第17話 天命
※主人公は船島かもめです。
俺には生きていると実感する時がある…
一つは人間をなぶり殺ししている時。もう一つは絶望の中、こっちに怒りと憎悪の目を向けて必死に足掻こうと無力に散っていく姿を見る時。そして、最後は…
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「やっとお出ましか、人間?」
「そうだな、お前を殺すために今、私の弟子を仕上げてきたところだ…」
「弟子、ねぇ…分かるぜその言葉、あの方に教えてもらった。」
「良かったな、嬉しそうで。たとえ熊でも知能はあるわけだ。」
「黙れ、お前らは所詮、俺たちに狩るためだけに生まれてきた病原体。排除されるために存在しているのだから。」
「お前の名前はなんだ?」
一人の青年が質問した。体は細く、戦っても俺が一撃で殺せそうな相手。髪は黒よりも茶色に近く、目はこちらをじっと見つめ、獣のように攻撃の瞬間を狙っている。いい、とてもいたぶりがいのある「敵」だと俺は感じた。
「ソウルだ。お前を今から殺す、楽しませてくれよ?」
「そうか、じゃあ今からやろう。感覚を忘れたくないんだ。」
その時、さっきまで微塵子のように思えた、その人間の周りが歪み始めた。悪臭のように立ち込めるそのオーラにはこちらを確実に「殺す」という意思が垣間見えたような気がした。
「いいねぇ、大好きだそういうの。強がってたやつがのたうちまわって、這いつくばって、命乞いをする。俺の一番の好物!あっ、でも一番好きなのは、何の抵抗も出来ないやつを痛ぶることかもなぁあああ!」
「先生、コイツは殺してもいいんですよね?」
「ああ、存分にやれ。」
戦闘体制に入ったその青年は俺に向かって、手刀を繰り出す。熊の体による厚い毛皮でその攻撃を難なく受け止める。そして、隙をねらい相手の腹を鋭い爪で切り裂いた。
「…」
沈黙したそいつを待つことなく爪での連撃を叩き込む…勝利を確信した時だった。
突如俺の俺の体に異変が起こった。体のバランス崩れ、一部が悲鳴を上げている。内部で多数の箇所が出血している。
「何をした?」とその人間に聞いても、何かに納得している感じでうんうんとうなずているだけだった。
さらに俺は気づいた。さっき付けたはずの爪跡が無い、いや最初からつけれれていなかっただと…
「魔を体の一部分に集中させると他の部分が弱くなる代わりにその部分が強化されるですね…」
「そうだ、殴りたい時は魔を拳に、ジャンプ力を高めたいのなら足に、守りたいのなら均等に全体に、魔を纏わせる…これが「方」。状況に応じて、魔を使い分ける力だ。」
「ググ、ガガッツ…!俺はまだ…戦えるぞ…話している余裕があるのかァァ?」
既に千切れかけている筋肉を再生し、勢いを取り戻したソウルは攻撃を仕掛けようと爪を研いでいた。
「お前の名前はソウルだったな…俺の名前は船島かもめって言う。お前が負けを認めるのなら殺しはしない…だが、それでもまだ戦うっていうなら俺はお前を殺す…」
「負けるこの俺が?冗談きついぜ、俺は常に人を痛ぶる存在、そう生まれてきた。テメェ如きの選択肢になんて興味はねぇ。俺は俺自身の選択をするのみ。」
「そうか…」
先刻よりも強くなったオーラを目にしながらも、ソウルは自身に溢れていた。なぜなら、魔を食らえさえすればこちらに分があると知っていたからだ。
「魔食は相手から出る何かを食らえさえすれば徐々にそれを吸収し、取り込み、自らの力として変換することが出来る。故に!お前は負けているんだよ。」
「負けている?」
「そうさ、俺はお前が俺に攻撃した時に既にお前の魔のオーラに噛みついていた。今は最高な気分だぜ?徐々に俺の力が増していくのを感じる。既に三十秒は経った、お前の魔は空っぽに…!?」
「どうした?」
船島かもめは今を成長を続けていた。日見風が「立」を教える前からずっとかもめの魔の総量は増えていた。本来ならば一個人に対し、割り振られる魔の総量はあらかじめ決められている。しかし、かもめにそれが無かった。
無尽蔵の魔。本人の能力である「「アダプト」」はそれに見合うかのようにかもめに発言していたものであった。
「バカな、ありえねぇ。こんな、こんなn…ことは、ことが…」
動揺、それはわずかの時間であったがソウルの動きを止めた。そして、最大級の魔が込められたかもめの一撃は容易にソウルの体を粉砕した。
ドワぁああ!




