表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/19

第12話 生かす

終わった…

福垣、彼にはある癖があった。自分の1番はたとえ年上であっても、格上であっても、強者であったとしても自分の手札カードはたとえ自分が死ぬとしても決して見せないというものが……

別に彼自身がそういう心構えを持っているとかではなく、人間が息を吐く、吸うという行為をしなければならない様にそれが当然のこと、やってはいけないんだよと彼の脳に焼きついているだけの話であることは誰も知らない。

しかし、そんな彼が今、能力を使うということは彼にとって死よりも恐ろしく、屈辱なのである。だからこそ、彼が他人に能力を見せることは本気で相手を殺すことに等しく、生きて返さないことを意味する。


拡張する(ギブ)未来アドバンテージ!お前が今、見ている光景は全て、ワシの可能性の束。ワシが未来に起こす可能性のある動きをお前に見しておる。これによって、お前さんはもう、ワシを見つけることは不可能。」

(だが、おそらくこいつはそれすらも数分で慣れる事だろう。ならば、此奴コヤツの核を潰すことが最優先。しかし、さっきやつの心臓部分を刺しても効果はなかったが、手応えがあったことを見ると奴の心臓部は奴の中にあるが刺しても意味が無い、もしくは何度も刺すなどの回数条件付き…今までに相手をしてきて中でそれが最も可能性が高いと見た。)

まるで分身の様に動き回る福垣の可能性を一つ一つ消していく、ペスディアの周りをぐるぐると走りながら考えているとある一つの考えにたどり着いた。

「どうせなら、全部見せた方がええか。因果収束ドロップ・アドバンテージ。」


現在、福垣が使っている能力は二つ。相手に自分の幻影を見せる能力と未来を視る力である。未来を視る力では最大継続時間である十分間をニ分間に縮めることで相手の動きをより繊細に読み取ることができ、かつ視た未来が確定することはない。よって福垣の行動次第によっては未来が変わる可能性がある。そして、今使った能力は自身の可能性を収束させ、一つにする。これにより拡張する(ギブ)未来アドバンテージは使えなくなるが彼にとって1番有利になる未来になる。十分前、既に未来を見てしまった彼にとって死は確定している。彼にとって自身に有利とは何なのか…彼自身も知らない。


「試してみるか……」

福垣、彼はコンクリート製でできた地面を拳で叩き割ると、砕けたコンクリート製のカケラを一つ持ち上げペスディアに投げつけた。そのカケラはペスディアの頭部をかすめ、命中しなかったが先刻、福垣自身が倒した魔食の体を貫いた。

すると、ペスディアは胸を手で押さえ苦しむ様子を示した。

「何を…した…?」

「やはりな。お前は残機がある、それだけは教えたる。」

「残機だと…この我に…」

「気持ち悪いな、その言葉の意味を知らずに勝手に口から出る似非人間(ペテン師)は…」

その時ペスディアの中でうごめくものがあった。

「…ッウ!なんだこの悍ましものは?手が震えてしょうがない…何かを全力で殴りたい、殴りたい……殴りたいっ」

「それが怒り、人間で言うところの感情や。」

「感情……?感情とはいったい…?」

「人が生きるために必要なもの、お前らに必要ないものや…」


手どころか全身が震えてやまないペスディアを見下すかの如く、ゆっくり冷たく吐かれたその言葉には悪意を感じずにはえられないほど殺意が込められていた。少しずつ怒りを抑えつつ、動こうとするペスディアに神経を集中させながらも福垣は砕いたカケラの一つ一つを作業感覚でそこらじゅうに転がった魔食の死体に投げつけ、心臓部を破壊していく。そのたびに唸る、ペスディアを見ながら福垣は短刀を片手にもち警戒を緩めようとはしない。

どちらか一方が動けばこの状況が崩れるという時に最後の魔食の死体にカケラを打ち込むと同時にペスディアの動きが回復した。

「そうか…我は今理解したぞ…」

「何がや?」

「人の本質、言葉の意味、命の重み、そして油断とは…」


その言葉を聞いて、福垣が短刀をペスディアに刺そうと思った時にはすでに遅く、ついに右腕がもぎ取られた。

そして、前回よりも威力が増した発勁を五連続、コンマ数秒の間に彼の腹部に打ち込んだ。さらに右腕を刃物のような形に変え、彼の右足、左眼、脇腹をそれぞれ三回づつかすめるまたは、切り裂いた。体勢を崩した彼に対し、トドメを刺そうとする時、彼がした最後の行動は左手首への手刀であった。ペスディアの拳が彼の腹を貫き、勝利を確信したペスディアは何か言い残すことはあるかと言った。

彼が最後に何を見たのかは分からないがただこう一言、「お前は負ける…」であった…

暑くないか?外が。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ