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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第一章 異世界で一攫千金!
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第2話 パーティを組みましょう!

 『駆け出しの街フロント』

 名前通り初心者の冒険者が集まる街。

 鎧を着たヤツやローブを着て杖を持った魔法使いらしい人が行きかう。

 立ち並んだ露店では見たことがない食べ物や道具を商人たちが売り出して非常に活気あふれている。

 小さな山をそのまま街にしたらしく、中心に行くほど坂道になっていた。



 うるさいくらいの商店街をレイラに引っ張られながら進んで行く。

「よう、レイラじゃねぇか! ソイツは彼氏か? あの野蛮女にねぇ」

「そんなんじゃないわよ! 変な事言うとあなたの店、マズいって悪評流すわよ!」


「あらあら、レイラちゃん仕事帰り? 新しい服入荷したから是非見に来てね!」

「おうレイラ! その前に俺の店にツケ返せよな!」

「後でね後で! ……ツケは生きてるうちには返すわ。多分!」


 露店のおじさんおばさんがレイラに声を掛けて来る。

「なぁあのレイラってヤツ有名人なのか? やけに声かけられてるけど」

 俺はふと露店のおっさんに訪ねてみた。

「まあ有名っちゃ有名だな。アイツ最近この街に来て冒険者始めたんだけどよ、見ての通りの騒がしさと愛嬌だ。この商店街でお転婆レイラを知らねぇヤツはいねぇよ。……まぁアイツいつも金欠で大半の店でツケを…」


「ちょっと金治、何やってんのよ! 余計な事聞いてないでとっとと行くわよ!」

 話の途中でレイラに引っ張られてしまった。

 何か不穏なワードが聞こえた気が…

「ほらほら、何湿気た顔してんのよ。もうすぐ街の頂上、目的地よ!」



 まずは神殿へ行って身分証となる冒険者カードなるものを作る必要があるらしい。

 この街の住人でない冒険者はカードがないと揉め事になったりした時、問答無用で投獄されることもあるそうだ。


「ここが神殿よ。大きな町でいうところ役所の役割も兼ねてるわ。そして隣にあるのは冒険者の酒場! 通称ギルドね。さ、早く登録しちゃいましょ」

 まるで自分の物かのようにレイラが説明してくれる。

「了解了解、序盤のチュートリアルでよくあるパターンのやつね。チャチャっとカードとやらを作って観光しますか」

 ずかずかと俺たちは神殿に踏み込んだ。


   -----------


 神殿は真ん中に巨大な女神の像、その前方に台座がありその横には受付のカウンターが並んでいた。

 俺は係員らしき人に開いてる受付のお姉さんの前に押し出された。

「スんませーん、冒険者カードって言うの欲しいんだけど…」

「いらっしゃいませ。冒険者カードの新規発行ですね。手数料込みで銀貨2枚になります」

 

 ……銀貨2枚とな?

 無論、ポケットは空っぽ。お金どころか財布すら持ってない。

「レイラちゃ~ん? 銀貨2枚だそうですけれど…」

「あっ! そうか、魔法もカードも知らないのに通貨なんてあなたが持ってる訳ないわよね。うーん、ここで払って恩を売っておくのも悪くない……、でもねぇ…」

 ここは癪だが当人の目の前で恩売りの計算をしてるレイラに期待するしかない。

 じっとレイラを見つめよう!


「……しょーがないわね! 未来への先行投資だと思って腹をくくるわ。この慈愛に満ちたレイラ様に感謝することね!」

「ありがとうレイラ様!!」




 その後、受付のお姉さんの指示に従って女神像の前の台座に立った。

 受付のお姉さんが石造の模様をなぞると台座から光が出て全身を照らす。

 すぐに光は消えた。

「ほらいつまでそこに突っ立ってるのよ、こっちこっち!」

 レイラにせかされて台座から降りる。


「これで能力スキャン完了です。基本のリング形状でお渡ししますね」

 そう言われて宝石のような石が付いた指輪を渡された。

「リングって……冒険者カードってのはどこいったんだよ…」

 ボヤキながらも言われるがままに指輪を付けて説明を受ける。

「冒険者カードを確認してみましょう。指輪にカードを開示するよう念じてみてください」 


 念じろってなぁ、まあアホっぽいがやってみるか。

 グッと手に力を入れて……(カード出ろ、カード出ろ!)

 すると指輪の宝石部分が光る!

 ボンっと煙と共に半透明のカードが空中に出現した!

 正しく魔法の指輪だ。

 ……ちょっと感動しちゃうね。


 出現したプラスチックのような薄く透けたカード。

 一番上には天勝金治と自分の名前が記載されており年齢20歳、身長や体重まで書かれている。

「こちらが金治さんの冒険者カードになります。出し入れは指輪に念じて下さい。この部分が能力を表すステータスとなっており成長によって増減します。あなたの現在のレベルは1、ステータスは大方平均的…。……これは? 運の強さを表すステータスだけ桁違いに高いです! 一部の魔法や素材の採取などにおいて大きな効果があるでしょう」


 ステータスの欄をみると棒グラフのように能力が示されている。

 よくあるゲームのようなステータス表だ。

 なんでこんなはっきり分かるのかとか文句をつけてもしょうがないからそういうものだと飲み込むことにしよう。


 全体的に低いのはレベル1だからとして確かに運のゲージだけほぼカンストしてるのだ!

 神様に頼んだだけのことがあるな。

 もっと微妙に上がるだけのショボいのを予想してたけどこれはラッキーだ。


 ……隣で見ていたレイラが小さくガッツポーズしたのを見逃しはしない。



「ええと現在の職業は……、『遊び人』になってますね。金治さんのステータスですと転職できるのは村人と商人がありますが転職なさいますか?」



『遊び人』

 この世界が初めての俺でも役に立つ職じゃないことがわかるぞ。

 その証拠に隣でレイラが必死に笑いをこらえている!



 でも村人や商人になってもなぁ。

「……このままでいいです」



   ----------



 説明が終わって神殿を出るとレイラは噴出した。

「ブッぷぷぷぷぷっっ……、堕落して遊び人になる人はよくいるけど始めっから遊び人の人なんて初めてみたわ! それで運が最大、英雄とは真逆の生まれながらのギャンブラーにでもなりそうなステータス! 才能感じるわぁ!!」


「そ、そんなに笑うことないだろ! 冒険者初めてなんだから。それにレイラさっきなんか喜んでたじゃん、アレなんだよ!?」

 不機嫌に答えるがレイラは楽しそうだ。

「運の高い人がいれば回りの人にも幸運がくるものなのよ! だから私にも運が回るってこと。そんなに怒んないでよ~、運がいいのはすごく良いことじゃない! ご飯奢ってあげるから元気出しなよ。ほら、タダ飯よ。ついてるじゃない!」

 そのままレイラは腕をつかんで俺を引きずるように冒険者の酒場、ギルドの中に入っていった。

 ……俺は知っている、タダより高いものは無いって事を。


   ---------


「いらっしゃい冒険者!」

 マスターらしいおじさんの声が響く。

 広いギルドの中はたくさんの冒険者でにぎわっている。

 ギルドはクエストの受付と酒場を兼ねた場所で、いつも冒険者のたまり場になっていてこの街で人気の食事処でもあるそうだ。

 いろんな格好の冒険者たちが思い思いに食事をしたり雑談したり、真剣に作戦会議をしたりしているようなのもいる。


 ……オンラインゲームのロビーで見たようなその光景は実際に見ると思ってたよりもゴチャゴチャしていて騒がしいな。


 席に座らされて待っているとお金がいっぱい入った袋を自慢しながらレイラが戻って来た。

「さっきのダンジョンのクエストを報告したのよ。おかげで借金も返せるわぁ! あなたも好きなもの頼んでいいからね!」

 この派手な女は借金生活をしていたらしい。

 そりゃ運が欲しくなるか。




 あっという間に目の前のテーブルいっぱいに美味しそうな料理が並ぶ。

 レイラが注文してくれた山盛りのフライドチキン? を一つ頬張る。

 鶏肉より若干柔らかいが絶妙な辛さのスパイスと合わさってかなり美味い。

 なんの肉かは分からないが、俺の食べたことない生き物の肉だが美味いことには変わりないから深くツッコまないでおこう。


 レイラがこの街に来る途中に話した俺の転生話を振ってきた。

「……へぇー、あなた本当に転生してきたと思ってるのねぇ。それで何? 物語の主人公らしく世界を救うためにモンスター退治でもするつもりかしら?」


 確かに今後どうするか考えなければならない。

 でも元から勇者を目指して戦う気は毛頭ない。

 使命があるわけでもないのにそんな苦しそうで怖そうな冒険はお断りだ。

 ある程度考えていた予定は自分のステータスの低さや職業が遊び人だというのが分かった時から決意にかわっていた。


「いいや、俺は正義の味方なんてお断りよ。のんびりこの世界を見ながら、運に任せて金を稼いで遊んで暮らしたりしたいね」

 我ながら世の中舐め切ったクズ野郎のような答えだ。



 ……しかし、レイラはそんな俺を何か考えながら見ていた。

「へぇ、夢ででも見た転生を信じてるくせに現実的ね」


 次の瞬間、パッと顔を明るくして身を乗り出して来たのだ。

「……素晴らしいわ! 冒険者ってのは名を上げたり英雄になることを夢見てやってる奴らが多いけど私は違う。そう、楽して自由に暮らしてこその人生よね! あなたはやっぱり見込んだ通りの遊び人!」

 らんらんとした輝く瞳で言い切る。

 そして彼女は右手を突き出して、次の一言を放った。


「どう? 私と一緒にパーティを組んで素敵なお金持ちを目指さない?」


 かなり失礼な事を言われてる気がするが気にならない。

 類は友を呼ぶ、そんな言葉が脳裏を過った。

 数居る冒険者は名声を求めて勇者を目指すもの、しかしこの目の前にいる彼女は違う。

 この世界を適当に楽しみ、とにかく楽をしたい今の俺にとって最高の仲間じゃないか!


 差し出された手を強く握って答えた。

「喜んで! これからよろしくな!」

 それを聞いたレイラはニヤリと笑うと握った手をブンブン振る。

「それはよかったわ! でもお金を稼ぐには元手がいる、私たちは実質ほぼ一文無し。冒険者らしくクエストで稼ぐわよ! ……大丈夫大丈夫、仲間がいれば一人よりずっと楽に戦えるものよ。さぁ、そうと決まれば腹ごしらえ、しっかり食べてバリバリ働くのよ!!」

 

 ……餌付けされてる気はするけど仲間が出来たのはいい事だよね?




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