惚れた理由
僕の中でカエルの存在はだんだん大きくなっていく。もう体の一部のような、運命共同体のような。そして食欲も増していく。でも太らない。カエルが食べる分と僕が食べる分。両方を食べてるんだ。
でも、困ったことに便秘になった。カエルに栄養をとられすぎているのかな?薬を飲むことにも慎重になった。カエルに悪影響が無いか考える。
だけど、寒暖差が激しいこの秋、僕は風邪をひいていない。弟の裕太と同じ部屋なのだけれども、裕太は、ゴホゴホ言ってる。
母が気を使って自分たちの部屋に連れていった。中2ともなれば、あんなことやこんなことに興味が出てくるのだが、食欲を満たしに行ってるせいか、あとは友達と話すことと、舞子のことだけ、それと家族のことしか、あまり考えられなくなった。
……舞子とはこの間の1件以来、何かと目が合うような?……勘違いじゃないよな?目が合うとニコッとするようにしてるけど、なかなかに恥ずかしい。でも、舞子も少し微笑んでくれる。……可愛いなあ……で、優しいんだよな。
僕、中林圭が、伊藤舞子に惚れたのは、僕が教科書を忘れたのがきっかけだった。
ある現社の時間、僕は焦っていた。確かに入れたはずの教科書がないのだ。代わりに入っていたのは現国の教科書。
「嘘だろ……」
思わず独りごちる。
授業の始まりのチャイムが無情にも鳴る。
始まってもノートしか出てない僕の机に違和感を感じたのか、舞子が何も言わずに机を引っ付けて教科書を見せてくれた。
「あ、ありがとう」
「ん」
……正直それまで、あまり気にして見た事なかったし、ロングヘアの子が好みだった。でも、でもでもでも!……可愛くね?なん?このさり気ない優しさ!
女の子扱いはされたくないアピールは前からしてたけど、なんか、人として、見習いたいなって思った。