24.復活
アレスは、黒いローブを着た小柄な男、オルトと対峙していた。彼はヒューラ、ラドゥーンと同じくバデスの側近であり、その中でも一番の強者であった。
「なあ、お前たちはどうして人間を異形に変えているんだ?なんの為に、どうして?」
「九百九十九万の魔を天に捧げし時、我らが英雄は君臨する......」
「英雄……?」
「英雄ヘル、我ら暗黒の一族に繁栄の時代をもたらした者の名前だ」
「ヘルだと!」
「異形がお前たちに葬られる度に、我らが英雄は復活へと近づいていく。そして、その復活の時は間近だ。片手で数えられるほどの異形が散れば、復活は始まる」
「そうか、そいつの為にお前たちはこんな事をしてきたんだな」
「ヘルがこの世界に復活すれば、暗黒の時代は再来し、我らがこの世界の頂点に君臨する事が出来る!」
「そんな事はさせない!!うぉぉぉおおおお!!」
アレスはオルトの元へと突撃する。オルトは虚空から黒い剣を生み出し、そのままアレスの方へと振りかざす。剣から闇の刃が生み出され、アレスへと襲いかかった。
「どらぁ!!」
アレスが右足を思いっきり持ち上げ、力を込めて大地を踏みつける。その勢いで地面が飛び出し、アレスの目の前に壁が出来た。
壁と刃がぶつかり、二つとも勢いよく弾け飛んだ。その衝撃で激しい砂煙が起こる。それによって、お互い相手の姿が見えなくなってしまう。アレスは砂煙の中をそのまま駆け抜け、オルトの目の前にまでやって来た。
「くらぇぇええ!!」
オルトの腹を思いっきり殴るアレス。オルトはそのまま遠くへと吹っ飛んで行った。その先にあった突き出た岩とぶつかり、地面へと叩き落とされた。
「クックオア!」
オルトはすぐさま立ち上がる。彼がそのまま両手をあげると、その周囲に無数の黒い剣が現れる。オルトがアレスの方向を指さすと、黒い剣は一斉にアレスの方へと襲いかかる。
「ぐぁ!はっ!」
アレスは全ての剣を全身で受け止めながら、その先のオルトの元へと突進した。オルトは更に黒い剣を生み出し、アレスの方へと飛ばす。その瞬間、アレスは一気に加速した。そして、再びオルトの元へと急接近し、今度はオルトを掴みながら上空へと飛び、落下と同時にオルトを地面へと思いっきり叩きつけた。地面が割れる。
「ドアっっ!!」
オルトの体中の骨が折れ、立ち上がれなくなる。最後に抵抗しようと黒い剣を生み出し、アレスの元へと飛ばそうとする。しかしアレスはそれを見逃さず、追い打ちをかけた。オルトからはもう、攻撃は飛んでこない。
「スゥー……」
アレスは呼吸を整え、遠くに見えるバデスの元へと向かおうとする。そこに、カスれた声でオルトが話す。
「バデス様の元へ向かい、ヘルの復活を止めようとしているのだろう?だがもう遅い!時は満ちた、今ここに英雄ヘルが復活するだろう!」
大地が揺れ、空は暗闇に包まれる。雲からは無数の雷が落ち、周囲の木々は枯れ果てた。遠くに見えるバデスの近くに、巨大な闇の柱が現れる。
「な、何が起こっているんだ!!これは全て……ヘルの力なのか?」
アレスはオルトへとそう問いかけるが、彼はもう既に息絶えていた。心地の良さそうな表情で最後を迎えた。
「なんだってんだぁ!!」
バデス、そしてヘルが復活したであろう闇の柱へと、アレスは走って行った。それに気づいたルリアーン達も、周囲の異形を相手しながら、アレスの元へと向かっていった。バデスの目論見通り、復活を果たしたヘル。最終決戦が、始まる。