26歳男性の場合 part8
家族3人で車に乗り込む。自分が運転席で創は自分と対角線上にあるチャイルドシート、その隣に母さんが座る。いつもなら助手席には妻が座っていたが彼女はもういない。自分は彼女がいない助手席に、荷物を置き、カーナビで目的地を設定する。今日は前から創が楽しみにしていた水族館に行く約束をしていた日だった。車では1時間ほどかかるが車の運転が好きに自分にとっては何の苦もない。
「シートベルト閉めたかな?」
「うん。おばあちゃんもしてるよ。」
最近ではシートベルトの規制も厳しくなった。少し前までは後ろの席の人間がしていなくても警察に止められることはなかったが、色々な実験の結果後ろの席の人間の方が危ないことがわかったみたいだ。自分は毎回車に乗る時は創にシートベルトをしたか確かめる。この年代から癖付けをすることで自然にしてくれると思ったからだ。
カーナビをセットし終えた自分はゆっくりと車を走らせる。もともとかなり荒かった自分の運転はこの子が生まれてから優しいものになった。妻とまだ付き合っていた時は、よく怖いと言われていたなと思い出す。
「あんたの運転、こんなに優しかったけ?」
そういえば母さんは自分の運転が荒い時しか乗っていない。母さんも運転をするのでわざわざ自分が運転することがなかった。
「そりゃあ、子供が生まれたら安全運転を意識するようになるよ。」
「ふぅーん。なら良かった。あんたまで亡くしてしまったら、この子が可哀想だからね。」
突然母さんから出た言葉に、ドキッとした。妻は交通事故で亡くなっていて、自分は自殺。母さんは自分が死ぬ可能性があるのは交通事故くらいだろうと思っていたのだろう。自ら命を捨てるなんて考えてもいないみたいだった。




