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美術部系男子の芸術観

どうも、樹海の主を屠った男、紀久岬です。


現場の状況をお伝えします。現在時刻は夕方6時を回った頃、でしょうか?時計がないので全然わかりませんね。場所は樹海。樹海の中の少々開けた空間になります。状況としては血濡れのあれやこれやを目の端に追いやり、目前の美少年と相対しているところになります。


そう、これは異世界において初のヒューマン的なものとの交流!ヒロインではないのが悔まれるところだ。ちっ、助けなきゃよかった。

つーか今この野郎すごく口汚くなかった?命の恩人に自害を勧めてきたよ?


「・・・あの、どうして美少女じゃないんですか?」

とりあえず会話を続けようとしたことが裏目に出たようだ。つい願望が口から出てしまった。

「気持ち悪い声帯だな。潰した方がいいんじゃないか」

願望に返ってきたのは絶望ですね。これ以上の会話の継続は不可能であると断定。退却します!


美少年から離れるべく踵を返す。第一村人との交渉は決裂しました。


「私の名はジルヴェスター・ローエンシュタイン」


交渉は決裂したっての。何一人で自己紹介始めちゃってるのさ。


「先ほどの戦闘で私の移動手段はなくなった。貴様の助力を借りてやらなくもない」

どうやらこのイケメソは俺に助けを求めているようだが、残念ながら俺はノーと言える男だ。そもそも助力と言われてもこっちが助けて欲しいくらいだ。

「ノー!」

思ったことを省略して口に出すのが癖です。

「ノー?それが貴様の名か?」

「ノー!」

違うよ拒絶の意味だよバカ。

「しかし拒絶されている気がして紛らわしい名前だな。改名しろ」

「分かってんじゃねえかよ!わざとか!」

嫌な奴だコイツ!一言以上多い!


とにかくコレと関わると良いことがなさそうだ。ジル・・・なんとかって名前長いし、下手したら貴族とか色々面倒な人間な気がする。異世界モノで貴族と関わるのは貴族に転生した場合のみ受け付ける。

「あんたを助ける義理はないし、名前を教える気もない。関わらないでくれ」

「私を助けておいて何を言っている。名乗るつもりがないなら勝手に呼ばせてもらおう、フローラ」

それ女性名じゃない!嫌がらせかそうか嫌がらせだね?

「・・・紀久 岬だよ」

「ふむ、ミサキか。渾名はミヒャエラでいいか」

もはや源氏名だよ。ミしかあってないじゃん。

「私のことはジルと呼べ。それと、野営の用意をしろ。日が暮れるぞ」

日が暮れるのは分かってますぅー。野営とかしたことねぇよばーか。もう泣きたい何この暴君。


しかし夜が訪れているのは事実。こんな嫌味な奴でも一人よりはずっとましだ。ここは一緒に行動するべきだろうか。・・・ほら、夜の樹海とか死ぬほど怖いじゃん?

ということで、野営準備。


まずは火だね。とりあえず手持ちの新聞紙とマッチで着火ファイヤー。んで、集めた木片を投入。ついでに晩飯に例のグリズリーを炙って頂きます。すごく不味い。塩ないし、上手く捌けないから血とか・・・毛とか・・・色々不味い。やっぱりペインティングナイフで捌くのは無理だったかな。スキルのせいか普段の50倍は切れ味が良いんだけど。便利だなー。


あ、王子なら寝てるよ?馬車ん中で。俺が肉を焼く臭いにやられてダウンです。フフフ鍛え方が違うんだよ、美術室の臭さは半端じゃないぜ?夏場の油絵の臭いは凄い。揮発性なんだから当然だけど。






・・・炎を見てるとムラムラしてきた。いや創作意欲的な意味で。


炎の揺らめきは一種の芸術じゃないかと俺は思う。炎が同じ形の瞬間はない。常に変動し、色を変える。その動きはどこか神秘的で魔性だ。

そしてその魔性は人間の創作意欲を刺激する。常に一定ではないからこそ芸術家は形に残そうとするのかもしれない。絵でも写真でも、自分の経験を結晶として残したい。そんな思いを見るモノ全てに抱いてしまうのが芸術家で、自分はそうありたいと思っている。


この炎も、夜の樹海の静けさも、今自分が触れている空気そのものを描きたい。静寂とは何色だろう?この世界の空気は何色だろう?そもそも色なんてあるのかどうか、そんなのは関係ない。自分が感じたことが全てだ。


この世界の目に映るモノ全てを描きたい。自分の生きている証を残したい。

俺がこの異世界でするべきことは、きっと、ただそれだけ。

異世界がどうした。いいから描かせろ。











樹海に朝日が差し込むまで描き続けました。どうすんの、この大量の謎の作品達は。変なスイッチ全力で押して描かれたのは不気味な青い渦やら禍々しい緋色の水面やらで、作者の深層心理が表れてるね。キモい。

普段は割と地味に描いてるんですよ?たまに精神が乖離するだけで。まぁいいや、悔いはない。


脳内会議を行っているうちに、王子が起きてきた。もうコイツ王子でいいよね、顔的に。

「おいミッ〇ー、何だこの薄気味悪いゴミの山は」

「おはよう王子。その略し方は危険だから今すぐ止めろ」

「っなぜ・・・私が皇子だと!?」

何故かうろたえていらっしゃる。ホワイ?


「とにかく、ちょっとそこ座れ。5分で描いてやる」

異世界2日目、まずはいけすかない王子でも描いてやりますかね。







夜に襲われないのは樹海の主的なものを屠ったからだと思います。

芸術云々のところは自分の理想だったりしなっかたりするので、気にしないでください。適当に読んで頂ければ幸いです。

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