32歳女性の場合 part7
しおりが目星をつけていた店に着いた。意外にもシックな感じの店だった。もっと、ピンクとか着させれるのかと思ったがこのお店なら大丈夫かもしれない。
「いらっしゃいませ。って、しおりじゃない。」
「久しぶりー。」
なるほど、友人の店に自分を連れてきたのか。
「どうも、初めまして。しおりとはどういう関係なんですか?」
「ただ職場が一緒で上司だよ。」
「じゃあ、裁判官さんだ。」
明るく話しかけられた。しおりの友人は社交的な人が多いのかな。
「今日は伯斗さんの服買いに来たの。この人、普段着これくらいしか持ってないらしいから」
「確かに、少し地味かな。せっかく顔はいいのに勿体無いって感じ。」
「そうなんだよ。せっかくかっこいいのにもったいなくて。」
しおりの友人は自分をマジマジと見ながら、しおりと会話を続ける。
「じゃあ、私たちでコーディネートしてあげよっか。」
「そうだね。2人がかりの方がいいかも。」
ここから数時間は地獄だった。脱いでは着て、脱いでは着てを何回も繰り返した。一生分着替えをしたんじゃないかと思った。これだから、服を買うのはいやだ。2人は着せ替え人形で遊んでいるみたいに楽しんでいた。
「もうそろそろ勘弁してくれ。」
弱りきった自分を見て、2人は楽しそうだった。
「伯斗さんがそんなに弱ったの初めて見ましたよ。本当にいやなんですね。」
「それで色々着たけど、いいのあったか?」
2人は目を見合わせて答えた。
「それがどれも似合ってるので、どれでもいいかなって。」
今までの時間はなんだったんだ、と言いかけたが、真剣に悩んでいるしおりの顔を見て、それはやめた。
「なら、しおりがいいなって思ったやつ全部買うから。それで勘弁してくれ。」
実際のところ、あまり散財しない自分はそこそこ持っている。値札を見てもそこまで高い店ではないから大丈夫だろう。
「そう言われちゃうと悩むな。」
そう言いながらしおりは次々と服をカゴに入れていった。
約束通りしおりがいいと思ったものは全て買い、会計を済ませた。会計を済ませて、店を後にする時にしおりの友人から、「ちゃんとあの子のこと見ていてくださいね。離さないでください。」言葉の意味はわからなかったが自分は「もちろん。」と答えて店を後にした。
「何言われたんですか?」
「いや、ちゃんとしおりのこと見ておけとか、離すなよとか。」
自分が答えるとしおりの顔は真剣な面持ちになった。
「それで何て答えたんですか?」
さっきより声が小さくなったがギリギリ聞き取れたので、
「もちろんとは答えたけど・・・。」
「そうですか。よかった。」
しおりは嬉しそうに顔を明るくさせた。
「じゃあ、買い物も終わったんでご飯食べましょ。もちろん伯斗さんの奢りで。」
「わかったよ。服選んでくれたお礼も兼ねてな。」
自分たちはご飯屋さんが集まる階に行き、ご飯を済ませた。




