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32歳女性の場合 part12

私は、外仕事もこなせるようにはいていた低いヒールを脱いで、いよいよ彼の部屋に入っていった。リビングまでにはいくつも部屋があって、お風呂場だったり、トイレだったりを紹介されて、おそらく1番広いであろうリビングに案内された。私の勝手なイメージだが、男の1人暮らし、部屋はてっきり汚いものだと思っていた。彼の部屋は物が少なく、綺麗だった。


「きれいにしてるのね。」


「僕あまり物を持たない人間なんで、必要最低限生きるためのものがあればいいと思っている人なので。」


本当に必要最低限なものしかなかった。ある家具といえばテーブルに4脚の椅子、ソファーにテレビくらい。少し寂しい感じもした。ぼやっとしていると足元に何かぶつかる感じがした。それはこの広い部屋を担うにはあまりにも小さいロボット掃除機だった。


「君1人でこの部屋掃除してるの?大変だね。」


私が話しかけるとロボット掃除機はそっぽを向いて、自分の仕事に戻った。


「先輩って面白いですね。反応が変えてくるはずもないのにロボット掃除機に話しかけるなんて。」


「そうかな?小さい頃からよくぬいぐるみに話しかけていたから、そういう癖がついているのかもね。たとえ、反応がなかったとしても頑張っている姿を見たら応援したくなるじゃない。それに付喪神っていう風習も日本にもあるしね。ものでも健気に頑張る姿は愛おしいと思うけどな。」


「そうなんですか?なら、僕も頑張ったら先輩は愛おしいと思ってくれますか?」


「なんでそうなるのよ。宗介くんは十分愛おしいと思うけど。この会社に入ってきて初めて教育係を担当させてもらった人だし、時々見せる世間知らずなところもほっとけない感じで可愛いかなって思ったりはするけど?」


「可愛いは嫌なんです。」


そういうと彼は私の肩をもって強引に唇を奪ってきた。いきなりのことで頭がショートした。抵抗しない私を見てゆっくり唇を離した彼は、


「可愛いは嫌なんです。こう見えても僕も男です。好きな人にはかっこいいって思われたいし、誰よりも愛おしいと思って欲しい。先輩には彼氏がいてその人と婚約したって聞いた時は、諦めてました。でも、彼氏さんが浮気をして先輩が悲しんでいるときに、怒りと共にチャンスだて思ったんです。」


熱暴走した機械みたいに時間をおけば頭がショートしたのも治るわけで、私は彼の言葉を静かに聞いていた。私に言葉を投げかけてくれている彼は、少し男らしくもあって、わがままな子供のようにも見えた。


「さっきはいきなりすいませんでした。少し頭冷やしてきますね。」


「待ってよ。まだ返事してないじゃない。」


「えっ?」


振り向く彼の唇に私は自分の答えをのせた。



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