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第5章『雷鳴の夜、運命の終わり』エド視点

馬の長いいななきがあたり一面に響いた。

馬の方向転換についていけなかった車体が、闇に向かって吸い込まれていく。

ドンという強い衝撃の後、無重力。

馬車が、宙に浮いている。


一瞬だけ、世界が止まる。


シャロンの瞳が、僕を見ている。

「エド……。」

「シャル……。」


そして——落ちていく。

真っ逆さまに。


時間が、引き伸ばされたように感じる。


僕たちは馬車の中で壁に打ち付けられながら、僕はシャロンを守るために腕と足でシャロンを抱き抱えている。

「怖い……。」

「大丈夫、僕がいる。」

僕は、彼女を離れないように抱きしめる。

「ずっと、一緒だ。」

シャロンが、僕の胸元のシャツを掴む。

「エド……愛してる。」

「僕も……ずっと、君だけを。」


涙が溢れて頬を濡らす。

ああ、やっとシャルがここにいるのに。

やっと、だったのに。

でも——

もう、終わりだ。


走馬灯が、流れる。

白百合を髪に飾った、少女。

湖でのボート。

庭園でのキス。

結婚式の日、他人のものになった君。


そして、イリーナ。

ごめん、イリーナ。

君を、愛せなくて。

君は良い人だった。

幸せになってほしい。

僕なんかより、ずっといい人と。


シャロン。

僕は、君を一度失った。

結婚式の日。

でも、取り返せた。

今は、君と一緒だ。

最期まで、一緒だ。


「シャル」

「エド」


僕たちは、見つめ合う。


落下の中で、時間が止まったように。


「後悔してる?」

シャロンが、聞く。

「いいや。」

僕は、微笑む。

「君を愛したこと、一度も後悔していない。」

「私も。」

シャロンも、微笑む。

「あなたを愛せて、幸せだった。」


涙が、次から次へと頬を伝う。

でも、微笑んでいる。

二人とも、笑っている。

ああ、これでいいんだ。

君と一緒なら、それでいい。


地面が、近づいてくる。

もう、秒読みだ。


「シャル」

「エド」


「愛してる」

「私も」


最後に、唇が触れた。

あの日、庭園で交わしたキス。

あれから、何年も経った。

でも、今も変わらない。

君の唇は、温かい。


そして——

激突。


世界が、真っ白になる。

音が、消える。

痛みが、走る。

でも、不思議と穏やかだった。

シャロンの手が、まだ僕の手を握っている。

シャロンの体温を感じる。

ああ、君と一緒だ。

最期まで、君と。

それだけで、いい。

意識が、遠のいていく。

シャロン……

君の、名前を……

呼びたい……

でも、声が、出ない……

ああ……

シャロン……

愛して……

いる……



静寂。






FIN




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