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中学一年生男子の場合 part32
言葉にならない怒りを自分にぶつける幸助くんに自分はそっと、自分の胸ぐらを掴んでいる手に触れた。
「落ち着けとは言わない。無理だと思うから。でも、もう戻れない。ここで俺のことを殴ったとしてもこれから起こることは何も変わらない。それが幸助くんに与えられる罰だから。」
「俺は、何も罪なんか犯してない!!人殺しも、盗みも!!俺はいじめを受けていたから被害者の方だ!!裁くならあいつにしろよ!!なんで俺が罰を受けなきゃいけない!!」
目を真っ赤にして自分に問いかけてくる。こんな仕事をしている関係でこういうことは慣れている。その時に自分は決まって同じことを問うことにしている。
「本当に何もしてないかな?本当の被害者は本当にお前か?」
「当たり前だ!!」
「そうか。なら、教えてやる。自殺がどれだけ罪深いか。」
自分は力ずくで幸助くんの腕を振り解いた。
「しおり。ここでの話は他の人には黙っていてくれ。俺はこの消える世界で少しだけ禁忌に触れる。」
自分は振り解いた幸助くんの手首を力強く握った。骨が折れるか折れないかの瀬戸際の力で。




