マッチ使いの少女
雪景色が街を彩る都会。通りには多くの人々が暖を求めて足早に帰路をたどっていく。
その中に、一人の少女がマッチを売り歩いていた。
「マッチ入りませんかー」
「そこのお嬢さん、マッチをくれないか、10箱ほど」
「はい、3000円になります」
――
「少し休憩しようかしら」
少女がいつも通りマッチを売り、ビルの間の細道で一休みしようとした。
その時、暗闇の奥の方から怒鳴り声が聞こえた。そして
「誰か!たすけてください!」
と声を聞き、少女は声がする方へ向かった。
「おら!金をよこせ!」
「さもないとてめぇを奴隷としてこき使ってやる!」
「むおー!」
少女が目にしたのはいかにも悪そうな三人の男が一人の少年を囲っていた。
「ちょっと!やめなさい!」
「なんだぁ?嬢ちゃんがこんなところに来るところじゃねぇぜ。ひどい目にあいたくなけりゃこっから失せな」
「そこの少年が困ってるでしょ!」
「おうおう。お転婆だなぁこうなったら俺たちの怖さを思い知らせてやる!」
「むおー!」
三人の中で一番リーダーっぽい男が少女に向けて襲い掛かってきた。一見力の差は歴然だが――
少女は素早くマッチを取り出し、火をつけ、そのまま男の急所にねじ込んだ!
「あっつぅういいい!!!??いっったいい!?」
男は苦しさと熱さにうなり声をあげた。少女はさらにスカートの中からマッチを束にしたものを取り出し、残りの男に向かって
「ファイアーボール!!」
と投げつけた。まるでメテオのような火の玉が見事に二人にあたった。
「あっちいいいぃぃー!」「むおちぃーー!」
「くっそこいつ思い出した!この町でマッチ使いの少女と言われる敵をマッチで業火のように焼き尽くす滅茶苦茶やばい奴だ!くっそ!覚えてやがれ!」
「リーダぁー!」「むおーー!」
そのまま三人の男は火とともにどこかへ消え去った。
「大丈夫?ケガはない?この辺りは悪い人もいるから気をつけるのよ?」
「はい。ありがとうございます……はっくしゅ!」
「風邪気味じゃない。ほらこれ」
少女はマッチ一本に火をつけ少年に差し出した。
「これは、あったかい……お母さんに抱かれたような感じがよみがえる……」
「私の特性よ。一週間ぐらいは熱は収まらないし、ポケットに入れても燃えないから安心して。それでおうちに帰りなさい。私もマッチを売らないといけないし」
「はい……ありがとうございます!」
少年は足早に去っていった。
「さてと……この寒さがいつまで続くのかしら……そのためにも町に暖を保ち続けないと」
少女は今日も町中にマッチを売り歩く――