32歳女性の場合 part10
病院を出ると、宗介くんはすでにタクシーを呼んでいてくれていたみたいでそのタクシーに乗ってすぐに宗介くんの家に向かった。途中、大型スーパーに寄ってもらって、必要最低限のものを揃えた。下着とか。同じのを何日も着るのは嫌だった。後輩とはいえ、男性の家に行くのだから少しくらいそういうことも意識しなかったわけではない。身だしなみだけは気をつけないと。
買い物を終えて、タクシーに戻ると宗介くんは眠ってしまっていた。
「彼氏さん相当、疲れてるみたいでしたよ。」
「彼氏じゃないですよ。ただの会社の後輩です。」
「そうですか?さっきこの方がそうだと、言ってましたけど。」
「はあ?」
気持ちよく寝ている宗介くんには申し訳ないが、彼が案内しないと彼の家になんかつかない。寝ている彼の頬をつねる。若いからか絹みたいに綺麗で、牛乳のように白く、低反発枕みたいに柔らかかった。でも、スキンケアはあまりしていないようだった。少し腹が立って、強めにつねる。
「痛いじゃないですか。」
「運転手さんに変なこと言った罰です。宗介くんが案内にしないと家わからないんだから。」
「お連れさんも起きたみたいなんで出発しますか。」
「よろしくお願いします。」
少し強めにつねってしまった彼の頬は、下の白さの影響か、赤くなってしまっていた。彼はつねられてた頬をさすりながら、運転手さんと笑顔で話している。なんだろう。綺麗なものを汚してしまった感じがして罪悪感を覚えた。
スーパーから彼の家はそこまで遠くなく、ものの数分でついた。運転手さんと別れて、彼の住んでいるところを見上げると思合わず口が開いてしまった。そこには会社員では到底手に入れることのできない大きな建物があった。
「ここの最上階です。最上階は壁をぶち抜いているので自分しか住んでいないのでかなり広いですよ。」
さらっととんでもないことを言われた気がする。最上階で壁をぶち抜いている?衝撃的すぎて開いた口が塞がらなかった。人間って本当に驚くとこうなるんだ。
「先輩面白い顔してますよ。
」
驚いている自分の顔を見て彼は笑っていた。
「宗介くんてなんなの?」
「お酒飲みすぎて忘れましたか?あなたの後輩ですよ。」
そんなこと聞いているわけではない。自分が真剣な質問をしているときにふざけて返答されるとこんなに腹が立つものなのかと感じた。
「あと、親が不動産経営していて、ここら辺の一体のマンションを持っていることぐらいですかね。」
私が聞きたいことはさらっと流すように彼の口から聞くことができた。
「玄関にいるのも、邪魔なので早くうちに入りましょうか。」
聞きたいことはまだあったが、仕方なく彼の言葉に従った。