表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

2日目 なかったことになったお昼休み

――今日も来たんだね、高校生って暇なんだ?――


 いいってことよ。まあ今日もはじめるとすっか。


――会話として成り立ってないよ――


 ところであれだぞ。感想来てなかったぞ。あんなに言ったのにどういうことだ。


――え? 僕はちゃんと昨日……――


 くっ……なんでなんだ。100人くらい……見て……のに……お気……入りも……全く……!


――こらこらこら。あー、あー、小さい声だから聞こえないなー。そういうメタクソなの、かなり嫌われると思うよ――


 ぐすっ……とにかくだ! 希望が届かなかったので、お前はあれだ! ぼっち! ぼっち飯!! ぼっち飯ですー。


――何それひどくない!?――


 マジ約束破るとか信じられねーし。

 暗い学生生活を送るがいい。まあ慣れると落ち着くもんだけどさ。


――慣れてるの?――


 うるさいな。えー、お前には昼休みに一緒にご飯を食べる友達はいません。でも教室で食べるのも寂しいな。

 お弁当を作ってもらっている手前、食堂で食べるわけにはいかない。

 そして中庭はリア充の巣窟だし、屋上にはいつも鍵がかかってるんだよね。


――は?――


 こうなったらしょうがないな!? トイレの個室で食うしかないよな~!?


――……そういうことするんだ――


 やーいやーい、ざまあだぜ。それもこれも、


――……僕は、机にかけていた鞄の中から弁当を取り出して、立ち上がる。

 無言のまま、僕は机の間を縫って歩き、教室後方の引き戸へ向かう――


 お、おい、どうしたー? 怒ったのか? え? ちょっと。


――扉を開けて振り向かずに。バカヤロー!! 僕は叫んで、ゆっくりと廊下へ出て、振り向かないまま、ピシャリ、と力を叩きつけるようにして扉を閉める!――


 いや、悪かった、冗談だよ。

 お前の後ろ、扉の向こうから、庵治のぼやく声が、

「おいおい、どうしたんだよ。立て付けが悪いからって、そんなに力を込めることはないと思わないか?」


――無視する。僕はトイレに向かう。普段はあまり人の来ない旧校舎。更にその三階のトイレを目指して歩く。だんだん人通りが少なくなるが、僕は誰とも目を合わせない――


 もしもーし?


――一番奥の個室に僕は腰を落ち着ける――


 洋式便座に腰を落ち着けたわけだ。


――弁当を広げ、もくもくもくと、お母さんが作ってくれた弁当を食べる。そこに感情はない。とてもおいしいけど、それが逆に残念だ。僕はただ、友達と一緒に弁当が食べたかっただけなのに、どうしてこんなことになってしまったんだ。どうしてこんなにおいしい弁当を作るんだ。クソッ! ……いや、ほんとはお母さんに謝らなきゃいけないんだ。こんな風に友達もできないように育ってしまったことを、一番悲しんでいるのはお母さんじゃないんだろうか……――


 俺が悪かったって。でも、希望を送ってこなかったお前も……あ、なんだ、メールだ。おい、最近は電源切ってなくてよかったんだよな?


――僕は虚ろな目をして卵焼きを口に運び――


 くっ、返事しねえのか。ってかまだやってるのかよ。お前結構頑固だったんだな……

 ほら、また迷惑メールだよ。ありゃ、一気に何通も来たぞ。ってありゃ。

 お前……メール送ってきてたのか。俺の方で受信ができていなかったんだな。


――ん――


 俺が悪かった! メールが来てなくても俺が悪かった! 大人気なかった! こんな話に人気がなかったのも仕方なかった! ごめんごめんごめん!!


――どうすんの――


 土下座でもなんでも! いたします……ご無礼申しました……


――ん? なんでもするって言ったよね?――



(数十分、物語とは関係のないくだりが続く。書類の性質上、割愛する)



――じゃあ、さっきのとこいらはなかったってことでいいよ。やり直し――


 いや、そういうのはしない。せっかくだからこの人を出しておこう。

 旧校舎の三階トイレの個室で弁当を食べていたお前は、聞こえるはずのない足跡に一瞬ドキっとした。


――便所飯仲間かな――


 足あとはなぜか、一つだけ閉まっている一番奥の個室の前で止まった。コンコンと、ノックしてくる。


――「入ってます」――


 いやいや、ノリがいいね。お前の言葉に応えて曰く「知っているわ」、と……


――女子!?――


 聞き覚えのある女子の声。彼女もクラスメイトだ。

 彼女は……いま顔とか見えねえな。八郷未来。

 クラスメイトの中でも特に特殊な能力を持つ――彼女は、時を操る超能力者だ。


「どーもどーも、世界線がおかしなところと交わってしまったみたいじゃないか! いいから私に任せてくれたら悪いようにはしないぞぅ。これからびしっと修正するよ。むむむむむむーん。30分……時を巻き戻す!!」


――何それ、強すぎない?――


 はっきり言って強い。あんまり使うと悪い影響もありそうだし、なんでもできるわけじゃないし、いつでも使えるわけじゃないし、一回使うと長期間使うことができない。

 それでもはっきり言って、多分一番のチート能力だ。

 彼女と仲良くしておいて、損はないんじゃないかな。まあ、今日はどうかな。


――とりあえず、送っておいた感想と希望をちゃんと見てよ――


 分かった分かった。さて、どんなのが届いているのかな……



 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ