突拍子もない一撃
時は、2XXX年。
数多の宇宙、数多の世界に属する数多の人類が最強者を決めんと大戦が勃発していた。腕に覚えのある者、名を上げたい者、征しようと意気込む者達が溢れ返り、戦禍は広がる。勝者は一人だけ、称号を手にする者は一体………
こん棒1つで大地を砕く男、バッカスは身長10メートルをゆうに超える。
「ウオオォォ!!“震撼せよ大地”!!」
流麗に水を操る魔女の名はセイレーン、彼女が唱えるだけで大地は大海へと変わり果て、大粒の雨は凶器になる。
「“涙と言う名の槍のように降り注ぐ雨”」
盗人のような格好をしているが、彼が盗むのは金銭ではなく命、クォーツに名前を知られるのは不味い。
「さて───っと、お命頂戴しますか……“盗人の極意”」
一国の王も侮ってはいけない。歴戦の者ほど戦いを熟知している。アンドリュー王の戟は大気を裂く。
「ヌハハハ!!慄くがよい、これぞ伝家宝刀じゃわい、“千閃殲戟”」
独裁王に反旗を翻すクレセントは、100万の義勇軍を束ねる。
「進軍せよ万軍、“勝つのは我々だ”!!」
地を踏み荒らす者には制裁を、妖精チャルは森と同化する。
「不届き者は死んでください、“生命の吸収”」
自然の力は脅威だ。雷の化身ゴードンは、佇むだけで敵を痺れさせる。
「ふん、他愛無い。“堕ちろ世界”」
炎の技を極めた冒険者だっている。彼の名はレッド、赤に愛されし男。
「俺の名はレッド、ジェネラル級冒険者だ!!くらえ!!“炎上不可避”!!」
暗殺者として生きると決めた男、クロウに顔は無い。彼は何者にもなれる。
「“百面相”」
攻めこそ勝利への道筋。格闘家グレイに逃げの文字は無い。
「一勝負しよう、“荒ぶる我”!」
守りこそ勝利の証。鉄壁なる神官とはヘンネルのこと。
「命を捧げてください、“光よ包め”」
幻獣を手懐ける南蛮娘はニコ、彼女は自慢の両手斧で大地を庭のように駆け巡る。
「やっちゃうよお!いでよ!“十二幻獣”!!」
人外はどこにでもいる。生態系の頂点、ドラゴンのランガは火・水・雷の技を習得している。
「カッカッカ、我こそ最強なりて!“三種の竜咆”!」
血の巡りは関係ない。痛みを気にしない機械こそ至高。彼の名はロッキー。
「ピピピピ……ピッ、目標捕捉、原子爆弾を投下します、“天を仰げ”」
破壊力だけが物を言う世界ではない。スライムのキキに惑わされた者は、性別問わず心を奪われ操られる。
「私は貴方の好きになれる。さぁ、好みをいいなさい、蕩けさせてあ、げ、る……ふふ、“魅惑の人形”」
科学の力を駆使するのは研究者モールモッド、彼は毒を好み、危険な調合をする。
「さて、どうなるか見物だな、“因子融合”」
傷を能力とする者もいる。腰に携えた刀は単なる飾り。侍風の男の名はジレン。
「クックック、受けた傷は……主が被れ、“反転界世”」
全ての攻撃を無効化するのは仙人のルゥ。彼の攻撃もまた有効打にはならないが、倒すこともできない存在は厄介。
「ホッホッホ、踊れ舞われ謳うのじゃ、“永劫の戯れ”」
仙人ほどではないが物理攻撃を完璧に無効化するのは幽霊のテルテル、彼女に一度恨まれたら世界を渡っても逃れる術は無い。
「私の魅力10個答えたら許してあげる、“呪われし器”」
宇宙を股にかける海賊がいる。彼の名はオーウェン。重力無視の技は、超弩級だ。
「平伏し、泣き喚け!そして、身ぐるみを置いてゆけ!俺に勝つなど不可能、“重力戦艦砲撃”!!」
宇宙海賊がいれば、宇宙警察はいる。彼女の存在は模範であり規律、氷の女帝に逆うは死を意味する。
「またか……懲りないな、だがここで終わりだ、“凍てつく隕石”」
人世の争いに加わるのは悪魔モンデ。天魔大戦二極の一角である彼は影使い。遠く離れた地で、分身が敵を八つ裂きにする。
「我を見つけること叶わず、怒り狂え、“影絵劇場”」
天魔大戦二極のもう一つ、天使のジェルエンは幼顔だが最高峰の力を持つ。
「もう、面倒くさいったらありゃしない。あたちは早くご飯食べたいの、“太陽の力で塵となれ”!!」
戦いを見守るのは観測者ノイ。彼もまた能力を持つが逃げに徹する。
「はぁ、なんでこんな目に……家で安眠したい───って言ってる傍から攻撃しないでくれ、“空間転移”」
嘘の情報で、かき乱す輩もいる。詐欺師コーネルの言葉を鵜呑みにしてはいけない。あとで痛い目を見る。
「随分、儲けさせてもらえました。ノルマまでは………あと、ちょっとですね───っと、喧嘩は苦手なので変わりにお願いします、“死者の召喚”」
戦いを遊びの一種と考える輩もいる。人は彼を博打王グエリアスと呼ぶ。
「さて次は何の出目が出るか……さっきは攻撃8の防御3に素早さ7で必中効果無しの弓矢だったからなぁ。次はどれかに極振りしてほしいもんだ……“天才の運ゲー”」
断罪者レブラは悪を滅するのみ。欲を捨てたことで、とうに人智は越えた。
「悪滅葬送輪廻断罪、“天掌八卦の陣”」
記した事柄を現実とするのは書記官のスージー。彼女が公正でなければ、世界は終わっていただろう。
「これは単なる作業です、“ヨハネは私”」
無限の力を持つ者の名はムゲン。攻撃も防御も素早さも技も武器も全て無限に扱える。彼(もしくは彼女)を超える者はいない。同等の力を持つ存在を彼(もしくは彼女)は欲する。
「私の欲を満たす御方は何処へ………“夢幻”」
数多の宇宙、数多の世界、数多の人類、最強種を決めんとする戦いに終わりは見えない─────と、そう思われていた時、大戦に風穴を開ける存在が一人出現する。その者の名はシン、創造神と豪語する力は本物で、全てを薙ぎ倒し、ムゲンでさえも倒された。
「ふふ、はは、ふははははっ!俺様が最強だ!俺様に叶う者など、誰一人いない!!」
だが、そこに抗う者が一人。
名を言わぬその者に、創造神シンは酷く憤慨した。
「いい度胸だ、俺様が誰か知らぬとは実に愚かだな!」
「その言葉、そっくり返すとしよう。悪いが、君は私に勝てない。それが世の理なのだよ」
「ふん、笑わせる。創造神より、強い者がいるものか………まさかお前は………いや、そんな筈がない、介入してくるわけ………そうだ戯言だ!俺の油断を誘うとは策士だったわけだ」
「考え方は人それぞれだ───が、それで良いのか?本当に?」
「当たり前だ!これ以上の侮辱は万死に値する。いや、そもそも身に覚えのない奴など、ここでくたばるしかないのだ」
「そうか、残念だよ。君も可能性はあったのにな、どこで違えたか……」
「もういい、俺の力をその身に浴び滅びよ、“夢幻”!!」
無限のエネルギーが世界を包み、捻じ曲げ、破壊する。
「まだまだ行くぞ、“震撼せよ大地”、“涙と言う名の槍のように降り注ぐ雨”、“盗人の極意”、“千閃殲戟”、“勝つのは我々だ”、“生命の吸収”、“堕ちろ世界”、“炎上不可避”、“百面相”、“荒ぶる我”、“光よ包め”、“十二幻獣”、“三種の竜咆”、“天を仰げ”、“魅惑の人形”、“因子融合”、“反転界世”、“永劫の戯れ”、“呪われし器”、“重力戦艦砲撃”、“凍てつく隕石”、“影絵劇場、“太陽の力で塵となれ”、“空間転移”、“死者の召喚”、“天才の運ゲー”、“天掌八卦の陣”、“ヨハネは私”…………」
強襲するのは、存在し得る全ての能力とその攻撃。
「ふはははは、どうだ!参ったか?俺に勝てる者などいないのだ!!」
創造神とは始まりであり、能力者を生み出す源。つまり、ムゲンらは全員、創造神シンによって創られた存在なのだ。技が複製されたのではない。彼らはただの産物。頂点に立つのが、創造神であるのは絶対。
「なに!?」
がしかし、必殺の技全てに効果がなかったかのように、立ちはだかった男は君臨する。
「どういう……?」
「私が君の、君にとっての上位存在だからだよ」
「意味が分からない、死ね!!」
「ふむ、ネタバラシは好まないが……」
創造神シンの生み出した攻撃技、その能力が次々と消滅していく。元に戻すことはおろか、新しく創った能力でさえ日の目を見ずに消えていく。
「何故だ!?何が起こっているというのだ、まさか本当に……?かの存在というのか?お前が、あの??」
「漸く、気付いたかね?」
遂にはシンも、一人の一般人へと戻ってしまう。
創造神を無に帰した人物とは────
「お前が……いや、あなたが編集者……ですか?」
「いかにも、私は編集者、名を破田・G・数知と言う。以後宜しく───という言葉は相応しくないが、まぁ良いだろう、軽度の差だ」
「なんという……」
編集者とは、この世の理、世界の真理であり、管理者でもある。
要するに、反発してはいけない相手に、創造神シンは牙を剥いたということ。
「ふむ、まずは何から言うか……君、名前は?」
「創造神シン、です」
「それは君の妄想だろう?本名を言いなさい」
「あっ、はい。神嫌心造です」
「うむ、まずは第一の指摘だが、タイトルが曖昧だな。『突拍子もない一撃』というが、本文を見れば攻撃なのか能力自体なのかよく分からん」
「あっ、はい」
「それとキャラ名、これは君自身で考えたのかね?」
「そうですね」
「文献を引用したものもあれば、独自性なのもある。どちらかに統一するという考えは?」
「はは、無かったですね」
「今は、笑う所ではない」
「あっ、はい……すみません」
「技を使う時に英語に置き換えているが?」
「そこは、統一しました」
「こういうのは統一しない方がいい。そのままの言語の方が伝わりやすい場合もある。こだわり過ぎて変な言い回しもある。あとで読み返しなさい」
「あっ、はい」
「それと、一番に怒りを覚えるのはあれだ、あらすじの部分だよ。何だねあれは?」
「え?」
「短すぎるだろう?他の作家を見習いたまえ。適当にしすぎだ。あれでは内容が良かったとしても読みたいと思う読者は少ないぞ」
「敢えて少なくすることで、興味が唆られると思ったんです」
「馬鹿かね、君は?名も無い作家風情に、あれで読者が興味を持つ??はんっ、笑わせないでくれ。君程度の人間が興味を持ってもらうには、あらすじこそ大事にすべきだ。だって、そうだろう?本文よりも、あらすじを読むのだから、当たり前だ」
「うっ………はい」
「キーワード設定が無いのも如何なものかと思うぞ」
「これも敢えてなんです」
「君は、本当にこの作品を多くの人に読んでもらいたいと思っているのかね?」
「ま、まぁ一応」
「曖昧な言動は避けるべきだ。作家を目指すならな。これは、匂わせとは違う。今のままでは堕ちるとこまで堕ちるぞ」
「あっ、はい、すみません」
「謝罪は不要だ、言葉で示しなさい」
「うっ………読んでもらいたいです」
「そうだろう、ならキーワードは付けるべきだ。1つでもいいさ。これはマナーでもあると覚えておきなさい」
「はい、分かりました」
「指摘事項は、これくらいか」
「…………」
「君からは何かあるかね?」
「…………」
「黙りなら、これで終了だ」
編集者の手が光る。
秘技、“ネームボツ”はいつでも発動できる。
「……あの、俺はまだやっていけるでしょうか?」
「ふむ、難しいな」
「そう、ですか……」
「文章力は弱いし、表現方法も幼稚、ネーミングセンスはまぁ無くはないが評価に値するかと言われると微妙だな」
「うっ………」
「君と同じ、プロではないアマの他作家と見比べると、余計に見劣りはする」
「うっ………」
「王道嫌いというのは評価できなくもない」
「あっ、りがとうございます」
「だが、それをするなら普通より頑張らねば、今のままでは作家になるチャンスは訪れないだろう。それなら、嫌いな王道ストーリーからチャレンジするのも一手だが、果たして君に務まるかどうか」
「ううぅ……はい」
「なんにせよ、君は底辺の底辺だ。可能性は低い、というのが現状だな」
「はぃ………」
「こんな世界よりも、サラリーマンに戻って昇進して家庭を持って普通に暮らす、それの方が君には合ってるかもしれない」
「俺も、そう思います」
「なら、諦めるかね?」
「………」
「答えは1つだぞ」
「俺は、趣味が転じて、この世界に再び足を踏み入れました。若い頃に抱いた夢を、もう一度思い描いてしまったんです。才能が無いのは分かっていたのにです」
「それで?」
「編集者さんの指摘は御尤もですよ。俺は弱い。醜い。底辺の底辺、一番最下層です。はは、笑えませんね」
「結局、どうするのかね?」
「まだ、抗ってもいいですか?」
「それを決めるのは私ではない」
「………なら、抗います。這い上がります!上達して、編集者さんにもう一度勝負を仕掛けます」
「ふふ、面白い、その意気だ。私は君が最初からその気持ちだったのを知っているぞ」
「えっ……?」
「これを作るのに試行錯誤したな?」
「あっ、はい」
「携帯1つで調べては文献を消して、投稿サイトを開いて入力してはまた消して調べての繰り返しをした」
「そうです、俺はパソコン持ってないんですよ」
「途方もない繰り返しの中で、ジャンルをファンタジーからコメディへ、そして最後にヒューマンドラマへと変えたな」
「あっ、はい」
「そこがミソなのだよ、私は君に期待している。君の感情が終わりを告げていない証拠だ。君はここから這い上がれる、少なくとも私は信じている、君との対戦を夢見ている」
「ありがとうございます!!」
「最後のアドバイスだが、つまずいたら他の作家を頼るといい。彼らは皆優しい、きっと君にも微笑んでくれるだろう。そしていつかは、君が君のような人物を救えるようになればいい」
「はい!頑張ります!!」
「では、さらばだ。また会う日まで────」
覆う光は、秘技“ネームボツ”。
これで世界は生まれ変わる。
それは、神嫌心造も。
転生後の彼の人生を知る者は?
それは貴方自身に、他ならない。
〜Fin〜
|д゜)チラッ




