表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕と君の雑談物語シリーズ

僕と君の雑談物語《愛情》

作者: 音央

「愛って何だと思う?」

「……何だいきなり。今に始まったことじゃないが」

「ふと気になったの。あれよ、人が一回は経験する、抽象的なことを真面目に考えてみたくなる時期」

「少なくとも俺には経験ないが」

「じゃあきっとこれからあるのよ」

「その前に死ぬかもしれない」

「……あなたって屁理屈大魔王ね。今に始まったことじゃないけど」

「どうとでも言え。で、さっきの質問だが、俺だけ答えるのは不公平だ。まずは君から」

「いいわよ。人は愛がなければ生きていけない。誰からも愛されてない、なんて言う人もいるけど、それは自分が気付いてないだけだと思うの。身も蓋もない言い方をしてしまえば、被害妄想ってやつね」

「随分と手厳しい」

「だから、まあ親愛とか友愛とか恋愛とか、種類はあるだろうけど……『愛が主食』というのはあながち間違いではないと思うのよ」

「ほう」

「人間は、生物的に生きていくためには、空気や水を必要とする。社会的に生きていくためには、愛を必要とする。まあ、私の持論はそんなところかしら」

「なるほど」

「じゃあ君は?」

「そうだな……必要という意味では同意だが、俺的には、愛は他人に関する感情全てだと思う」

「他人に? 自己愛は?」

「自己愛ってのは、自分を客観的に見て、他人とみなした上での感情ということにしておく」

「分かったわ」

「『嫌い』とか『憎しみ』って、愛の裏返しって言うだろ。愛憎は表裏一体とか」

「言うわね。人を愛したことがある人は、人を憎むことができるとか」

「『好き』の反対語は『無関心』とも言うしな。無関心は、他人に対して何の感情も抱いてないってことだろ? 嫌悪や憎悪は感情だからな」

「なるほどね」

「だから、『好き』も『嫌い』も『愛しい』も『憎い』も全てひっくるめて『愛』だと思う。本当に誰からも愛されないっていうのは、誰からも関心を持たれないってことなんじゃないかと」

「興味深い意見をありがとう。やっぱり、あなたっていつも面白い意見を聞かせてくれるからいいわ」

「要するに暇潰しの雑談相手なんだな俺は。そうなんだな」

「まあいいじゃない。私はあなたを愛してるわよ」

「…………」

「どうしたの?」

「関心、って意味で受け取っておく」

「まあどっちでもいいわよ。あなたは?」

「愛してるかもしれない、そうでないかもしれない」

「…………」

「どうした?」

「……性格悪い」

「重々承知。こんぐらいドライでないと、君みたいな変人は相手できないらしくてな」

「あっそ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いつも通りのやり取りかと思ったら、十分な前置き(伏線)をお互いに張ったうえでの、最後の会話。意味深と言うべきか、一周回ってシンプルと言うべきか悩みますが、今回(雑談とは言いつつ)無駄の無いや…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ