19歳男性の場合 part10
喫茶店を出ると、当たりは少し暗くなり始めていた。少しゆっくりしすぎたかも知れない。でも、自分はしおりと話している時間が1番幸せだ。表情豊かな彼女にどれだけ救われてきたか。テーマパークの職員の人がパレードの準備だろうか、仕切りのためにロープを引いていた。
「次はどこ行く?」
「もうアトラクションはいいから、ゆっくり歩きたいな。」
しおりにしては珍しい提案だった。
「いいのか?」
「うん。なんか二人だけの時間をゆっくり過ごしたいなって。」
そういうとしおりは手を差し出してきた。自分はそれに応え、優しく手を握る。
あたりが暗くなるにつれて、少しずつネオンの光が主張を始める。その様は、まるで目が覚めたら違う世界にいるようだった。
「綺麗だね。」
「そうだな。ここでしか体験できない光景かもな。」
ゆっくり歩みを進める二人の前に、パレードの影響でほとんど人がいない観覧車が目の前にパレードに負けないように輝いていた。
「最後にこれに乗るか。」
そろそろ帰らなければいけない時間になったので、最後に綺麗なこのネオンの光景を上から見たくなった。
観覧車に乗ると、自分たちは向かい合うように座った。ゆっくり上昇していく自分たちの前には眩いくらいの光景だった。そんな景色に見惚れていると、しおりが隣に座ってきた。
「今日はありがとう。本当に楽しかった。」
そう言うと自分の肩に頭を乗せた。
「自分も楽しかったよ。」
自分はしおりの肩を抱き、外に目をやった。窓に映るネオンの景色にうっすらと自分たちのシルエットが映っていた。