表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第一章 異世界で一攫千金!
5/128

第4話 クエスト!

 ギルドに来てから2日ほどたった。

 今日もカウンターに座ってジュースを飲みながらレイラやマスターと駄弁っている。このジュースは果実水と呼ばれてる物だが甘くて非常においしい。果実を絞ったものに植物の蜜を混ぜたものらしい。


 偶然、バーサーカーのバルドを追い払ってからマスターには気に入られた様だ。

 気絶してからギルド2階の部屋を貸してもらっている。

 実にラッキーだ。


 1日中冒険者行き交うギルドでマスターやいろいろな冒険者の話を聞いていただけあってだいぶこの世界のことが分かってきた。

 冒険者はギルドでクエストを受けて生活費を稼いでいること、フロントの街のお得なお店、ゲームのように魔王軍の侵略が世界中で行われていることなどいろいろな情報を教えてもらえた。

 普通、初心者冒険者は宿無しで野宿だと言う事も。



「魔法なら試してみるのが一番だろう。簡単なクエストにでも行って試し打ちをしてみるといい」

 レイラと『ダイスの腕輪』について話合ってるとマスターが割り込んできた。

 マスターは長めの黒髪に髭を生やしたワイルドな風貌のバーテンダーだがとても親切なおじさんだ。

「そうね、いくら運が良くてもレベル1じゃねぇ。少しは経験積みに行きましょうよ! それにお金も尽きて来てるし丁度いいわ。やっぱりお金よ」

 レイラは乗り気だ。

 クエストを受けてモンスター退治。

 こんな王道的な展開ワクワクしない訳がないじゃないか!


「ねぇマスター。どんなクエストがあるんだ? ……なるべく報酬いい奴で」

 それでも今の俺は『遊び人、Lv.1』だ。

 慎重に勝てる相手を選びたい。

 強かったらドラゴン退治とかもできるんだろうな、とか考えると強さがあるのもいいなって思ってしまう。

 ……いや、そんな主人公じみた能力があったらそれこそ厳しい戦いに巻き込まれそうだ。

 遊び人くらいがちょうどいいのだろう。

「これなんかどうだ? 10匹ほどのゴブリンの群れが住み着いていて危険だから退治してくれというものだ。場所もここフロントの街の近くだし初心者にはちょうどいいぞ」

 マスターは依頼がたくさん張られた掲示板から1枚の依頼書をはがして見せてくれる。

「せっかく冒険者になったってんだ、ビビってないで無茶にも飛び込んでナンボってもんだぜ。それが冒険者ってもんさ」

 

 『ゴブリン退治』 

 初心者冒険者が行くクエストでは王道中の王道だ。

 少しばかりの知性をもった小型の人型モンスターゴブリン。

 レベル1の冒険者でも何とかなるだろう!



 クエストを受けて、レイラと一緒に街の質屋に向かった。

 しばらく外で待たされたがやっとレイラが出てきた。相当店主と揉めていたようだが…。

「ふっふっふ、この杖を見なさい金治! 優秀な魔法使いだけが使えるウィザード・ロッドよ! これさえあればどんなモンスターも怖くないわね!」

 これまでになく自信満々だ。

 めんどくさくなりそうだからその、あればどんなモンスターも怖くない杖を質屋に入れていたことについては言及しないでおこう。



    ------------



 クエストの目的地には10分そこらで到着した。

 街のすぐ後ろにある裏山、そこの山道にある小さい洞窟。

 俺とレイラは茂みに隠れて様子を伺う。


 10匹ほどのゴブリンたちは洞窟の前でたき火を囲んで、なんのかは予想もつかないが大きな肉を焼いて騒いでいる。

 身長1mほどの小柄の体に緑色の肌、頭には小さな角。

 正しくゲームで雑魚として登場する様なTHEゴブリンといった見た目だ。

 こう見ると結構気持ち悪い小動物って感じだな。

 敵に気づかれないように小声でレイラに聞く。

「あれがゴブリンだな。どうする? もっと油断するまで待つべきか?」

 ビビッて慎重な俺に対して…。

「え? 突撃一択でしょ! あーんな雑魚にチマチマする必要はないわよ。それに戦闘は習うより慣れろよ、経験値を積まなくちゃね!」


 レイラは余裕な様子で…。

「さあ、先制で魔法をお見舞いしてやるわ! いくわよ金治、これが魔法よ!」

「え……、ちょっ…まっ!」

 勢いよく立ち上がって先端に赤い水晶が付いた杖を頭上に高く掲げた。

「食らえ! 『ファイアボール』!!」

 レイラが呪文を叫ぶと杖の上に赤い光が集まりサッカーボールほどの火の玉が出現した!

「いっけーっ!」

 杖を振り下ろすと杖の上に浮かんでいた火の玉が発射される。


 火の玉は弧を描きながらこっちに気が付いて全員がじっとこちらを見ているゴブリンの集団に飛んでいく。

 ボウンッ!!

 ゴブリンの1体にぶつかり、爆炎を起こすと黒焦げになったゴブリンが宙を舞った。

「……ッ、すっげぇ! これが魔法かぁ…」

 呆気に取られてる俺の背中をレイラが押して来る。

「なーにしてるのよ? もう戦闘は始まってるわ。さあ、冒険者なら戦いなさい!」



 突き飛ばされた俺は隠れていた茂みからゴブリンたちの前に飛び出した。

 一斉に俺の方をジロリと睨み付けて来る。

「よ……、よしっ! やってやる!」

 もっと安全で知的に行きたかったがこうなればもう自棄だ!

 雑魚中の雑魚に負けてるわけにもいかない。

 レイラが「杖があるからコレは一文無しの哀れな初心者にプレゼントしよう」と言って恩着せがましくくれた刃渡り20㎝ほどの短剣を手に取った。

 剣なんて初めて持ったがなかなか重いものだな。


「ギッ、ッギャーッ!」

 ゴブリンの群れは木の棒やこん棒を持って襲い掛かってくる。

 俺は必死に近寄ってくるゴブリンに短剣を叩きつける。

 ゴブリンの力は見た目通り人間の小学生ほどもない。プラスチックバットかなんかで叩かれているようでそれほど痛くない。

 俺も負けずに剣で切り裂く、と言うよりは殴りつける攻撃を食らわせる。

 それより後ろの魔法使いがでたらめに『ファイアボール』を連射してくる!

 ……はっきり言ってゴブリンの相手より味方の魔法を避けることのが大変だぞ。




 あっという間に決着はついた。

 ゴブリンはやはり雑魚モンスターだったようでレイラの魔法で一撃、俺の攻撃でも2,3発でノックアウトだ。

「うん! モンスターの癖になかなか美味しいもの食べてるじゃない。……さっきの金治もなかなか頑張ってたわ、いい線言ってたわよ。大丈夫、怪我は神殿で治癒魔法かけてもらえば治るって!」

 たき火で焼かれていた肉を頬張りながらレイラは誤魔化すように笑いかけてくる。

 さっきの戦闘でモンスターから受けた傷はほとんどない。

 ……背中についた大きな火傷以外はな!

 

 しかし、ゴブリンの焼いてた謎の肉だが実際なかなか旨い。




 すべて平らげて満腹になると…、

「さてと、最後に洞窟のチェックと行きますかぁ! お宝あるかしら?」

 レイラは元気に立ち上がってゴブリンが住居としていた洞窟に向かって歩き出した。

「ん? ……もうゴブリン退治はしたし帰るんじゃないの?」

「馬鹿ねぇアンタ。モンスターを倒したらソイツが持ってたお宝や素材を頂くのが常識でしょ! ゴブリンは習性上人間から奪ったものを巣に隠してるのよ。お金になるものもあるかもしれないわ!」

 そういえばゲームだと自然にドロップ品が手に入ったりするけどこういうのも自分たちで取らなきゃならないわけか。

 

 その時、洞窟の奥で何か動いたような…。

「さあ! お宝探しよ!」

「あ……、まって…」

 意気揚々とレイラが洞窟のほうに向きなおったその時、そいつは洞窟から出てきた。

 ギルドで出会ったバーサーカーのバルドよりもデカいソイツは緑色の肌にビール腹、頭には大きな角。

 成長したゴブリン、といった感じの見た目だ。

「……えーと、レイラちゃんアレは……、何かな?」

「……アレは恐らくゴブリンロードね。……こんな初心者の街にいるはずないモンスターよ」

 青ざめたレイラは答えた。


 『ゴブリンロード』

 ゲームとかの類でも見たことがある、名前的にもゴブリンのボスだ。

 大体序盤の中ボスくらいで登場するけど……。

 うん、まず初心者向けのモンスターではないね。




「ギギャギャギャギャァァァァアア!!」

 コブリンロードは奇声を発しながらバカでかいこん棒で殴り掛かってきた。

 ドッゴォォンッ!!

 振り下ろされたこん棒はレイラのすぐ近くの地面に叩くつけられ、岩肌は小さいクレーターのようになっていた。

 ……叩かれたら死ぬなぁ、アレ。

 

「いやあぁぁぁあ! もう駄目よこれ! 死ぬわよ! このまま叩き殺されるか、捕まって肉便器にでもされるのよ!!」

「レイラ最低! ……それよりアレ俺たちで勝てるものなのか!?」

 2人で後退するがゴブリンロードはじりじりと近寄ってくる。

「無理に決まってるでしょ! アイツ倒すにはレベル20は必要な化け物よ! 遊び人と魔法使いじゃ相手になんないわよ!!」

 うん、やっぱり絶望的な状態みたいだ。

 ……逃げられる空気じゃないな。


「しゃーないこうなったら戦うぞ! レイラ魔法だ! 戦闘開始!!」

「ああああっ! こんなとこで死んだんじゃ堪らないわっ! 食らえ『ファイアボール』ッ、『ファイアボール』ッッ!」

 涙目のレイラが魔法を連射する。

 放たれた火の玉は巨体のゴブリンロードに当たって小さな爆発を起こすが全く怯む様子すら見せない。

 俺も相手の腹や足に短剣で切りかかってみるが気にもされていない。

 それどころか派手な魔法を打ちまくってるレイラにだけヘイトがいってる様だ。

 ゴブリンロードはドスンドスンとレイラに迫って行く。



 レイラは木にぶつかるまでバックしたけどもう目の前には獲物を追い詰めて笑みを浮かべるソイツが立っている。

 ……何とか助けないと。

「そうだ! サイコロッ!」

 俺は咄嗟に『ダイスの腕輪』の水晶部分を叩いて出てきたサイコロを後ろに投げ捨て、いざレイラを叩き潰そうとこん棒を振り上げているゴブリンロードに向かって走り出した!


 『ダイスの腕輪』

 サイコロが出てくるから自然に他の冒険者にこう呼ばれていた魔法の腕輪。

 ここ2日間ほどいろいろ弄って大体の機能は分かっている。

 まず出てきたサイコロを振ると体が光る。


 シュイン、という独特な音と共に青い光が俺の体を駆け抜けた。

 体が軽くなって走る速さが増す。


 その光でダイスで出た目分だけ多くすべてのステータスが強化される。

 具体的には元の能力値×出た目分ほどだ。

 

 このパワーアップを信じてゴブリンロードに突っ込む。

 ……元の能力が運以外平均以下の遊び人じゃ少ない目が出て2倍や3倍になってもあのモンスターにはかなわないだろう。1なんかが出て変化なしだったらお終いだ。そこは化け物じみた運のステータスに賭ける!



 ちなみに、レイラ曰く魔法アイテムはそれぞれ決まった使用回数があってその分使い切ると次の魔力が自然にたまるまで待たなければならないそうだ。

 ちなみにこの『ダイスの腕輪』は一回使うと1時間ほど待たないと次のサイコロは使えない。

 つまりたくさんのサイコロを振って無敵になったりはできないようだ。



 追い詰められたレイラとゴブリンロードの間に割り込むように飛び込むと振り下ろされるこん棒に向けて両手を突き出し衝撃に備える。

 次の瞬間両腕に重い感覚がズシンと落ちてきた。

 恐る恐る目を開けると巨大なこん棒は手の上で止まっている。

 痛くないし強化は成功したようだ!

 ゴブリンも訳が分からずうろたえている。

「……? 私、生きてる? なんで……、金治!?」

 しゃがみ込んで顔を手で覆っていたレイラも気が付いたようだ。



 チャンス!

「これでも喰らいやがれっ!」

 こん棒を突き飛ばして、がむしゃらに拳をゴブリンロードの腹めがけて突き出す。

 しっかりとした肉の感触。

「ギッ…、ゴッガッ…ッ!」

 力もかなり強化されたらしい俺の渾身のパンチにモンスターは腹を押さえて後ずさった。

「レイラ! チャンスだ!」

「……ッ! 『ファイアボール』ッッ!!」

 ハッとして慌てて魔法を放った。

 放たれた火の玉は相手の足に当たって爆散する。

 不意に魔法を食らって、デカブツは前のめりに倒れた!

「今だ! 喰らえぇっ!!」

 再び短剣を手にしてゴブリンロードの頭に剣を突き刺す。

 固い肉の感触を抜けて脳天に刺さり込む。

「ギギャァァァァ…ァァ……ァ…」



 断末魔を上げて動かなくなったモンスターから短剣を抜き取って腰に戻した。

 振り返るとレイラが立っている。

「……金治」

「……レイラ」

 お互いにの手を取り、そして…

「「怖かったよぉぉぉぉぉおおおおっ!!」」

「死んだかと思っだぁぁぁ!」

「生きででよがったぁぁぁ!」


   -----


 ひとしきり泣いて落ち着いたとき、俺の体が一瞬光った。

「あ……。腕輪の効果、切れたな」

「……え?」


 腕輪について分かっていることをもう一つ、腕輪を使って強化中に動いたりするとその分の疲れがまとめて降りかかってくるのだ。

 ……そしてその疲れはサイコロの目が大きく、強化が強い分だけ大きくなるようだ。ちなみにさっきの目は最大の6だろうか。


 俺はその場でレイラに支えられながらゆっくり意識が無くなっていった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ