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ロウキュー娘♡?  作者: 千園参
第1章 The story of Otatsu starting from here 《同好会編》
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第9Q New companion

 結局のところ、ボクと湊の1on1ワンオンワン(一対一の意味)が行われることはなく、ボクたちは体育館をモップがけしていた。

「麟ちゃんと戦えると思ったのに、残念です……」

 この発言からも分かる通り、お分かりの通り、湊はおっとりとしたお嬢様に見せかけて、意外と好戦的な部分があったことには驚きがある。

「そうだね。でも、まぁ今日は初日だし、そのうちはできるでしょ」

「そうですね! その時は私が勝ちます!!」

「なんかワタシは自信がないよ……」

 なんと言うのだろうか、なんと形容すべきなのだろうか、湊からはどことなく、強者の雰囲気を感じるのだった。ボクの気のせいだといいのだが、ボクのこの感はなかなかに必中するので、湊は間違いなく強い。

 あとはその強さがどの程度なのかというところだが、ボクでは勝てそうにないから、ある意味、神坂先生には助けられたと言っても過言ではないだろう。

 しかし、だがしかし、ボクの悩みはもうそんなところにはない。もうこんなところにはない。もうあんなところにはない。もうどんなところにはない。

 では、ではでは、どこにあるのか?

 それはこのモップがけが終わった後に、その先に、この先に、あの先に、どの先に、待つ、待ち受ける、待ち構える、更衣である。



 練習が終わるということは、汗をかき、汗で汚れた服を着替えなくてはならない。

 ということは、どういうことか、もう、最早、言わなくてもわかってもらえるだろう。

 そう、ボクは再び湊と共に着替えなくてはならないのだった。

 モップがけが終わってしまい、あとは着替えを残すのみ。

「それじゃあ、今日の練習は終わりだ。お前らさっさと着替えて帰れよ。そんじゃあな」

 神坂先生はそう言ってそそくさと退散していってしまった。アンタがボクをこんな目にしたんだから、ちょっとは、少しくらいは、助け舟を出せというものである。

 体育館を出て、更衣室に向かうまでのほんの少しの道のり、湊でもなく、神坂先生でもない人影を見た。

「?」

 現在時刻は19時、バレー部は既に帰って、この場にいるはずもなく、かといってバスケ同好会は顧問含めて3人、ボクを省いた2人はまだ体育館の中にいる。

「誰?」

 ボクがそう言うと、影が飛び出してきた。

「あ、こんにちは……」

 心細そうにボクの前に姿を現したのは、桜辰高校の制服を着た、可愛らしく、それでいて大人しめで、少し暗い雰囲気の眼鏡女子だった。

「どうも。君は?」

「わ、私は一年生の相葉真裕あいばまゆっていいます………」

 相葉と名乗る少女はまたこれまた、か細い声で今にも消えそうな、風の音にも負けてしまいそうな、そんな声で自己紹介をしてみせた。

「そうなんだ、ワタシたち同級生だから、敬語はいらないよ?」

「わ、わかりました……」

「それでどうしてここに?」

「えっと、私、桜辰はバスケ部がないって聞いてたんだけど、不意に通りかかったら、バスケットボールをつく音がしたから、見に来て……それで………」

「そっか、ひょっとして、バスケ部に入りたいとか?」

 彼女は顔を下に向け、恥ずかしそうに小さく頷いた。

 ボクと相葉がそんな会話をしていると、そこへ湊もやってきた。

「どうしましたか?」

「ああ、湊。丁度いいところに」

「はい?」

「この子、バスケ同好会に入りたいんだって」

「まあ! 本当ですか!! それは素晴らしいことですね!!」

 湊は大喜びして相葉の手を、両の手で強く握りしめた。

「私は剣崎湊けんざきみなとって言います! これからよろしくお願いしますね!」

「わ、私は相葉真裕です……。よろしくです……」

「ワタシは麻倉麟あさくらりん、よろしくな」

 こうして、そうして、ああして、どうして、同好会3人目の仲間が入部することになったのだった。




 しかし、だがしかし、ボクは忘れていた。忘れてしまっていた。相葉が入部したという嬉しさから、完全に忘れ去ってしまっていた。

 お着替えの時間を。

「でも、今日は遅いですから、明日から一緒に練習しましょうね!」

「う、うん……!」

 相葉は大人しそうではあったものの、とても嬉しそうに帰っていった。

 その背中を見送ったボクと湊だったが、

「それでは私たちも着替えて帰りましょうか」

「あ、ああ………」

 その後、湊の白くて透き通るような、水晶のような、真珠のような、お肌を再び目の当たりにし、純白の下着姿にドギマギとしたことは言うまでもないだろう。



「麟ちゃん、大丈夫ですか? とてもお疲れのご様子」

「あ、ああ、うん、なんか疲れちゃったな……」

 色んな意味で。

「そうですね、私も中学の引退以来、久しぶりのバスケットボールだったので、少し疲れてしまいました。それに………」

 湊はお腹を触って恥ずかしそうにこちらを見ると、ぐうううっと、お腹が可愛らしくいた。

「お見苦しいところをお見せしてしまいました……」

「ワタシもお腹減ったし、これは寮まで保ちそうにないから、帰り道のコンビニでなんか買って行こうか」

「いいのですか?」

「うん、そうと決まれば善は急げだ!」

 コンビニで肉まんを購入し、2人で食べる。

「私、こういうのにずっと憧れていたんです」

「ああ、コンビニ行ったことないって言ってたもんな」

「はい、こうしてお友達とお話をしながら帰り道にって。ささやかな夢が叶っちゃいました」

 と、湊はこれまでにないほどの、素晴らしく可愛らしく、美しい笑顔を見せてくれた。

「それはようござんした」

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