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32歳女性の場合 part21

食品売り場で買い物をする。ハンバーグの詳しい作り方はよくわかっていないので、レシピアプリを開きながら必要なものをカゴに入れていった。途中でお酒をカゴに入れようとしたら、彼に止められた。今日1日でいろいろなことがありすぎて、自分が急性アルコール中毒で倒れたことを忘れていた。代わりに炭酸水を3本ほど買って会計を済ませた。

車内では、夕方のニュースが流れていた。国際関係のこと、芸能人の不倫と明るいニュースはなかった。


家に着くと早速、料理の準備をした。幸い、料理道具は一式揃っていた。使った形跡はなかったけど。買ってきたものをテーブルに広げて、長い髪を後ろで束ねる。そうすると、彼の目線を感じた。


「何、見てるの?」


「知らないんですか?多くの男性は、髪の長い女性が髪を束ねる姿が好きなんですよ。」


「多くの男性はって、宗介はどうなのよ?」


「僕ですか?わかりませんけど、薫は魅力的でしたよ。こう言うところがいいのかなって今感じてるところです。」


「ふーん。」


態度や顔では平然を装っているが、少し嬉しかった。


料理を始めたが、宗介は全く戦力にならなかった。包丁を持ったことがないと言うのと、目玉焼きを上に乗せようと卵を割るのを頼んだら力一杯キッチンの角にぶつけてぐちゃぐちゃになったりと大変だった。結果的には私一人で作ることになって、彼は料理する私の顔をずっとみていた。作り辛いったらありゃしない。


色々とトラブルはあったが1時間経たないうちに料理は完成して、ちょうど炊いていたご飯も炊き上がった。我ながらかなり上手にできたと思う。料理をテーブルに置いて手を合わせて食材に感謝をした。彼は器用にナイフとフォークを使い口にハンバーグを運んだ。こう言うところで彼の育ちの良さが見える。


「おいしい。」


彼は感動したように、リアクションを取った。


「そんなに?嬉しい。」


「本当に美味しいです。今までで1番。」


流石にそれは言い過ぎだろうと思ったが、彼の目にはなぜか涙が。


「なんで泣いてんの?」


私は焦って、ティッシュで彼の顔を拭く。


「いや、初めてだったんで。人の温もりを感じる料理を食べたのが。羨ましかったんです。運動会とかでもみんなでお母さんが作ったご飯を食べているのとか、隣の家から聞こえる食卓の声とか。」


「そっか。なら、いっぱい食べてね。まだ、おかわりあるから。」


「本当ですか?」


結局彼は2人前をぺろりと平らげた。



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