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15.復帰

アレス!!

「これより、対象者を殲滅する」

あの日モリスから聞いた、黒の番犬(ケルベロス)には4つ目の首と呼ばれる、人々の目に隠れて黒い仕事を全うする組織があるという話を、アレスは思い出した。大量の血を流しながら地面に倒れるオリオンを、近くにあった岩場に運んだ後、アレスはヘブロスに殺意の眼差しを向ける。


「そうか……分かったぞ……お前らはやっぱり何かを隠している……隠す為に殺している……秘密に関わる物を見た者、秘密を知る者を……なぁ?そうなんだろ!?」

武器を構えたヘブロスに問いかけるアレス。彼はそれをヘブロスの素振りから実感する。黒の番犬(ケルベロス)に対する、気持ちの整理もついたようだ。彼にとっての憧れは、この時に倒すべき悪となった。


「力無き貴様らが知る必要はない。ここで死ね」

ヘブロスは巨大な槍を持っているとは思えないスピードで距離を詰めてくる。アレスはそれを見て、ヘブロスの懐へと潜り込む。そしてそのまま脇腹にパンチを食らわす。しかし、ダメージは殆ど入っていなかった。アレスは、彼の頑丈な身体を怯ませる事が出来なかったのだ。


「その程度か」

ヘブロスはすかさず間合いを取り、槍で突き刺す。アレスはこの攻撃を綺麗に横にステップして避けた。


「ほう……これを避けるか」


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」

続けてアレスはヘブロスの顔面に向かって拳を突きつけた。反応が遅れたヘブロスは攻撃をそのまま受け、怯む。


「フン、我に拳を当てるとは……不愉快だ」

そう言うと、ヘブロスは自身の巨大な槍を地面に突き刺す。すると、禍々しい黒い荊棘が、地面を突き破るように大量に飛び出してくる。


「これは……なんだ!?」

黒い荊棘がアレスの身体中に絡みつく。力を込めて抜け出そうとするアレスだったが、少しも振りほどく事ができなかった。


「跡形もなく、消えろ」

縛り付けられたアレスの頭に向かって槍を突き刺そうとするヘブロス。槍の先端がアレスの頭の皮膚に触れる直前、へブロスの動きが止まった。


「な……に……」

ヘブロスが止まった自分の身体に困惑する。何が起きたのか、アレスがヘブロスを見ると、彼が槍を持っている右腕に、三本の矢が突き刺さっていた。矢の先には緑色の液体が塗りたくられている。麻痺毒だ。


「この矢はまさか!?」

驚きと歓喜が混ざった声を出しながら、アレスは辺りを見わたす。矢が飛んで来た先を見ると、そこにはかつて旅を共にした……そう、彼がいた。


「カズヤァァァァアアアア!!」

アレスは歓喜した、一度は旅から離脱したカズヤが、今ここに戻ってきた事を。カズヤはアレスの方に歩いて行きながら話す。


「僕、気づいたんだ……旅を続ける事より恐ろしい事に……アレス……ルリアーン……二人が消えてしまうことの方が、俺にとって何より恐いって事に……」

カズヤの言葉を聞き、アレスは感激する。アレスは改めて、カズヤ、オスカー、ルリアーン……仲間達の間にある、壊れない何かに……


「不意討ちとは、弱者の戦略だぁ!!ひれ伏せぇ!!」

麻痺毒を克服し、槍をカズヤの方に向けるヘブロス。カズヤはそれに反応し、咄嗟に跳躍する。ヘブロスの頭上に飛び、そこから更に強い毒を塗った矢を二発放つカズヤ。ヘブロスは二本の矢を槍を使って弾き返す。しかしそれは、カズヤの思うつぼであった。


「俺たちのパーティで最も強いのは誰か知ってるか?そう……カズヤだ!!」

地面に着地したカズヤはヘブロスが上からの矢をうち払った僅かなスキを狙い強い睡眠毒を塗りたくった矢を脇腹に向かって撃った。矢は見事命中した。


「は……」

ヘブロスが何か言おうとするが、その前に身体に睡眠毒が周り、眠ってしまった。アレスはヘブロスの持っていた、試験終了を示す為の青い狼煙を奪い、その場で上げた。必死に戦っていた参加者だったが、その狼煙に気が付き刃を下ろした。


黒の番犬(ケルベロス)入団試験

参加者21人中、16人敗北、内死亡者3人

アレスの上げた青の狼煙によって中断。


狼煙の元に、意識がある参加者達が集う。やって来た人々に、アレスが試験開始から何があったかを話した。それを聞いた参加者から貰った道具を活用し、眠っているヘブロスを拘束した。ルリアーンとチヨコも傷だらけになりながらもアレス達の元にやって来た。そこでルリアーンは、致命傷を負ったオリオンに気が付き咄嗟に魔法による治療を始めた。ルリアーンはこの世界で数少ない魔法使いの中でも、更に貴重な治療魔法を得意としている。オリオンの治療を始めたルリアーンの元に、カズヤがやってくる。


「カズヤ!!?どうして!?」


「……ルリアーンごめん。あの時の僕、最低だった」


「いいんだよ!それより……おかえり!!」

アレスとルリアーンに背を向け、パーティから抜けたあの日を思い出しながら、ルリアーンへと頭を下げるカズヤ。ルリアーンは怒ってなどいない。カズヤが帰ってきた事にただただ喜びを感じていた。そこにアレスもやってきて、カズヤの頭をポンと叩く。


「そうだ、俺からも!!おかえり、カズヤ!!」


「……ただいま!!」

カズヤ!!

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