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ジャック・ポット・チャンス!~幸運転生者の異世界日記~  作者: 天勝金治
第一章 異世界で一攫千金!
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第1話 始まりの宝箱

 赤い宝箱の重い蓋を押し開けると金色の光が溢れ出す。

 その光は生き物のように俺の左腕にグルンと巻き付いた。冷たく固い金属の感触が手首を包むと、ズシリと重たい感覚が左腕にのしかかる。


 凄い閃光に思わず閉じた目を恐る恐る開くと左手首に宝石がいくつか埋め込まれ、不思議な模様のついた黄金の腕輪がついていた。 


「な、なんだこれ!? ……黄金の…腕輪?」



   ---------



 俺、天勝金治(あまかつきんじ)は異世界転生してこの世界に来た。

 死因は“お約束”のアレだ。


 数分ほど前のこと、俺は光に包まれて空中に飛び出した。

 周りには自然豊かな山に野原、少し遠くには中世もので見るような建物が集まっていて周囲を壁で囲まれている街らしいものが見えた。

 見たことがない景色に感動したさ。

 空中から光に包まれてゆっくり下降する間、夢中で回りを見回したさ。


 でも、突然光が消えて小高い丘の上に着地した……と思ったらそのまま足元が抜けてこの密室にズドン!

 ゲームで言ったらバグで壁をすり抜けて隠し部屋に来たようなものだろうか。

 でもリセットも効かないだろう現実でこれはひどい。

 いきなり狭い部屋に閉じ込められた状態だ、つみじゃないか!

 

 

 その部屋を見回すと石造りの壁で囲まれた狭い部屋には扉も窓もなく、高い天井には自分が入って来た時の穴が開いていて目の前には赤い宝箱。

 そう、宝箱。

 ゲームが好きな人なら分かるはず、あのRPGでよく見るタイプの下の四角い部分の上にカマボコみたいな形状の蓋がついてるあの宝箱!


 ……開けるよね?

 目の前に「ソレ」があったら開けるよね!

 開けたらなんか腕に腕輪が付いた、……というのがここ数分の出来事だ。


 ちなみに腕輪は外そうと引っ張ってみたけど腕にジャストサイズで巻き付いていて外れそうにない。

 なにこれ、呪われた装備ってやつか?


 諦めるまで腕輪をいじったあと空っぽになった宝箱、遺跡のような部屋をもう一度見回す。

 普通に考えると空を飛んで降りてくるとか、宝箱から腕輪が巻き付いてくるなんて現実じゃありえないよな。

 ……やっぱ夢?




 なーんて考えながら何となく、本当に何の意図もなくその黄金の腕輪を見ながら後ろに下がって壁によりかかったその時だ。

 寄りかかったかなり丈夫そうに見えるところどころ苔の生えたその石壁は俺を受け止めることなく、重力に任せて俺と一緒に後ろに倒れ出したのだ。

 気が付いた時にはもう手遅れ。

 ドシィィンン……

 石の壁と一緒に地面に強く打ち付けられていた。


 頭に激痛が走る。

 どうやら夢ではなさそうだ。

 確か転生前に能力がどうとかいうので“運”が欲しいって言ったはずなのに……、かなりアンラッキーじゃねぇかコレ!




 しばらく頭を押さえて悶絶していたその時… 

「すっごい音したけどなに……、あなた誰よ?」


 振り向くとランタンを持った女性が立っていた。

 不信なモノを見る目でこちらを見つめて腰に装備した短剣に手をかけている。 

 ウェーブの入った背中まで届く長いブロンドの髪、俺より少し高いくらいの身長、ゲームに出てくる踊り子のような露出の多い服に大きな赤いマントを羽織っている。

 年齢は20代くらいだろうか?

 モデルのようなプロポーション、結構濃い目に化粧をしているが美人だ。

 

「ハァーッ、あなた冒険者? なんの装備も無しにダンジョンにいるなんて危ないわよ。それにしても貧相な装備ねぇ」

 その女性はビビリまくってる俺を上から下まで見回した後、ため息を一つついてケチをつけると俺の顔をジッと見つめてくる。

「なんとか言いなさいよ、アンタに言ってるのよ!?」

 喧しい女だな。


 今更ながら自分の服を確認するとTシャツにジーパンという死んだときの格好のままだ。

「……えっと、お、俺は金治。……この世界に来たばっかりで。お姉さんは…」


「私はレイラ、もちろん冒険者よ。あなた賊とかじゃない様ね。警戒してごめんなさい、私のことは気軽にレイラちゃんって呼んでくれていいわよ! ……金治君のその腕輪、魔法アイテムね! 魔法だけで旅をしてくるなんてすごい魔法使い? それにしては貧乏っぽいのよねぇ」

 レイラと名乗るその女性はパッと顔色を変えると、突然楽しそうに猛烈に話し出してやっぱりケチをつけてきた。

 彼女はヨダレでも垂らしそうな顔で俺の左腕、金の腕輪を凝視している。


 そんなに俺は貧乏人みたいなのか?

 確かに量売店のワゴンセールで買った服だけどさ。


 いや俺の服なんかどうでもいい。

「レイラ……、ちゃん? この腕輪、そこの宝箱から出てきたヤツで魔法とか知らないし……、っていうかこの世界やっぱり魔法あるの!?」

 さっきまでいた隠し部屋を指さして言った。


(……話し方が不自然?

 いきなり他人、しかも女性と話すのには勇気がいるんだぞ!

 わかんないことばっかだし。

 コミュ障とか言うなよ!)



「はぁ? あなた魔法知らないの? 変な子ねぇ、頭でも打ったんじゃないの? ……打ってたわね、頭」

 そう言って俺が落ちた部屋を見回す。

「でもこんな隠し部屋があったとはね、初心者向けダンジョンで全部探索され切ってるはずなのに。こういうの発見したってことは金治って職業は盗賊か何か? ……そうだ冒険者カード見せてよ」


「職業? 冒険者カード?」

 またもや知らない、ゲームっぽい言葉が出てきたぞ。

 ゲームのチュートリアルは嫌いで毎度スキップしていたが当人として聞いてると知らない言葉が出るだけでワクワクしてしまうものだな。


 俺が思わず顔を輝かせると、呆れた様子の彼女は少し悩んで…

「カードも知らないなんてどんな田舎からきたのよあんた……、でもそうだとしたら運だけで隠し部屋に入ったってことよね。……うん、いいわ! あなたと一緒にいれば私にも金運が回ってきそうね! この美少女レイラちゃんが案内してあげるわね!」

 少女という年齢ではなさそうなその女性は俺の手を引いて自信満々に歩き出した。



           ----------



 よくわからないままレイラに連れられて歩く。

 ほとんどなに言ってるか分からないがいろんなことをズカズカ喋りまくられた。

 一つ分かった事として、彼女は“冒険者”だそうだ。冒険者はクエストを受けてその報酬で生活するという、正しくファンタジーじゃないか!

 やっぱりこの世界にはゲーム的な要素が溢れている。


「かわいそうに、頭を打って記憶がおかしくなっているのね。大丈夫、そのうち良くなるわ」

 どこから来たのかと言う問いに転生して来たと返したところ、彼女は本気で憐れんで頭を撫でて来た。

 やっぱりこういう別の世界に転生したら素性を素直に話すのではなく適当に旅の者とでも言っとくのが安パイなのだろうな。


「いや、やっぱりきっと旅して来たんだろうな。気が付いたらあの宝箱のあった部屋に落っこちてたんだ」

「うん、きっとそうよ! 街に行ったらこの私が案内してあげるわね。あなた、見た感じ手ぶらだから旅の荷物をどっかに隠したのよ。記憶が戻れば隠し場所を思い出す筈よ。そしたら所持金の半分は私に頂戴ねっ!」

 なるほどそれが狙いか。

 満面の笑みを浮かべるこの女は相当セコい様だな。


「いいでしょ、私は命の恩人の様なものよ。ほらあれを見て、街の入口よ!」


 不信の目を向ける俺の視線に気が付いたレイラは誤魔化すように前方を指さして言った。

 大きな壁が続く一か所に巨大な門が付いている。

 お城の入口の様なその門の左右には鎧を着た門番らしいのが立っていた。


「おい、門番がいるぞ。俺なんかが入れるのか?」

「心配性ねぇ、大丈夫よ。この街は冒険者に成りたい初心者が集まる街なのよ。よっぽど怪しくない限り入れるわ。……まあ、少し怪しいけど大丈夫よね?」

 そう言う彼女に手を引かれて門に近づいて行く。


 ふとレイラは来た道を振り返りながらつぶやいた。

「でも不思議ね、ここの道でモンスターに出会わないなんて。いつも3回くらいは絡まれるのに。……まあ、きっと運がよかったのね!」

 それを聞いて思い出す。

 運を上げることを転生するときに俺は望んだ。

 生まれ変わっていきなり宝箱の前だったり、変だけど綺麗なお姉さんに案内してもらえたりもしかしてこれラッキー?




 門の前まで来たが街を取り囲む石造りの壁や巨大な門は圧巻モノ。

 予想よりずっとデカいぞこれ、某テーマパークの比じゃ無いほどの臨場感!


 鎧を着て剣を腰にさげた門番がこちらに気づいて、

「ん? みすぼらしいが冒険者希望か、よく来たな。ようこそ“駆け出しの町フロント”へ!」

 そう言って巨大な門を押し始める。


 ゴガガガガ……

 大きな音と共に門は開かれて行く。

 門の向こうには映画で見たような中世風の街並みが広がっている。

 石畳の道を人々や馬車が行きかい、数々の露店が立ち並んで活気に溢れていた。

 人々の声や足音がファンファーレの様に響いて来る。


 ファンタジーモノのゲームや本で何度も見た世界。

 そして憧れてきた世界の街並みがそこに広がっている。



 さあ、異世界生活のスタートだ!




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