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(旧)阿呆の旅路と司書  作者: 野山橘
1章 旅路
43/43

41. 4頭のリトルドラコ

「………良し、出発するか。」


 体勢を整えることが出来たので、調査隊一行は山登りを再開することにした。


 30分も歩いていると、植生がガラリと変わり、まるで歩いている内に別の世界に入ってしまったかのような錯覚を受けてしまいそうだ。


「カズヤ。なんだか、さっきまでと森の雰囲気が変わったような気が。具体的に言うと、蚊が多いというか…。」


 無道が赤く腫れた手の甲をこりこり掻きながら言った。


「こら、掻きすぎたら治りが遅くなりますよ。幸い、シエルラさんが持たせてくれた虫刺され薬があるから。」


 アイテムストレージに手を突っ込みながら、カズヤは無道の疑問に答えた。


「この辺りには氷銀という金属の鉱脈があるらしくて、常に周囲の森よりも気温が3度ぐらい低いんですよね。その結果、鉱脈に沿うような形で変な生態系の森が形成されてるっていう…。なんだその手は。」


 虫刺され薬を引っ張り出したカズヤは、差し出された手の甲に怪訝な目を向けた。

 人差し指の付け根の出っ張りと甲の真ん中に腫れが出来ており、その上に罰印の爪痕が付けられている。


「いやあ、塗ってもらえるのかなーって。」


「…。」


 珍妙な魔物を目にしたような気分になったカズヤは、首を傾げながらも右手の人差し指で虫刺されを掬い取った。そうしてそれを無道の柔らかな肌の上に厚めに伸ばした。


「あんまり掻きたくなるようなら、上から絆創膏でも貼っときますけど。……照れるぐらいなら妙なこと言わないで下さいよ。」


 まさか本当にやるとは思っていなかったらしく、無道は耳まで赤く染めた顔を横に逸らしていた。


 あまりにテンプレートすぎて最近の恋愛小説では見られないような反応を返した無道に、カズヤは呆れて言葉を返した。


 そして、そんな彼の肩を叩いたのは、無表情なテルキアである。


「………仲がよろしいのは非常に結構だし、出生率の向上に貢献するのは素晴らしいことだ。………だが、気を引き締めろ。魔物だ。」


 テルキアは樹上で遠くに向けて弓を構える弓兵ヒルデを指差した。


「えーっとね、報告するよ。10時の方向400m先の開けた場所にリトルドラコ4頭とシカ4頭。ドラコがシカを襲おうとしてるのかな?こっちに気づいてる様子はないから、慎重に通り抜けられればバレなさそうだけど。」

 

 コウモリ亜人のヒルデは聴覚に優れているらしい。

 大きな耳を動かしながら、木々に阻まれている視界を補っているようだ。


「「リトルドラコ4匹!?」」


 生娘のような無道の反応に呆れていたカズヤも、2人のコントのようなやり取りに呆れていたテルキアも、これには思わず声を揃えて驚いてしまった。


「そんなに驚くことかなぁ?せいぜい、ワイバーンの幼体だぜ?」


 ルークスがそう言って欠伸をした。


 彼は簡単そうに言うが、ワイバーンはとても強力な魔物だ。


 岩をも粉砕する鋭い牙の並んだ長い顎に、大きな一本爪が付いた翼、筋肉に覆われた大木を踏み折る後ろ足、毒棘が何本も生えた長い尻尾。


 そして何よりその巨体である。

 種全体の平均全長は5mをゆうに超え、その巨体全体が硬い鱗に覆われているのである。


 大きな体に踏みつぶされれば即死だし、攻撃をかすりでもすれば、鋭い鱗に身を削られることとなる。


 種によっては属性魔法を使いこなし、それを吐息でも吐き出すかの如く放出する。

 ちなみに、この攻撃行動の事をブレスと呼ぶ。


 リトルドラコはそんなワイバーンの幼体の総称であり、その大きさは少し大柄なオオカミ程度のものだ。

 だが、成体と同様に属性魔法のブレスを吐くし、顎の力もオオカミの比ではない。

 そして何より、成体よりも小柄な分、すばしっこいのである。


 銀級冒険者が1人いればリトルドラコを一頭倒せると言われているが、それが複数となると話が別になってくる。

 カズヤがリトルドラコ4頭と聞いて驚いたのには、そう言った理由が一つ。


「……4頭のリトルドラコ…という事は、少なくとも2つの番が住み着いていると考えるべきか…。ソードテイルウルフが怯えていたのもそれが原因か…?」


 テルキアはリトルドラコとその親個体がモヌケノカラ山脈の生態系に与える影響について考えているようだ。


 1度に子どもを2頭までしか育てないワイバーンがこの山に一体何頭いるというのか、本来縄張り意識が強いはずのワイバーンが群れているのは何故なのか等の謎はあるが、今は目下の事態に対処する必要があるだろう。


「………漏らさず討伐する方向で行こう。ルークスとセイラ、ヒルデ、ライカの4名はいつも通りやってみてくれ。……俺は適当に合わせる。………キフはリトルドラコとの戦闘経験はないんだろう?一番弱いマシーナリーを守れ。」


 指示と呼ぶにはあまりにも大雑把だが、強敵相手に慣れていない形の攻めで失敗するというわけにもいかない。

 テルキアの指示はある意味で各人の実力を信頼し、正しく認識したものと言えるのかもしれない。


「そんじゃ、まあやりますか。ライカ、いつもの頼むよ!」


「おっけーい!」



 ◆



 戦いは一瞬だった。


 捕らえた獲物を奪い合うようにして貪っていたリトルドラコ4体は、魔法使いライカの正確無比な炎魔法を視認することすらできなかった。


 このリトルドラコは4体ともファイアワイバーンの幼体だったため、熱にはいくばくかの抵抗性があったようだが、それでも単純に速度の速いAクラスの炎魔法を食らう事で火傷を負っていた。

 火傷とはすなわち組織を形成するタンパク質の変性とも言えるわけで、脚部の筋肉を焦がす炎によって、リトルドラコの動きは大きく制限された。


 足が焼かれ、慌てて空に逃げようとするリトルドラコたちの翼をすかさず弓兵ヒルデが射貫き、撃ち落とした。


 後は、勇者ルークスと金級冒険者テルキア、レイピア使いのセイラが一体ずつトドメを刺していって終わりである。


 一度だけ、セイラがフリーになっていたリトルドラコに不意を突かれそうになったが、無道がその個体を両断したので事なきを得た。


「…今、何が起こったんですか?」


 理解が追い付いていないながらも、対峙していたリトルドラコにきちんと止めを刺したセイラ。


「カズヤ、ワイバーンのお肉は美味しいの?」


 一方で、カズヤの隣に居ながらも10m近く離れた所にいるリトルドラコを真っ二つにした無道は、特に興味がなさそうだ。


「ブドウさんさあ…、…まあいいか。ファイアワイバーンの肉はワイバーン種の中では安価だけど、かなり美味いよ。」


 ワイバーンという魔物全体に言えることだが、適度な噛み応えがありつつもさっくり噛み切れる身質も、『味付け要らず』とも称される濃厚な旨みも、筋繊維の間に適度に入った脂のサシも、全ての要素が高水準な食肉なのだ。

 猛毒種であるポイズンワイバーンでさえも、有毒部位を除去すれば貴族ご用達の高級食材となるほどだ。


 ワイバーンに殺される冒険者の数が年々増加しているのも、ただでさえ数が少ないワイバーンが年々数を現象させているのも、全てはワイバーン肉の需要が高すぎるためなのである。

 つまり、ワイバーンが美味すぎるのが悪いのである。


「それはちょっと楽しみになってきたかも。」


 セイラの作った菓子のご相伴に預かったものの、早朝に朝食を食べたきりである。


 小腹が空いている様子の無道は、まだ血を噴き上げているリトルドラコの断面を見て舌なめずりしていた。




「……そら、マシーナリー。……出番だぞ。」


 額に付いた血を拭い、ナイフを取り出しながらテルキアが言った。


 カズヤの出番、すなわちリトルドラコの解体…もあるのだが、勿論それだけではない。

 リトルドラコの外傷や消化管の状態から少しでも状況を読み取り、親ワイバーンの活動痕跡や精神樹による影響を確認することもまた、花級冒険者であるカズヤの仕事なのである。


「ブドウさんがぶった切ってくれたおかげで、腸を綺麗に割る必要が無くなりましたね。その代わり、そこらじゅう血塗れになっちゃったけど。」


 皮肉交じりなカズヤの言葉に、無道は黙って苦笑いを浮かべた。


「ちょっと、キフさん。お聞きしたいことがあるのですが。」


 そんな彼女を、レイピア使いのセイラが連れ去ってしまった。


「副支部長、その作業が終わったらメシにしないか。さすがの俺も腹が減ったよ。」


 腹を擦りながらルークスはそう言うが、実際に腹を空かせているのは彼の妻たちである。

 大きな腹の音が2つ鳴り響いていた。


「………そうだな、解剖が終わった奴はそのまま焼肉にでもするか。」


 テルキアの一言により、早急にリトルドラコの検査が行われることになったのであった。




『…それから、食性に特筆すべきことは無し、脚爪の削れ具合と尾部突起の発達具合から巣は岩石地帯、と…。岩石地帯というと、P-9地点の岩穴かね?』


「………いや。………恐らくは、反対側のV-2だろう。………俺たちは手が離せないから、早急に別チームを派遣しろ。」


 あらかたリトルドラコの分析が終わったため、テルキアは魔動水晶通信機を使ってギルドにいる支部長と連絡を取っていた。


 ワイバーンが住み着いている可能性の高いポイントは精神樹が生えていると予想されている地点から見て非常に距離がある。


 カズヤら調査隊が足を伸ばすというのも難しく、かといってワイバーンは放置するにはあまりにも危険な魔物であるため、新たな討伐隊を組んで討伐に向かう事を提言しているのである。


『了解した。早速、人事の者に手が空いている腕利きを手配させるとしよう。マシーナリーは、何か気になる事があったかね?』


「僕ですか?」


『ああ、そうだとも。気になる事や気付いた事、リトルドラコに関係ないことでも何でもいいからおじさんに言ってみてくれ。シエルラ殿への伝言でもいいぞう。』


 そうは言われても、大体の所感はテルキアと共有しているので既に報告済みだ。

 副支部長を任ぜられるだけあってテルキアの報告は完璧だったので、情報の漏れも特にはなかった。


「あ、そうだ。1069年ゼミの前回の発生年からどれくらい経ったか調べて下さい。僕とジゼルさん…友人がネクストポート町に向かった時、すごい数の1069年ゼミが居たので気になってしまって。今年がその周期だという話も聞いていませんでしたし。」


『ふむ、良いだろう。水晶の魔素がそろそろ切れそうだから、結果は後から掛けなおさせてもらおう。ちゃんと着信に出られるようにしておいてくれよ?』


 支部長の口ぶりは軽いものだが、直ちに職員に指示を出している声が通信機越しに聞こえてきたので問題ないだろう。


『では、シエルラ殿にはマシーナリーは特にいうべき事も無いと言っていたと伝えておこう。あの子は、さっきまで君たちが元気なのか、ギルドまで尋ねに来ていたがね。』


「…そういう言い方をされると、こっちが悪いみたいですね。じゃあ、僕とブドウさんは元気なので、シエルラさんも食べ過ぎには注意するように、寝る時はあったかくするようにと。あと、変な輩には付いていかないようにともお伝えください。」


『はっはっは!よし、承った。』


 そんな快活な支部長の笑い声を最後に、通信は途切れてしまった。

 先ほど言っていたように、魔素の残量がちょうど無くなったのだろう。


 魔動水晶通信機は年々小型化している。

 性能も向上し、遠隔地でも綺麗な音質で会話が出来るようになっているのだが、それに比例するように魔素消費も激しくなっている。


 魔素を貯めておくための水晶をより交換しやすくすることで高頻度の連絡を可能にしてはいるものの、水晶はそう安いものではない。


 より長持ちする魔動水晶を作り出すことが業界の今後の課題になっていくことだろう。


「2人とも、準備が出来たから手伝ってくれ!」


 聖剣ではなく、肉の指さった串を手に持ったルークスが手を振っている。


 タオルを頭に巻いて、鎧の代わりにタンクトップを身に着けたその姿は、聖剣の勇者というよりも串焼き屋台の兄ちゃんといった感じである。


「それでセイラさん、ルークスさんはそれから何と…?」


「それからね、『君自身が君の価値を決めちゃダメだ。俺が価値基準になってやるから、一緒に来てくれ』っておっしゃって下さって…!」


「「「「きゃー!!」」」」


 無道はルークスの妻3人に混ざって何やら楽しそうな様子だ。

 何があったのかは分からないが、無道はセイラに拉致されてからずいぶんと打ち解けた様子だ。

 非常にかしましい。


「俺が彼女たちを落としたときの口説き文句を話のネタにしてるみたいだ。…改めて聞かされるとこっ恥ずかしい言葉ばかりだけど、こればっかりは病気みたいなものだからなぁ…。」


 口ぶりの割には反省の色が見えないルークスに、カズヤとテルキアはジト目を向けた。


「……串を寄越せ。………俺も手伝おう。」


 全く動じていないルークスに何を言っても無駄だと思ったのか、テルキアは野菜の刺さった串を皿から持ち上げると、それを火にかけた。


「あ、おい!それは箸休め用にちょうどいいタイミングで焼こうと思ってた香味野菜だ!焼くならこっちの肉にしてくれ。」


 急にルークスが大声を出したので、テルキアは驚いて数センチ飛び上がった。

 その時に服の裾から尻尾が見えたような気がしたが、きっと気のせいだろう。


「あ、ああ…。……すまない。………ええと、こっちの肉を焼けばいいんだな?」


 気を取り直して、リトルドラコのバラ肉が刺さった串を焼き網の上に置いたテルキア。


 カズヤも、何もしないわけにもいかないので、余っていたリトルドラコの頭を解体することにした。


「おい!そっちは仕上げ用の弱火ゾーンだよ!バラ肉はまず強火で炙って脂で揚げ焼きにしないと!」


 再びルークスの怒声。


 飛び上がるテルキア、尻尾の幻影。


 カズヤは丁度硬い鱗にナイフを通そうと苦心していたところだったので、刃を滑らせて手を浅く切ってしまった。


 鋭く研がれた刃物で肌を切った時、すぐに血は流れない。


 焼けつくような一瞬の痛みを感じた後、数秒してから、やっと赤い線のように傷口が浮かび上がってくるのである。


「ああ、ごめんよ!驚かせるつもりは無かったんだけど…。」


 慌てて自分のリュックサックを取りに行くルークス。

 傷薬でも取り出そうとしているのだろう。


「大丈夫ですよ。軍手をしてなかった僕が悪いので。」


 それに対し、これまでに何度も解体で失敗し怪我してきたカズヤは冷静だ。

 彼はアイテムストレージから清潔な水を取り出すと、傷口に浮かんだ血液と周囲の汚れを洗い流した。


 血液の混じった水は川へと流れ込み、その匂いを嗅ぎつけた小魚たちが集まって来ていた。


「あら、これはまたずいぶん深く切っちゃったようで。大丈夫?」


 いつの間にか無道含む、かしまし4人娘が彼の切創を覗き込んでいた。


「出血の割には浅いんですよ。ちょっとヒリヒリするけど特に問題はないかと。ところでブドウさん、渓流釣りはしなくて良いんですか?」


 直線のような切り傷を眺めていた無道の目は、時折ちらちらと血に集まってきた小魚に向けられていた。


「うぉい!そんなに長い間火にかけてたら、肉が硬くなるだろう!せっかくの柔らかいササミがパサパサになっちゃうじゃないか!?」


 3度目の怒号。

 

 驚いてテルキアが飛び跳ねたのであろう足音。


 カズヤも、無道も、セイラも、ヒルデも、ライカも。

 思わずその方向を向いてしまう。


「…普段はお優しい方なのですが、ことお料理の話になるとあのご様子で。でも、お料理は本当にお上手なんですのよ!」


 セイラ曰く、ルークスは料理に関して並々ならぬこだわりがあるらしい。


 勇者パーティには料理が得意な女性もいるし、セイラもその中の1人なのだが、厨房に立って勝手なことをすると文句を言われるらしい。

 出来るだけ邪魔にならないよう、アシスタントをする程度にとどめて、味などに口出しはしないのがルールのようだ。


「そうだとしても、副支部長さんは料理を知らなさすぎですわね。」


「まあ、男冒険者の中には肉に塩を振って焼くだけなんて人も少なくないからね…。」


 自分の事を棚に上げてテルキアをフォローするカズヤだが、彼はかなりの料理下手である。


「ブドウさん、釣り好きなんだねー。なんか似合ってるかも。」


 ルークスの料理好きには慣れっこなのか、ヒルデが川を覗き込みながら言った。


「ええ、釣りは大好きですよ。ですが、人の血が流れ込んだ川の魚を食べたいとはあまり…。」


「わかる~。でも、アタシはだんな様の血なら飲んでもいいけどね。」


「「「…。」」」


「いや、冗談だよ?」


 吸血性のコウモリは存在しているが、ヒルデはあくまでコウモリの()()である。

 なので、彼女に血を吸いたいという願望があるのだとすれば、それは本能ではなくただの趣味である。


 本人は冗談だと言っているが、とても冗談には聞こえなかったので物凄い空気になってしまった。


「…でもさ。旦那様が指を怪我した時、傷口を舐めて治してあげるみたいなシチュエーションには憧れるなぁ。」


 口数の少なかったライカも、結局はヒルデのようなとんでもないことを言いだした。


「ら、ライカさんもそういう感じなんですね…。」


 勇者パーティはやべえ奴ばっかだなぁぐらいに思いながら、カズヤは静かに身を引いた。


「…ちょっとわかるかもしれませんわね。」


「だよねえ、ちょっとえっちで良いよね。」


「えっちかどうかは分かりませんが…良いですよね。」


 しかし、意外にも彼以外の3人、すなわち女性陣はライカの意見に対して肯定的だった。


「おやカズヤ、血は止まった?お姉さんがぺろぺろして治してあげようか?」


 無道がニヤニヤしながらそう言った。


 今までの法則性から考えるに、じゃあお願いしますとでも言えば返り討ちに出来るのであろう。

 だが、さすがのカズヤも自尊心のためだけにこの人数の前でそんな恥をかく勇気はなかった。


 彼は黙ってアイテムストレージからシエルラに持たされた傷薬を取り出すと、それを丁寧に塗った。


「な、何か言ってくれないと私が変態みたいじゃないですか!」


「いや、言ってることは変態なんですよ。自覚があるようで何より。胸を張って下さいね。」


 どうやらスルーもある意味で正解だったらしい。

 顔を赤くしてムキになる無道を後目に、内心では勝ち誇りながら、カズヤはリトルドラコの頭の解体作業に戻ることにした。

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