宿雨
最近湿ってますね
ぽつん、ぽつん
たったたったっ
ざあざあざあ
雨が、好きだ。雨は、僕の何もかもを洗い流してくれる。目を塞げば、ずっとそうしていられる気がする。窓を打ち付けるそれは、昨日から不規則に白い糸を引いている。
視線を傾けると、貼り付けたような笑顔でアナウンサーが今日の天気を伝えている。
「昨日から降り続く雨は、今週中には止むでしょう。この時期の降水確率は観測史上初で…」
「今週か。」そう、呟いた。早い気もする。あと2日もすれば、終わっちゃうのか。思うと何もかも憂鬱になる気がする。
微睡みが、体を包む。雨の音が、耳を塞ぐ。恍惚が、目を閉じる。
ピピピ
人工的な電子音で目が覚める。窓の外はほのかに部屋を照らし、重たい瞼はうっすらと意識を起こす。耳を澄ますと、まだぽつぽつと聞こえる。体を起こし、洗面所へと向かう。リビングには誰もいない。母はいつも早起きして、仕事に行く。父さんは、いない。
顔を水で流す。朝のひんやりとした空気が心地よい。タオルで顔を拭きリビングへ行く。放置してあったミネラルウォーターを飲み干すと、少し迷って食パンを咥えつつ、制服に着替える。
ワイシャツに腕を通しながらカレンダーを見ると、大きく「始業式!!!」と書かれている。母さんの字だ。今日は始業式だったっけ。そういっても、2年生になるのに特別緊張なんてしない。受験もなく、あるといったら部活を引き継ぐことくらいだ。ブレザーに袖を通すと、ペチャンコに平たいバッグと、透明なビニール傘を持って家を出る。
「…行ってきます。」
朝のホームルーム。ガヤガヤとした教室。僕は窓を見つめながら、早く終わってくれないかと強く、願う。ほとんど毎日そうしていた気がする。新しいクラスとなったが、1年の時に中が良かった人はいない。寂しくも、ない。
「今日から転入生がうちのクラスに来ます」
担任となった教師がそう言う。確か…理科の木場?…そういえば、転入生は小学校以来だ。
そんなことを思った刹那
アマナキ ソラ
「こんにちは。天泣 空です。」僕は目を見開いた。
僕は彼女を、知っている。