第0Q 桜庭ノ姫 Part 1
おはようございます、こんにちは、こんばんは、そして初めましての方は初めまして、千園参です。
今回から少しの間、タイトルの通り、特別編を公開します。
それでは楽しんでいってください!
よろしくお願いします!!
昔々、あるところに1人の元気な女の子がおりました。
女の子には不思議な魅力が備わっており、会う人会う人、誰とでも仲良くしていました。
そんな女の子なので、いつも、いつでも、そこがどこであろうとも人気者。
彼女の悪口を言う人など1人もいませんでした。
しかし、だがしかし、女の子にはある秘密がありました。
桜が満開に咲き誇る校門---
「ようよう! みんな元気かーい!!」
彼女の名前は桜庭姫乃。
そして私の名前は柊木柳。
可愛らしい見た目をした彼女とは違い、眼鏡をかけ、おさげ髪の芋っぽくて、地味な女である。
「この春からピチピチの女子高校生であーるっ!!」
「えっと、誰に話しかけているの?」
あまりにも大きな独り言を話しているものだから、私は彼女に声をかけることにした。
「おうおう、来たな親友!」
彼女に声をかけると、なんと会って数秒の私にいきなり肩を噛んできたのだった。
「え、えっと、どういうこと??」
これには私もとても戸惑っている。
モジモジとオドオドとした反応をとってしまった。
「私は貴女の親友じゃないよ?」
「えー、そんな釣れないこと言わずにさ、親友じゃないなら、これから親友になればいいだけのことじゃん! ほら」
そう言うと彼女は私に握手を求めてきた。
勢いに押されたのか、その場の流れがそうさせたのか、私も恐る恐る彼女の手を握るのだった。
「お名前は?」
「柊木柳」
「おお、なんだかカッコいい名前だね! 私は桜庭姫乃! 今日からよろしくね、柳!」
私は女の子なのに柳という渋い名前のせいで、女の子らしさを少しだけ失っているように思えて、この名前があまり好きではなかった。
なのに、それなのに、彼女に下の名前を呼ばれた時、何故なのか、どうしてなのか、この名前で呼ばれることがとても心地良く思えた。
「それでさ、柳はもう入る部活決めた?」
「バスケ部に入ろうかなって思ってるけど、桜庭さんは?」
「そんな桜庭さんなんて他人行儀な呼び方やめてよ! 私のことは姫乃って呼んでよ。そっちの方がお互い親友っぽさが出るでしょ?」
出会ってまだ数分の彼女と親友っぽさを出したいとも思ったことはないが、とは言え、今まで友達もいなかった私としては、そう言ってもらえるのがとても嬉しくて、
「じゃ、じゃあ、姫乃」
ついつい彼女に乗せられてしまう。
「うんうん! いいじゃんいいじゃん! 最高じゃん! 親友っぽいよ!!」
「それで姫乃は入る部活は決まっているの?」
「実は奇遇! 私もバスケ部なんだよね! こういう偶然も親友っぽくていいよねっ!」
彼女の明るさは何というのか、何と例えれば良いのか、光だと思う。彼女の明るさは光そのものだった。誰から構わず、誰でも照らし出してくれる、そんな光だった。温かくて、優しい光。
最初は馴れ馴れしい奴だと思ったけれど、いつの間にか、いつの間にやら、彼女の横にいることが幸せだなんて思うようになっていた。
慧ノ美女子高等学校---
それが私と姫乃が在籍している高校の名前だ。
偏差値としてはそこまで高いわけでもないけれど、かと言ってそこまで低いわけでもない。中の上くらいの学校である。
私がこの学校に入学したのはこの学校のバスケットボール部に入部するためであった。
というよりも、この学校からスカウトを貰い、スポーツ推薦という形で、この学校に入学している経緯から、私がバスケットボール部に入らない理由がないのだった。
慧ノ美のバスケットボール部においては強豪校と呼ばれており、バスケットボールをするためにこの学校に入学したいというバスケット少女たちも多いのだという。
そんな中で手に入れた推薦という切符はきっと超有名アイドルのライブチケットと同じくらいには価値があるに違いない。
入部初日の練習---
「よーし! 頑張ろうね、柳!」
「あ、うん」
練習内容はさすが強豪校と言った方がいいもので、ただのパス練習1つを取るにしても、パススピードが中学バスケとは比べ物にならないくらい速い。
同じようにスポーツ推薦で集められた1年生たちは、何度もキャッチミスをしている。
スポーツ推薦を受けられるくらいにはバスケが上手いはずなのに、それでも失敗するのだから、このバスケ部はかなりレベルが高いと言えるだろう。
初日で挫折する1年生たちも続出していた。
「え、もう帰っちゃうの!? まだ試合は始まったばかりってやつだよこれ!?」
姫乃が荷物をまとめる女子部員に声をかける。
「桜庭さんは上手いから付いていけるだろうけど、私には到底無理だよ。仮に今日耐えたとしても、明日にはどうなるかわからないから」
こうしてバスケ自慢だったはずの1年生が、何人も消えていった。
そして練習が終わる。
「な、なんとか生き残った………」
あまりにもキツイ練習だっただけに、口から出る台詞は“生き残れた”というスポーツにはあまり似合わない地獄のようなものであった。
「おっす! お疲れ!」
今にも死にそうな私に対して、姫乃は全く疲れたような表情を見せず、いつものようにニコニコと笑っている。
「姫乃は化け物なの?」
「なんと!? こんな可愛らしい美少女になんと失礼な!? 辞めていった子たち風に言うなら、たまたま今日は耐えれたってだけだよ」
「そりゃすごいね………私はもう死にそう」
「そう言う柳だって今日を耐え抜いたわけだから、私と同じだよ」
「同じじゃないよ」
彼女の練習する姿を見ていて思った。
才能が違うと。
「全然、同じじゃないよ………」
「ん?」
姫乃は不思議そうな顔をしている。




