シスコン皇子と異世界の美少女(暫定)
前の話の王子目線です。大分はしょっているので前話を読んで頂かないとわからないかもしれません。読んでも、わからないかもしれません。
俺の名前はジルヴェスター・ローエンシュタイン。ローエンシュタイン帝国の第3皇子だ。
そんな俺は現在「邪魔な第3皇子は魔の森に捨てちゃおう!計画」の下、外側から施錠された馬車に揺られている。もちろん、出れない。これもう詰んでる。
確かに、俺は妾の子でありながら2人の兄より優秀であり、その優秀さ故に父や兄達から疎まれてきた。だからといって「じゃあ捨てよ!」は無いだろう。大方16歳を迎えて社交界デビューする前に消してまえとか考えたのだろうが、随分と思い切ったものだ。帝国の第3皇子がどっか行って死にました、なんて諸外国に対してメンツが立たないだろうに。死体も見つからないのか皇族の扱いどうなってんだと。これを知ったら妹が激怒しそうだな。俺を思ってではなく外交的な意味でだが。本当に強かな賢妹だ愛してる。
ガクンッ
我が妹に思いを馳せていると、馬車が大きく揺れた。そのまま垂直に引き倒され中にいる俺はばっちりシャッフルされる。打ちつけた弁慶の泣き所を擦っている間、馬車の外からは兵士の悲鳴や馬の嘶き、獣の咆哮が聞こえてくる。これ擦ってる場合じゃないわ。
一瞬、外が静かになり、乱暴に施錠されていた扉が開かれた。
森の熊さんとの御対面である。超強そう。あとすごい興奮している。おそらく俺を女と勘違いしているのだろう。もっとよく見ろ、これは女顔ではなく王子フェイスというやつなんだ。ハァハァしないでくれ。
熊さん・・・もといその魔物が今にも俺に襲いかかろうとしたとき、ピタリと魔物の動きが止まった。そのままグラリと崩れ落ち、胸から血液を垂れ流す。その背中には銀のナイフが10本、心臓部に突き刺ささっている。・・・不可思議だな。勝手に死んだよコイツ。
いや誰かが殺したんだ、一撃で、殺した。俺の窮地を救ってくれたが敵でないかはわからない誰かが。
その誰かが馬車の中に入ってくる。あの熊さんを一撃で仕留める程の実力者、どんな髭面だおい。
そこにいたのは美少女だった。
紺色の装束を纏い、木箱を提げた華奢な身体。肌は白く瞳と髪は揃いの漆黒。少しつり目がちだが整った顔立ちの少女が、心配そうにこちらを見ている。
可憐だ。好みではないが。妹じゃないから。
「お嬢さん、もう大丈夫ですよ。安心してください」
少女は俺に語りかけてくる。予想外にイケボで。声帯おかしいだろ。あと俺はお嬢さんじゃないんだ。この顔は爽やか王子フェイスなんだよ。そう彼女に伝えたかったけれど、
「どこの誰がお嬢さんか。今すぐその腐った眼球を刳り抜き目薬に約一月漬けたうえで戻してやっぱり駄目でそのまま自害するのをお勧めするぞ」
俺は自分が口下手だったことを忘れていた。
これが第3皇子最大の弱点であり、「邪魔な第3皇子は魔の森に捨てちゃおう!計画」を実行された最大の要因であった。
以上が、これから俺の義妹になる男との出会いである。
皇子はアホです。あと美術部系男子さんはちゃんと男の子です。いずれ義妹になりますが。大丈夫、ちゃんと男の娘です。