中学一年生男子の場合 part33
天界での裁判の中で禁忌とされているのは、決して地上にいる人間に影響を与えてはいけないということと、天界の人間に地上の人間の情報を与えないこと。1つ目はもちろんのこと、2つ目は地上に戻りたいという意識が芽生えて、万が一天界の警備をくくり抜けて地上に逃げた時に近しい親族にあってしまい、天界のことを知られた場合、その一族などその周辺地域の人間を一掃しなければ行けなくなるからだ。幸助くんの場合、もうすでに生命力は消えかけ、もうすでに存在を保つのがギリギリで展開から抜け出すことは不可能だ。それでも禁忌に触れることには変わらないがここは閉鎖された世界、しおりが言わない限り、どこにも漏れない。
「いいか?お前の自殺でお前の周りの人間の人生は大きく傾くことになった。まずは、お前の両親だ。お前の自殺以降、母親は無気力になり、体重は落ち、免疫が弱くなり病気がちになった。父親との衝突が増え、離婚。お前がいた頃の家族はバラバラ。お前を虐めていた奴も裁判の後、殺人者と言われ家族全員で心中。担任の先生は責任を取って辞職して職を失っている。まだ新婚で子供が生まれたばかりだった。」
幸助くんの顔に覇気がなくなっていく。
「お前は確かに生きていれば被害者かも知れない。でも自殺した時点でお前は多くの人間の人生に悪い影響を与えてる。これが自殺がこの天界で罪になる理由だ。」
自分は幸助くんの手を離した。そろそろ時間だ。