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26歳男性の場合 part9

家を出て30分後。最初の方は元気に歌を歌っていた創だったが、歌い疲れたのか、天使のような顔で眠ってしまった。母さんが隣から創のお腹をゆったりとしたリズムでトントンとする。


「あんた、今日どうしたのさ?体調でも悪いのかい?」


朝の自分の様子に少し違和感を覚えたのか、自分を心配して母さんが話しかけてきた。


「ごめん。大丈夫だよ。なんでもない。」


実は、と言いかけたのだが、そのように口が動かなかった。口が勝手に母さんの回答に答えた。


「そうかい?さやかさんを亡くして傷ついているのもわかるし、辛いのもわかる。でもね、この子に心配だけはかけちゃいけないよ。子供はこういうことに敏感に反応するから。あんたはもっと兄さんたちを頼ってもいんだよ?あの子たちもお前のことはずっと気にかけてくれているからね。辛くなったら昔みたいに泣いてもいいんだから。」


幼い頃の自分は泣き虫だった。いじめられっ子だったし、よく怪我もした。その時はいつも兄さんたちが助けてくれていた。反抗期もなかったし、妻のさやかとの出会いも一つ上の兄さんの紹介だった。さやかは自分よりひとつ上で、二番目の兄さんの大学時代の友達だった。自分がさやかに一目惚れをしてすぐに兄さんに隠れて告白した。最初は断られたのだが、告白をしたことを知らない兄さんはよくさやかと大学の友達を家に呼んでいた。成績が良かったさやかは当時高校生で大学受験を控えていた自分に家庭教師として勉強を教えてくれた。さやかが教えてくれたおかげで自分は兄さんたちと同じ大学に入学することができた。合格してからさやかとの関係が切れるのが嫌だった自分は、入学式の日にさやかに再び告白した。合格してからすぐだとなんかありきたりで嫌だったことを覚えてる。その時にさやかからOKが出て付き合うことになった。もともと顔のしれた人だったため兄さんたちも驚きながら喜んでくれた。大学では学科が違ったため一緒の授業は少なかったが、自由な時間が比較的多い大学生活で自分とさやかの中は一段と良くなった。喧嘩がなかったわけではないが必ず間に兄さんが入ってくれたので別れるまでには至らなかった。同棲を始めたのは自分が大学3年で、さやかが4年の時。就活が始まって、ふたりでの時間が作れなくなったので思い切って同棲を始めることにした。基本的に時間がある人が家事をするということをルールに決めて一度も揉めることなく、自分の大学卒業と、就職をきに結婚した。その時にはすでに創がさやかのお腹の中にいた。



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