第20話 閃光
家の時計が壊れたんで買いに行ってきます。
気絶していた。というより死んでいた。という方があっているのかもしれない…
体のどこにも力が入らない。魔を纏って俺は誰かの攻撃を受けたはずだ。だが、思い出せない…
「か…め、かも……め、かもめ!起きろかもめ!来るぞっ!」
渉の声で意識を取り戻した俺は今がどういう状況なのか理解できずにいた。
ドーンと破壊音がこちらに近づいてくる。それは恐怖の象徴である死を運ぶが如く、圧倒的な意志を見せていた。
「どうした?一度や二度ではお前らは死なないはずだろう。さっさと俺の魔を食いにこないのか、それともビビったとかは……まぁ、無いか…だが確実に仕留めることには変わりはないよ。」
「俺たちは魔食じゃねぇって、」
渉がそう反論をいう暇なく浴びせられるその攻撃は周りの木々を薙ぎ払い、地面を抉る。
魔を纏った腕で飛んでくる小石や枝を防御するだけでも大変だというのに。しかし、逃げ惑う中、相手の行動パターンを全て叩き込む。何か反撃のチャンスは無いかじっくり観察する。すると、あることに気づいた。この人は剣を薙ぎ払う時に魔を剣先に集中させる癖がある。そこから、発生する衝撃波によって広範囲を攻撃している。
「渉!やつの剣の動きを何秒止められる?」
「何秒欲しい?」
即座に理解した渉に俺は足を止めて、言った。
「三秒だ。」
「了解っ!」
そう言うと人間の姿から魔食の姿に変わり、やつの懐に飛び込んで行った。
「ん?自殺願望でもあるのかい君は?」
斬撃の中を再生しながら、ものすごい勢いで進んでくる渉に、少し引いたのか三秒ほど攻撃が止んだ。
俺の力は言ってみれば何かを「つくる」ことに等しい。木製の机が木でできているように、飛行機が多数の部品から作られているように何かを「つくる」には「材料」が必要になる。それが魔であり魔の総量に合わせて作れるものも変化する。一日三回しか使えないのは俺本体を作ることが莫大な魔を消費するからだろう。そして、俺の魔力量は日々増加している。つまり、俺は今何でもつくれる…気がする。
発動条件は自分の中でつくりたいものの外郭を想像し、魔を流し込む。あとは掛け声をするだけ。
腕を伸ばし、人差し指を伸ばす。その人差し指の先から出た魔は、この場で最も大きい存在だった。
「「アダプト!」」
その瞬間辺りを閃光が包んだ。激しい爆発などはなく、ただ、ただ光っただけ。
だが。
「気ぃい抜いたなぁあ?剣城さんよぉ、」
魔食の力は熊なんかじゃ比較対象にならない。数百倍はあるのだ、頂点の生物と言ってもいいだろう。それに魔の力が加わったとなるとその威力は計り知れないものになるだろう。しかし、問題がある。当たらなければ意味はない。それが戦闘経験豊富の人なら尚更だろう。人は初めてのものには警戒する。そして、必ず「動きが止まる」。
「俺の全力、食らえやぁアアア!」
渉の一撃は惜しくも外れた…いや、外されたのだ。直前で剣城はガードすることを諦め、回避に全神経を注いのだ。だから、渉の一撃は、回避できた…
「残念だったね…僕が彼を警戒しないわけ無いじゃないか。」
そう、残念だよ。アンタにとってはな。
「信用してたぜアンタのことッ!」
渉がそう言った時には俺は魔を全て拳に注ぎ込み、放った。
「やる…」
その言葉をいう前に剣城は吹き飛ばされたのであった…




