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ロウキュー娘♡?  作者: 千園参
第2章 Those who drop the stars 《天ノ星編》
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第0Q 桜庭ノ姫 Part 4

 練習試合を勝利に収めたその翌日のこと。

「あれ? 姫乃は?」

「今日はお休みらしいよ」

「へえ、何だか珍しいね」

 翌日の練習に姫乃の姿がなかったのである。

 だが、女の子ということもあるし、いくら元気な姫乃といえども、そういう日もあるのだろう。

 それくらいにしか思っていなかった。

 しかし、それから平日になったが、姫乃は学校にも登校している様子がなかったのである。

 とうとう姫乃は1週間連続で学校に姿を現さなかった。

 さすがに心配になった私は監督から教えてもらった姫乃の家の住所を訪ねることした。

「まあ確かに桜庭はうちの主力だからなあ。心配ではあるし、そうだな。担任の先生に確認しておくから、放課後にまた私のところへ来なさい。その時に桜庭の家の住所を伝える」

「わかりました。ありがとうございます」

 監督も快い反応を返してくれた。




 そうして監督から渡された住所が記入された紙を頼りに年季の入った木造建築の一軒家にたどり着く。

 恐る恐るインターホンを鳴らすと、お年寄りのお婆ちゃんが玄関のドアを開ける。

 そして最初に口を開いたのは、言葉を発したのは、私からではなく、お婆ちゃんの方からであった。

「その制服、姫ちゃんのお友達だね? なら、無下にするわけにもいかないねえ。ほら、上がって上がって」

「あ、はい、すいません」

 やはり人見知りな私はどこかぎこちなく、ロボットのようなカクカクな動きでお婆ちゃんに促されるまま、家の中に招かれた。

「ちょっとここで待っててね、いま姫ちゃんを呼んでくるから」

「あ、はい、すいません、お願いします」

 リビングで少しも待つことなく、パタパタとスリッパで歩く足音が慌しく聞こえた。

「おお! 柳じゃん! どうしたの? もしかして私がいなくて寂しかったとか??」

 そこにはとても元気そうな姫乃のパジャマ姿があった。

「なんだよ、元気そうじゃん。心配して損した」

「なによー、そんなこと言わないでよー」

 姫乃はいつもと変わらぬ元気な振る舞いを見せてくれる。

 その姿を見られたことに私は心の底から安堵したというのか、ホッとしたというのか、安心を感じられた。

 しかし、だかしかし、そんな、こんな、あんな、彼女の姿なだけに、だから、なので、なぜ彼女が1週間もの間、学校を休み続けたのか、余計にわからなくなった。

「練習試合でちょっと頑張り過ぎちゃってさ、疲労が抜けないからしばらく休んでたんだ、心配かけてごめんね。来週からはまた登校するからさ」

「それなら、いいんだけど」

「なに? 元気ないじゃん? そんなに私がいなくて寂しかったの? 嬉しい反応してくれんじゃん。こういうのも親友っぽくていいねっ!」

「バカ! そんなんじゃない! どうしてるのか監督に見に行けって言われたから、()()()()()来ただけだし! もう帰る!」

「心の声が漏れ出てるよ?」

「うっさい! 帰る!」

 慌てて鞄を持ち、家を出た。

「あら、せっかくお茶を淹れたのにゆっくりしていかないのかい?」

「はい! 急いでいるので!」

 姫乃のお婆ちゃんからも引き留められたいうのに、私はそれも振り払って家を出た。

 勢い余って冷たい言葉を吐いてしまったけれど、本当は彼女がいつもの調子でいてくれたことが、何よりも嬉しくて油断するとニヤけてしまいそうだった。口元が緩んでしまいそうだった。ゆるゆるになってしまいそうだった。

 こんな姿を見せたらきっとまた姫乃に揶揄(からか)われてしまう。

「それだけはごめんだ……」




 一方、姫乃は---

「ゲホッゲホッゲホッ!」

「あらあら、無理しちゃって、よかったのかい? 親友に本当のことを打ち明けなくても?」

「聞いてたの?」

「アンタの声がデカいからたまたま聞こえただけさね」

「盗み聞きなんて、悪趣味な」

「本当は立ってるだけでも辛いんだろうに。早くベッドに戻りなさいな」

「わかってるよ………。親友がせっかく心配して来てくれたんだもん。そんなことされたら誰だってカッコつけちゃうでしょ……」

 さっきまで、先ほどまで、とても元気そうだった姫乃の元気が、急激になくなっていく。

「アンタは母親にそっくりだね。それに私にも似ている」

「ええー、それはなんかヤー」

「全く生意気な孫娘だよ」

 そうしてベッドに倒れ込んだ姫乃はそのまま眠りについた、とても深い眠りに。

 この時の私は知らなかった、姫乃がこのような状況に置かれていることなんて。知る由もなかった。

 もっと早く話してくれればよかったのに。





 それから次の月曜日---

「おっはよー!!」

 いつも通りの元気な姫乃が私の背中を叩く。

「姫乃、もう大丈夫なの?」

「おうよ! 柳のお見舞いのおかげでね! もうこの通りよっ!」

 姫乃はこれでもかとはしゃいで見せた。

「そういえば来月は大会だよ」

「え、そうなの? 1週間休むだけで随分と時が進むもんだねー。やれやれ、参っちまうぜ」

「何言ってんのよ」

「んじゃあ、早く遅れた分を取り戻さんといけないね。私がいないと柳は試合に出れないもんね」

「な!? 姫乃がいなくても出れるよ!」

「果たしてそうかなー??」

 こんな日々がずっと続けばいいのに。

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