知らないようだが、現在この山は立入禁止区域と化している。そして、今から10分前だ。こんなニュースが流れた。「「とある高校生が同じ高校の生徒を人質に取り、この山に潜伏している。現在までに10数名が重症及び死亡、片手にナイフを持っている」」と。」
彼女は俺の顔が写されたスマホのニュース番組を見て、身体が震え上がる。
「俺はそんなことをやっていませんよ、だって…」
「君の言いたいことは分かる。ヤツら、私は魔食と読んでいるが、君はそいつらに襲われていた。つまり、君の犯行は不可能だ。だが、それは可能へと変わる、アダプターズによってな。」
彼女は目を大きく見開いて、話し始めた。
「今から、六年前の事だ。私は当時、君と同じ高校生だった。ちょうど文化祭の用意が終わり、私が友人と家に帰ろうとした時、奴らは突如現れた。私は必死で逃げた、友を置いてな。私には勇気も力も後悔もなかった。ただひたすら、走った。だが、すぐに追いつかれた。ヤツらの口と思わしき場所には私の友人の…思い出すだけ無駄だな…今は奴らから君を救うことが優先だ。」
長い髪に隠された横顔から、ツーと涙が流れ落ちた。
「あの…」
喋りづらい雰囲気を噛み締めながら、俺は口を開いた。
「俺も、俺も友達を見捨ててきてしまったんです。だから…俺のために力を貸してくれませんか?」
「君…は本当にいつも私の想像の上をいく…」
「いつも…て?」
「気にするな、その友達というのは?」
彼女は涙を拭い、ライフルを手に取った。
「行くか…」
「ハイ!」
周りはすでに夜へと移りかけていた。
今回はちょっと短めですが、間話だと思ってください。(懇願)