シンバル捜索隊
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お待たせしました。いよいよ、ここから俺と遥希の甘い同居生活になる…………
ワケがねぇ!!
事はあらぬ方向へ動き出した。
「兄弟や親に好かれる方法?!」
昼休みに、遥希が俺の教室に来て、周りの友達にそんな事を訊き始めた。
「そりゃ…………あれじゃね?あれ!」
「ヨシ、あれじゃ答えになってないって。」
智輝がヨシに突っ込んだ。
「あれって何?」
「最後のプリンを譲るとか、宿題をやるとかじゃね?」
結局オグが答えた。オグの意見に、遥希は真剣な顔をしてメモを取っていた。
「あ、あと、テレビのチャンネル譲るとか、お風呂の順番譲るとか、一緒に入るとか?」
智輝は冗談でそんな事を言い出した。
「一緒にお風呂に入る…………」
「ちょっと待て!!それはメモるな!」
「そんなもんメモってどうすんだ……?」
オグ、それは訊かないでやってくれ。
「いや、遥希、勉強だ。早織さんは遥希が勉強したら絶対喜ぶ!!」
「勉強かぁ……勉強は苦手なんだよねぇ……」
「だろうな。」
勉強のできない遥希は、課題を出さない。それが原因で、ここ連日様々な先生に追いかけられていた。
「いた!藍野さん!」
「ヤバイ!見つかった!」
言ってる事が完全に逃走犯だ。
遥希は先生に気がつくと、俺の机の下に頭だけ突っ込んだ。
「いやいや!!図がヤベエから!!」
「聡太、机の下貸して!!」
俺が動かずにいると、中に入れない遥希が俺の足を押していた。
そこへ、大西先生がやって来た。
「藍野さん、どこに隠れようとしてんの!?」
「藍野はここにはいません!!」
いや、無理があるだろ。
大西先生は優しい美魔女の英語教師だった。先生は遥希の隣にしゃがみ混むと、遥希の背中をトントンと叩いた。
「藍野さん。」
「ひぃっ!!無理です!出せません!全然やってません!」
「そうじゃないのよ。」
「へ?」
え?そうじゃない?そこにいる、全員が驚いた。
「英語の課題じゃないんですか?」
「いや、それもあるんだけどね、シンバル、返してくれる?」
「は?」
…………シンバル?
誰もその言葉に理解できなかった。
「ああ、あれ、埋めました。」
「埋めた?」
「埋めた!?」
「どこに?」
「中庭。」
一瞬、時が止まったようだった。
「何故……………………?」
その後、遥希は慌てて言い訳をした。
「あの、C組の子がもう少しシンバルがタイミング良くならないかな?って悩んでたから、テレビでシンバル埋めるといい音が出るようになるって見たのを思い出して…………」
「で、埋めた……?」
その場にいた全員が思った。
あ、こいつ、ヤバイ奴だ…………!!
「タイミングの問題と音は何の関係もないだろ!?今すぐ掘り返して来い!!」
「えぇ~!無理だよ~!どこに埋めたか忘れちゃったもん!!」
「お前は犬か!バカ犬か!!」
ぶちギレた俺をみんながなだめた。
「まぁまぁ、落ち着け。落ち着け聡太。」
「放課後、宝探しといきますか?」
「みんな、手伝ってくれるの!?」
こうして放課後、シンバル捜索隊になって、中庭を掘り返す事になった。
みんなは、あちこちから借りてきたスコップやら熊手やら、思い思いの方法で中庭を掘り始めた。
智輝が中庭の入り口に立って言った。
「候補地は3ヶ所、全部で4枚のシンバルを見つける事!!見つけた人には、藍野さんから焼きそばパンの進呈があります!頑張るぞ~!」
「おー!!」
何だこれ……。
「ヨシ、そこ関係ないから!関係ない所掘るんじゃねーぞ?」
何故か、シンバル捜索隊は智輝が仕切っていた。
「聡太の友達、いい人達だね。」
掘り出す気のない遥希が俺の隣に来てそう言った。
「智輝は知ってるだろ?」
「小倉君とは同じクラスだけど、怖そうで話した事無かった。」
「オグはああ見えてフェミニストだぞ?」
見た目はかなりいかついけど、オグは優しい。
「ヨシ君はバカだね。」
「お前が言うな。」
「智輝は…………ちょっと苦手。」
どうしてだ…………?智輝は同じ小学校からの友達だ。
すると、遥希は勢い良く立ち上がって、掘っていた三人に声をかけた。
「あー!足元!!」
「え?」
「ヨシ君の足元に取手が出てる!」
えぇ?取手なんかあったか?ヨシの足元を良く見ると、紐のような物が飛び出ていた。
「あ、これ?あった~!あったぞ~!」
無事、4枚のシンバルが救出された。そして、無事音楽室に返却された。
帰りに、下駄箱の前で焼きそばパンをほおばりながら、ヨシが言った。
「あれ、叩いたら砂とか出て来るんじゃね~?」
「お前見つけてねーだろ?何焼きそばパン食ってんだ?」
「みんな、ありがとう!一緒にシンバル返しに行ってくれて~!」
みんなは靴を靴箱に入れ変えながら、それぞれ、気にするなと言っていた。
智輝だけは遥希にこう言っていた。
「藍野さん、あの時の借りは返したよ。」
「うん、まぁ、別にもう気にしてないよ。」
「お前ら、何かあった?」
二人は顔を見合わせて、笑った。
「別に?」
何?何だこれ?もしかして…………
「そんなに好かれたいならさ、僕が付き合ってあげようか?」
え…………?この流れでヨシ!?
ヨシは二人の間に割り込むように告白した。しかし、その告白はアッサリバッサリとハッキリと断われた。
「いや、無理!ヨシ君と付き合うには私の胸と尻があと十センチは足りない。」
「あははははは!確かに!!」
「あ、じゃあ俺~!」
えぇ!?今度は智輝!?何なんだ?そのノリ!?
「智輝は目だけじゃなくて、頭も悪い。パス!!」
「じゃ、俺も。」
オグまで!
「髪型が無理!前髪を切れ!うっとおしい!」
「無理だ!前髪は命だ!」
「女子か!」
全員がこっちを見た。
え!?は!?俺!?
「俺はやらねーよ!」
「何だよノリ悪ぃ~」
「ちっ!やっぱりノリで押し切れねーか。」
みんなは俺を置いて先にぞろぞろと下駄箱から外に出て行った。
え?お前ら何考えてんだ!?




