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ある昔話

 むかしむかし、あるところに戦争をしているふたつの国々がありました。ふたつの力の差は誰が見ても明らかで、強い方の国が弱い方の国を一方的に攻撃しているような、そういう戦争でした。弱い方の国では小さな村や街が丸ごと焼かれてしまうことも決して珍しくなく、たくさんの人が悲嘆に暮れ、小さな物音にも怯え、日陰に隠れてもなお、大切なものを次々と奪われる日々を送っていました。

 そんな弱い国の辺境にあるとても小さな村に、ひとりの勇敢な少年がいました。彼は、人々のつらすぎる毎日を変えたいと心から願っていました。しかし、いくら勇敢であれ、彼には何の力もありません。自分の無力さを嘆いた彼は、ふと古くからの伝承にある偉大な魔法使いの話を思い出しました。無謀だと判っていながらも、彼は藁にもすがる思いで、遙か西の方角を目指しました。何でも叶えてくれるという、いるかどうかも判らない魔法使いに会うために。

 少年が旅立って幾夜の後、とうとう彼の故郷にも敵の手が及んでしまいました。村は一日もしない間に跡形もなく焼き尽くされ、きれいさっぱり無くなってしまいました。勇敢な少年は、故郷を守る勇者にはなれなかったのです。

少年が自分の故郷に起こった悲劇を知ることができたのか、そして魔法使いに会うことができたのかは、もう誰にも判りません。何故なら彼のその後を知る人は、この世のどこにもいないからです。

 すべてはもう随分と前に起きた、今では地図にない国でのお話なのでした――。


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