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ラブリーキスキス・デスアンドチョコレート  作者: 岩崎シネマ
1章「これを絶望と言わずに何と言うんだ!」
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#0「始まるは国王選挙」

東アジアの"或る国"が事実上崩壊して半世紀。


ここ『王輝明学園おうきめがくえん』で、歴史に刻まれるだろう大事件が今まさに始まろうとしていた!


全ての始まりは王輝明学園3年KILL組 女子。

出席番号14番、17歳。

鳳凰院ほうおういん 美綺瓊びきに』の生徒会会長演説からだった!



-※-※-※-※-※-※-※-※-※-※-※-※-※-※-

【6月10日(月) 午前8時59分 王輝明学園 / 体育館】


体育館の入り口から壇上まで直線に引かれたランウェイ。


鮮血を彷彿とさせる赤色のカーペットが引かれたそのランウェイは、如何なる理由があれど、この学園でただ一人の人間を除き、踏むことも手に触れることすらも固く禁止されている。


そして体育館に集められた400人余りの全校生徒たちは、体育館を縦に二つに割るその勝者の道を取り囲り、その時が来るのを今や今やと待ち構えていた!


時刻は午前9時。体育館の照明が一気に落とされる。

暗闇に包まれた空間には、一瞬と驚きと、予想しえるその後の展開に期待感がこだました!


同時に突然鳴り響くファンファーレ。

スポットライトが入り口を煌々と照らす。


光の中心には彼女が立っていた!

この学園トップの称号、つまりは生徒会会長の座を手にし、唯一ランウェイを踏むことを許された人間。


「鳳凰院 美綺瓊」その人こそが美しくも、凛々しく、光を体全身に浴びながら神々しくも立っていたのだッ!!


美綺瓊は400人以上の視線を一斉に集めながらも、堂々とした出で立ちでゆっくりとランウェイの上を進んでいく。


彼女の制服の胸元に付けられているはエンブレムバッジ。

王冠と学園の形を金とダイヤモンドで模した職人の技が随所に光る一品。

彼女が生徒会会長である証明。全校生徒が羨むべく存在。

これまさに『生徒会バッジ』であった。


「・・・!!」


しかし、彼女のランウェイを歩むその大胆かつ優雅な動きには、バレリーナの如く、いささか余分な動作が多かった。

それだから彼女は気が付かなった。

ランウェイの上に彼女が大切とする『生徒会バッジ』が落ちたことに…。


「び、美綺瓊先輩!」


一人の男子生徒がそのことに気づき、ランウェイの外からバッジを手に取ると美綺瓊のことを呼び止めた。


「バッジが・・・バッジが落ちました!!」


美綺瓊は優しくも美しく微笑みながら、男子生徒が伸ばした手の中にあるバッジを貰い受ける。


「あなた、名前は?」


美綺瓊の質問に、男子生徒は緊張しながらも「1年DEATH組 出雲いつも 今市いまいち」と名乗る。


「出雲君、生徒会バッジを拾ってくれて感謝してるわ」


「でもね出雲君、この『生徒会バッジ』に触れることが許されているのは生徒会会長に選ばれた人間だけなの」


「出雲君、あなたはまだ1年生だから、そのルールを知らなかったかもしれないけど」


「出雲君、これはあなたのようなただの一般生徒が触れて良いものではないわ」


そう言って、美綺瓊は制服の内ポケットからピンク色に塗装されたデザートイーグルを取り出し、出雲の頭に銃口を向ける。


自分の頭に向けられている物は一体なんなのか。これから何が起きようとしているのか。


それを出雲が理解するよりも前に『どん』と破裂するような轟音が響く。そして彼の頭は吹き飛んだ。


辺り一帯に血と出雲の肉体"だった”ものが、まるでバケツからぶち撒けられたかのように飛び散っていく。


予想できることだったとはいえ、近くにいた生徒たちは突然の出来事に小さな悲鳴を上げた。だが、すぐその後、体育館の中に広がったのは歓声だった。


あまりにも唐突で、無慈悲で、寸分の無駄も無いその美しい光景に生徒たちは歓声を送る。


拍手喝采。鳴り止まぬその中で、美綺瓊は生徒会バッジを襟につける。


そして、彼女が片手を上げると、時が止まったかのように、一瞬にして静寂が体育館を再び包み込んだ。


「いいですか、王輝明学園生徒諸君!我が学園は次なる王の育成、且つ選出の場!」


美綺瓊はランウェイを歩きながら、言葉を続ける。

彼女の声は、襟につけられたピンマイクに拾われ、体育館の中に大きく響き渡る。


「そして先日、この国の初代国王が引退を表明されました!」


「故、この国、この学園の規則に則りここに宣言します!」


「我が校で"国王選挙"を開催します!!」




『少子高齢化』『不景気』『犯罪率上昇』『領土問題』『他国からのミサイル脅威』


この国は五十年前、民主主義から王権制度に大きな舵取りがなされた。


組織化された政治体制では国を脅かす数多くの問題を解決するスピードも、柔軟性も無く、この国は一人のカリスマに支配されることを選択したのだ。


『王様の言うことは絶対』この国の民は声を合わせてそう言った!


「次なる国王は我らが学園の生徒の中から選出されることになっております」


「学年問わず!性別問わず!選ばれるのは全校生徒459名の中からただ一人!」


「国を指揮するに相応しいカリスマ性を持ち合わせた人間こそが国王として適当」


「それを計るため一週間後の月曜日、国王選挙を開催します!」


「全校生徒が一人一票誰かに投票し、最も票を集めた生徒がこの国の二代目国王となるのです!!」


そして、美綺瓊はランウェイを歩き終え、体育館に設置された壇上の上へと辿り着く。


そこから400人異常の生徒たちを見下ろしながら、学生服のポケットから小型の機械を取り出した。


「して、わたくしも生徒会会長という身、国王の座を譲る気は毛頭ありません」


「国王選挙とはこれ正に戦争、票が一票でも多い者が国王になることが適当」


「すなわち、他の全生徒を一人残らず殺し、自分に票を投ずれば、たった一票でも国王になることが可能です」


「故、皆様全員を殺すための"爆弾"をこの学園内に仕掛けさせてもらいました」


美綺瓊はそう言って取り出した機械に取り付けられたボタンを押し込んだ。


「爆発は3時間後の本日の正午12時丁度」


「その時、皆様の命は尽き、わたくし…鳳凰院 美綺瓊がこの国の二代目国王となるのです!」


壇上の壁に掲げられた巨大な電光掲示板が突如、6桁の数字を表示させる。


『02:54:44』『02:54:43』『02:54:42』


その数字は一秒ごとに数字を一つずつ減らし、それがこの学園に仕掛けられた爆弾の爆発までのタイムリミットであることは説明するまでも無かった。


「無論、この学園から逃げ出すことは校則上不可能」


「王輝明学園校則第1条・王輝明学園生徒は8時40分までに登校すること。これ破ること、すなわち退学を意味する!」


「王輝明学園校則第2条・王輝明学園生徒はいかなる理由があれど、就業時間である16時まで外出を禁ずる。これ破ること、すなわち退学を意味する!」


「校則を破れば、即刻退学処分。すなわち国王になる権利、及び投票権利の失効!」


「さぁ、王輝明学園生徒諸君、高らかに叫ぼうではありませんか!国王選挙の開催ですッ!!」

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