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19.開戦

【マテロ|地方:黒の番犬(ケルベロス)本拠地前】

ザゼンタウンからはるか北へと向かった先にある桟橋。それを超えた先にあるマテロ地方にアレス達は踏み込んだ。ここには、彼らが今から戦いを挑む黒の番犬(ケルベロス)の本拠地がある。アレスが引き連れた約二千人の同胞達。全員が今出来る最大の準備をした上で、ここまで馬に乗ってやって来た。ついに彼らの視界に黒の番犬(ケルベロス)の本拠地が映る。


「ついに、たどり着いたんだな......」

草木が枯れた土地に聳え立つ巨大な鉄の建築物。軍隊が持つ要塞を思わせるようなその風貌は、異形討伐隊(スレイヤーズ)最強の組織が集う鋼鉄の城と言えよう。しかし、アレスはこれを目の前にしても、もう引き下がる事は無かった。同胞を引き連れ、前へと進んで行く。すると、本拠地の方から一人の馬に乗った男がやって来るのが見えた。それを見て臨戦態勢に入ろうとする者もいたが、相手は一人。アレスはそういった者を制止し、やって来た男に話しかけようとする。その男には、見覚えのあった。


「......アーカイ隊長っ!いや、アーカイ!!」

 そう、ペポル族の集落に向かう途中に出会った黒の番犬(ケルベロス)の幹部、アーカイに出会った。アレスは、へブロスと共にペポル族を殲滅したであろう彼に、怒りを抑えきれず怒鳴りつける。だが、やって来た彼の、罪を背負ったような苦しい表情を見て、すぐに冷静さを取り戻した。そこでアーカイが口を開く。


「来てはいけない!奴らは......奴らはとんでもない事を始めようとしている!」

 今にも嘔吐しそうな表情で、声を振り絞るアーカイ。バデス達は一体何をしようというのか。ここにアーカイがやって来た事により、アレス達が本拠地へやって来るという事はバデス達に把握されている事にも同時に気が付いた。震えるアーカイに、アレスは言葉を返す。


「だったら尚更だ!俺たちは黒の番犬(ケルベロス)の悪事を止めに来たんだからなぁ!!」

「でも......ダメだ!」

「悪いな、俺はもう引き返すつもりは無い!」

 アレスの覚悟は固い。オスカーの石化、ペポル族壊滅の光景、憧れである黒の番犬(ケルベロス)への失望。全てを受け入れ、これ以上の悲しみを断ち切る為にアレスはここにいるのだ。相手に自分たちの行動を知られているならば、もうひっそりと本拠地へ向かう必要は無い。正面から突っ込むと、アレスは決意した。アレスは引き連れてきた同志の方に馬共々振り向き、鼓舞を始める。


「正義の為に戦うだとか!世界の為に戦うだとか!俺はそんな大層な事は言えない!俺は、俺の大切な物の為に戦う!!皆も、きっと俺と同じだろう?さぁ!!覚悟は出来たか!!行くぞぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「「「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

 アレスと約二千人の同胞達が、大きな雄たけびを上げる。それと同時に馬を全力で走らせ、本拠地の方へと突撃していく!!仄暗い空の下、冷たい風をきりながら大地を駆け抜ける。対局から自分たちと同じような軍勢が見える。あちらもゆっくりと馬に乗りながらこちらに向かってきているようだ。


「わざわざお出迎えってわけね」

 ルリアーンがそうつぶやく。彼女とカズヤは後衛部隊として、隊列の最後尾にいた。カズヤは弓での援護射撃を、ルリアーンは負傷者の治療を担当する事になっている。オリオン、チヨコ、モリスはというと集団の丁度真ん中の辺りにいた。この三人を中心に、大人数をまとめて指揮する算段だ。彼らの他にも一部リーダーを決めておき、彼らの指示を主として戦いに臨もうという事だ。


 お互いの声が聞こえる距離まで、接近した。黒の番犬(ケルベロス)の軍勢は動きを止めた。それに合わせるように、アレス達もスピードを緩めていき、足を止める。黒の番犬(ケルベロス)の軍勢の人数はおおよそ五百人。こちら側の四分の一ほどだ。しかし彼らは皆、A級、S級に分類される精鋭である。人数で大きく勝っていても相当の苦戦を強いられるだろう。アレスの正面、軍勢の先頭に立つ男が、口を開く。


「我はバデス。黒の番犬(ケルベロス)を率いる者だ。」

 ついに、バデスと相対したアレス。こいつが全ての元凶かと、アレスは不敵に笑うバデスを睨みつけた。その顔を見たアレスは、今まで抑えて来た怒りと憎しみを全て解き放つかのように叫んだ。


「バデス......!お前のせいでペポル族が!異形ヴァリアントになった人間たちがどれだけ犠牲になったと思っているんだ!!何故こんな殺戮を繰り返す!!何故オルペウスの詩の存在を隠す!?何故だ!!なぁ、答えろ!!」

「九百九十九万の魔を天に捧げし時、我らが英雄は君臨する......」

「何を言っているんだ!!」

「この戦いが終わる時、貴様は知る事になるだろう。さぁ、始めようぞ、神話の再現を!!」

 バデスが爪を鳴らすと、彼の後ろにいる、オルト、ヒューラ、ラドゥーンを除いた黒の番犬(ケルベロス)のメンバー全員が悶え苦しみ始める。彼らの身体から黒い煙が溢れ出す。肉体は泥のようにゆっくりと溶け、人の形から変貌を遂げていく。それぞれの人が、それぞれ似て非なる形へ。アレスは、これに見覚えがあった。そう、人間の異形(ヴァリアント)化である。黒の番犬(ケルベロス)皆が異形(ヴァリアント)となっていく。そして、空が闇に包まれ、竜巻ともいえる巨大な風が起こった。ここにいた者全員がこの風に巻き込まれ、マテロ地方の様々な場所へと飛ばされた。


風がやみ、各地で戦いが始まった。

戦いの先に待つ物とは!?

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