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転生迷宮  作者: デオキシリボ核酸
7/10

時間が空いて申し訳御座いません。

メイン小説を誤って削除したり、と。

ハプニング等がありまして。



「結局、眠れなかった……」


 

 少女から様々な話しを聞いた後、連れられて来た場所がここ、“タルタロス”と言う第一区画の死後の迷宮世界、その一番安い宿屋だ。

 ここは泊まるだけなら料金が発生しないという。

 食事は出ない。風呂もない。簡素なベッドと箪笥が一つ置いてあるのみ。

 血の通ったと思っていた肉体はアストラル体と呼ばれる、言わば魂だけの状態であり、排泄の必要もなければ通常、腹が空く事も無いと言う。

 つまり、ただ無為に時を過ごすだけならここで十分だと言えた。



 何故エニシがここに連れてこられたのか。理由は単純明快、それは死んだからだ。

 死んだ魂はその連なる世界樹、少女が言うにはあらゆる世界の集合体であり、“外”から見れば樹木の形をしていて、そこからそう呼ばれるようになったらしい。

 その世界樹毎に定められた番号で、タルタロスの対象区画に集められる。

 因みにタルタロスに来れるのは人型になれる“魂”だけだ。



 それ以外の魂は転生までの百年を封印状態で待つことになる。

 このタルタロスと呼ばれる世界は“遊技場”だ、神と呼ばれる存在もの達が運営する遊技場。

 神と言ったが、それは正確には上位存在、高次元的存在と言い換えるのが正しい。

 世界の理にすら干渉し、あらゆる事象を超越した者達を総称してそう呼ぶ。

 その大半が不老不死である為、遥か那由他なゆたの先まで生きるその者達はある時、暇つぶしにとある小さな世界を構築した。



 それがタルタロスの始まりであり、現行のタルタロスはそれが肥大化した物だ。

 タルタロスには一つの大迷宮が存在している。

 それこそがこの遊技場の目玉、本命であり、最下層は何処までなのかは誰も知らないと言う。

 分かっている事と言えば、その迷宮での活躍により、“様々な特典”が得られるという事。

 それこそエニシの世界のネット小説にある、“記憶保持の転生”や“チート能力所持”だといった事すら容易である。



 転生までの百年間で迷宮の魔物や財宝、そしてどれだけ深部に到達出来るかで“得点”が加算され、それを消費することで願いとの対価とするのだ。

 少女から聞いた他のシステムを聞き、絶対RPG参照しているだろう。

 とエニシが聞けば、逆だという。エニシの世界がタルタロスを無意識下領域より流れ出でた情報により、タルタロスの一端を垣間見、それを元にしてRPGは生まれたのだ、と。

 そうして生まれた“世界”は泡沫世界となり、時に苗となり新たな世界樹を生成するのだと言う。



 そしてそう言う“世界を生み出した世界樹の元”、その世界をオリジンズワールド。通称オリジンの世界と呼ぶ、ということも。

 エニシの世界がそれに当たり、その世界は生み出した世界より上位に位置し、下位の世界は更なる下を作り出す。

 そうして世界は常にピラミッド型の螺旋を描くように深層を増していく。

 こう言った知識の殆どが少女により“思い出した”内容であった。



 聞けば転生迷宮に来るのは初めてなどではなく、それこそ数えるのも馬鹿らしくなる程訪れ、そして幾度も願いを勝ち取っていったと言う。

 前回の願いが“理不尽に抗う程度”の肉体的能力と、危機察知能力。

 功績からすれば随分微々たる願いであったらしく、それ以前もすべてが似たり寄ったりで欲がないと少女は言っていた。


 それを聞き、尋常ならざる身体能力と、不可思議な警鐘に納得がいったとエニシは頷いた。

 他にも様々な事を思い出したり、聞いたりしたが、整理には時間が掛かるだろうし、何より死神に邪魔されたくなかったというその理由などは話されていない。



「この世界にも太陽はあるのか」



 何をするにしても部屋で腐っていても仕方がない、と宿屋の自室のある二階から降り、主人に外出の趣旨を伝え外に出れば元の世界となんら変わらない日の光。

 快晴、眩しさに思わず手を翳し日を遮ってしまう。



《何をしておる、時間は有限であるのだぞ?》

《分かってるよっ――――》



 直接頭に響く声、このタルタロスで神は一人だけ気に入ったものを祝福出来る。

 その恩恵は多岐に渡るのだが、すでに様々な情報を一気に叩き込まれた為、その説明は今度ということで受けていなかった。

 声の主はあの少女だ、祝福した神はこうして祝福した相手に干渉することが出来る。

 と、そう言えば未だこの少女の名前を知らない事に今更ながらに気づく。



《む、どうした?》


 不自然に言葉に詰まってしまった為か、やや不安気な声が脳裏に響いた。


《えっと、さ。確か聞いてなかったよな、君の名前》

《ああ、そう言えば約束であったな、ならば教えぬ訳にはいくまいて……そうよな、エニシにも発音出来るようにすれば……Verフェアzweiツヴァイflungフルングとなるであろうか?》



 フェアツヴァイフルング……どういう意味なのかは分からない。

 しかし、名前にしては長く、呼び難い。

 それでは呼ぶときとか不便だと、幾つか縮めるのに候補を思考に挙げていく。

 幾つか考え、一番よさそうなものを何度か発音し確かめる。



《フェル、うん。良かったらだけどさ、これからはフェルって呼んで良いだろうか?》

《……フェル、フェル――そうよな、妾はそれで構わぬ》



 暫くの逡巡の後、少しだけ嬉しそうな声音で了承の意が返ってくる。

 こうやって話して分かったことがあった。

 それはこのフェルという少女、神様だから年は相当なものなのだろうけど。

 自分に対しては少なくとも好意的であるらしく、その好意の種類までは不明でも分かる。

 あの不思議な空間での振舞いの方がどうやら無理をしていた、ということが。



 本来、というべきなのかはエニシには不明であったが、フェルの性格は上目線な物言いながらもどこか純真だ。

 長い年月を生きているとは思えない発言、反応を返してくることが何度かあったのが良い証拠だろう。

 


《ほれ、何をぼぉーとしておる。せっかくエニシには支度用のポイントを渡してやったのだ、取り敢えずは広場の武器屋に行くのがよかろうて》

《了解》



 ポイント。迷宮の行動如何で貰えるものであり、デジタル方式で表示され溜まるらしい。

 しかも、このタルタロスでは一切の取引全てがこのポイントで賄われるという話しだ。

 無駄遣いをすればその分目標は遠ざかる、しかし、人の欲望は限りが無い。嫌らしい仕組みであった。

 フェルに急かされるように宿屋を後にする。

 このタルタロスの第一区画の大きさは優にオーストラリアレベルだ。



 その土地の全てが巨大都市として機能しており、円形の形で存在している。

 あまりにも広い為、各所には空間歪曲用ポータルが設置されていて、様々な場所へと繋がっているとのこと。

 町並みは古き良き古都と言った風情で、全体的に見る限りこの一区は地球に類似した世界を参照されているようだ。


 和洋の混ざった景観で、一定の距離ごとに切り替わるように町並みが変わる。

 和であれば古き良き昭和、或いは明治時代を彷彿とさせ、洋ならば近代ヨーロッパや中世の町並み。

 とある神様の趣味、だそうだ。

 宿屋は丁度広場の一角にあり、半径五十メートル程度の広場になっている。

 この当たりは近代ヨーロッパ風らしく、家作りも煉瓦が多い。

 中心には噴水が水を噴き上げ、時折飛沫が顔に掛かってほんのり冷たく心地がよい。



 気候は四季を再現されているらしく、フェル曰く現在は六月。

 気温は二十六℃と、中々に暖かなものである。

 宿屋“シュピーゲル”の向かい側に見える、防具を模した絵の上で二本の剣の絵が交差した看板。

 その木製のドアを開けば、チリリン――

 と、鈴の音が鳴った。



「すいませーん」



 取り敢えず入り様に声を掛けるが反応はなく、仕方なしに武器や防具が立ち並ぶ商品棚の奥、店主が居るだろうカウンターまで向かう。

 それほど広くはなく、縦三列に横二列と見渡せるレベル。

 ちょっと進んだ先に見えたカウンターには誰も居らず、さてどうしたものかと頭を悩ます。



《店主が店を開けて出るのはそう多くはなかろうて、然程さほど時間も掛からず戻ろう、適当に商品でも見ておるのがよいぞ》



 成るほどと納得し、改めて商品棚を眺める。

 そこにはエニシが見たことある物、ない物含めて様々な物が溢れていた。

 片手剣一つとっても様々な物がある、ショートソードやロングソードにブロードソードなどから始まり、グラディウスやフランヴェルクにクレイモア、ファルシオンにサーベルやパタまで置いてある。

 細剣ならエストックやエペ、レイピアやフルーレが一箇所に置いてあった。



 両手用ならツーハンデッドソードやグレイトソード、バスタードソードやツヴァイヘンダー。

 短剣の類も充実しているようでざっと見ただけで、マインゴーシュやスティレット、一般的なダガーにソードブレイカーやククリまで。

 槍も長槍や短槍に十字槍、他にも多数が並んでいる。

 盾にしたって様々な種類が並び、鎧の類も充実しているのが見て取れた。

 フェル曰くこれで“初心者”用だと言うのだから、とんでもない話しである。



 と、色々みていると先ほどエニシ自身が鳴らした鈴の音が鳴る。

 振り向くのと同時――


「ほぉ、この店に来たってことは、兄ちゃんタルタロスに来たばかりかい?」


 と訪ねられ、答えるべきかと少しだけ考え。


「はい、実は昨日から来たばっかりで、取り敢えず武器屋に行けってフェルが。フェルって言うのはどうやら祝福? てのをしてくれてる神様なんですけど」

「兄ちゃん祝福者かい、そりゃぁ心強いだろうぜ? ここじゃあ贔屓は当たり前、運も実力、特に神の祝福なんてのはその最たるものだという訳よ」



 そう言ってガハガハと笑う、何処からどう見ても架空の種族“ドワーフ”に似た外見の店主だと思われる年配の人物。

 肌は褐色だし、ガッシリとした体は百五十センチもないだろう。

 反して腕は太く逞しい、顎鬚は立派で瞳は大きく性格が豪快そうだ。

 絵に描いたかのような見た目、それが受けた印象だった。



「ちょっと通してもらうぜ」


 カウンターの奥に移動したの見るに、どうやら本当に店主らしい。


「さってと。武器の扱いは初めてかい兄ちゃん?」

「はい。ただ……多分、時間さえあればどれも使えると思います」

「こりゃ驚いたな、兄ちゃん経験持ちなのか」

「経験、持ち?」


 聞きなれない単語に思わず、と言った感じに聞き返してしまう。


「此処に居る奴は殆ど全員がアストラル体で構成されている。わしもそこは変わらん、しかし、アストラル。つまりは魂だけで構築さている分、潜在的な能力や前世、魂に保存された情報を引き出しやすくなってるちゅう話しよ。中には生きている時から前世の記憶を保持してたり、経験を覚えてる輩もおるそうだが、迷宮で功績を成した者でもない限りは先ず居ないだろうよ。話しがずれたが、そういうの全部ひっくるめて経験持ちってタルタロスでは呼ばれとる」


 


 ――その後、店主から他にも迷宮などの話しを聞き、結局バックラーと呼ばれる腕に装着できるタイプの盾と、無難にブロードソードを一本購入。

 というより、手持ちのポイントじゃそれが精一杯だったのだ。腕時計型のポイント表示用のアイテムには零に程近い数字が浮かんでいる。

 武器の扱いに慣れない内は素手の方がマシ、と聞くものの、心理的にはやはり心強い。

 それに身体能力はどうやら生きてた時のものが反映されるらしく、盾とあわせても精々が二キロ少し、十分に扱える重さであった。



《何だか楽しそうであるな?》


 鼻歌交じりに次は何処へ向かおうか、と広場で考えていると、フェルが不思議そうに訊ねてきた。

 それに対して答えるべきか一瞬だけ迷ったものの、隠しても仕方がないと口を開く。


《いや、さ。不思議と生前? どうも現実と変わらないから死んだって気持ちが薄いけど。とにかく、その時から迷宮とかってものには強く惹かれる傾向があったんだ。さっきまではそうでもなかったんだけどな、店主から話しを聞いたり、こうして実際に武器を手に取るとさ、興奮してくるって言ったらいいのか分からないが、だんだんと高揚して来たんだ》


 これも前世とかの影響なのかもな、と最後に付け足す。


《前回の時も似た反応であったからの、そなたの魂の起源に由来するのやもしれぬ。さて、武器も買ったのだ、細かい話しや説明は後でよかろう。先ずは実践が一番よ、次の目的地は……》

《目的地は?》

《迷宮じゃ!》



 了解ッ! とエニシが叫び、身に湧き上がる興奮のままにポータルへと走り出す。

 心は軽く、身体は勇み足だ。倫理観は麻痺でもしているのか恐怖はない。

 あるのはこれから訪れるだろう、数々の冒険の日々に対する思いのみ――――



 

後書き


ちょっと無理やりですが、話しを飛ばしました。

された筈の会話はちょくちょく回想的な内容で小出しにします。


お陰で予想より早めに迷宮に吶喊出来そうです。

次回は恐らく初、迷宮突入となるでしょう。


それでは次はもう少し早めに更新したいと思います^^;

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