第23話 襲撃
いたむね、身体が…
東谷高校は、東盆地に広がっている農作物生産地帯のちょうど真ん中あたりに位置しており、外に出るには東トンネルまたは、西トンネルを潜るしかない。そんな辺鄙な土地に娯楽などあるはずもなく、ただ旧軍事施設と自然が広がるだけである。だからこそ、と言っては何だが、西トンネルを抜けて、学生である俺たちは遊び場や休息の場を求めるわけであって、その場というのが今俺たちがいる「カフェココア」である。
「王を倒すってのは…?」
「そうか、君たちには王の存在について話していなかったか…」
アイスコーヒーを飲み干した剣城さんは、少し眠そうに言った。
「まず、何から話そうか…そうだね、魔食は何で人を襲うと思う?」
ありきたりな質問だったが、今考えてみると確かに何故魔食が人間を襲うのか分からない…
おそらく、人間から出る魔を食糧のようなものとして見ているのだろうと思う。だが、その質問の答えは違った。
「魔食が人を襲うわけは管理するためだよ。」
管理という言葉を聞いて真っ先に思い浮かべるのは、植物だとか動物だとかそんな感じのものを想像していたから、俺は一瞬混乱した。しかし、それは人間が一方的に決めつけてきたものであることに変わりはない。
「人という生物の誕生。これは彼らにとっちゃ、余分なものだったんだよ。」
剣城さんは続けて言う。
「だからこそ、人を管理する必要があった。もっとも簡単な死という方法で。そこにリーダーとして、生まれたのが王という存在さ。」
「でも、人間の数は彼らが想像する数千、数万倍に増えたってわけですね。」
「よぉく、わかってるね。そっちの渉くんは分かってなさそうだけど。」
渉の方を見た。
「そんな、馬鹿ではないぜ俺はよ。」
カフェにいる人間全てに聞こえるよな声だった。
たとえ、俺たちだけとはいえ、店長らしき男がこちらをじっと見た。
「お客さんどこかで見た事があるんだけど、有名人かい?」
思い出した。俺は今、指名手配班なのだ。
剣城さんに会うまで、特に人に合わなかったからすっかり忘れていた。
「俺、よく間違われるんですよ。模島金踏って知ってます?俺その人によく似てるって言われるです。だから、その人じゃないですかね…」
天井からぶら下がったテレビが唯一あるこのカフェが、一番の危険と捉えていたが店主はどうやら俺のことを名前を顔を覚えていないようだった。
「……あ、そうなの。確か、そんな名前だった気もするよ。」
「出ようか…」
剣城さんが言った。
すると、店主が。
「ミつけた…」
店主の姿が一瞬にして、変わった。右腕が肥大化し、今にも殴り掛からんとしていた。
しかし、剣城さんはどこに隠してあったのか分からないナイフを取り出し、魔を纏わせてその男に投げつけた。
「……ッイ!」
ちょうど、ナイフは頭に刺さり、一撃で絶命した。
「一旦山に戻ろうか。」と呟きながら、携帯電話を取り出し、誰かに連絡を取っていた。
俺と渉は剣城さんに導かれるがままにきた道を引き返す。
その道中、何人かの一般人が目の前に現れ、魔食に変体した。
「ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ!」
そう連呼しながら、俺たちに襲いかかったくる。
俺は「「アダプト」」で拳銃を作り出し、そいつらめがけて、弾丸を放った。
三人余りに着弾し、どれも軽傷であったものの退けることには成功した。
続けて、俺は閃光を作り出し、魔食に浴びせる…
その間に俺たちは姿を消し、一旦、近くの路地に逃げ込んだ…




