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ロウキュー娘♡?  作者: 千園参
第2章 Those who drop the stars 《天ノ星編》
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第71Q vs Amanoboshi Part 11

 観戦していた女子生徒が言うように、バスケットボールというスポーツにおいて、10点という得点は通常のシュートを5回決めればすぐに獲得することができ、野球やサッカーと違って、加算されていく得点が全身全霊の1点というわけでもない。

 積み重ねのスポーツと呼ばれるバスケットボールにおいては、10点なんて得点はものの数分で決めることができる得点である。

 ただ、その得点がどちらに入っているかというのが、重要なだけで。

「80対62………」

 その得点を読み上げたのが、桜辰の女子生徒だったのか、はたまた、天ノ星の部員だったのかなんてことは重要なことではない。

 それでも第4Qが始まって4分程度が経とうとしている現在では18点差まで点差が広がられることになってしまっていた。

 何か重大な、決定的な、ミスやプレーがあったわけじゃない。

 そこにあったのは翠央と闘った時と全く同じで、純粋な力の差がこうして点差として表れているだけなのであった。

「はあ……はあ………!」

「まだです! まだ終わっていません!!」

 湊がドライブで原口を抜き去ると、すぐさまヘルプに玖城が回り込んでいた。

「甘いって」

 湊のボールをスティールし、速攻に転じる。

「止めろ! これ以上、点差を開けられるな!!!」

 ベンチから神坂先生の叫び声が聞こえてくる。

 ボクは全力疾走で玖城の前に出た。

「行かせない!!」

「はいはいっと」

 玖城はボクなんて最初からいなかったかのように、ものともせず、あっさりと、簡単に、容易く、容易に、抜いた。

 第4Q、本来ならばお互いに30分間を闘った末のラストクォーターのはず。だが、だがしかし、天ノ星の練習量ではボクたちとの試合なんて疲れるほどのものではなかったのかもしれない。

 疲弊するどころか、ここに来て、点差を広げてくるというのだから、これがインターハイ決勝トーナメント出場校の真の実力、真価ということなのだろう。

 その実力は見ているだけで、ただ、その場で体感しているだけで、横を通られるだけで、抜き去られるだけで、ボクたちの体力をみるみると奪っていった。


 前半戦、一度は呼び止められ、留まったはずの先生たちも後半戦、最後の戦いがこのような一方的な展開になってしまったことで、とうとう、見るに見かねて、体育館を立ち去っていってしまった。

 それを教頭も呼び止めようとはしなかった。

 教頭もバスケットボールというスポーツを知らずとも、直感的に、直感として、わかったのだろう。理解したのだろう。

 この場面でのこの展開が致命的であるということに。

 第4Qに入ってからボールに触れていられる時間が、極端に短くなっていく。

「まぁ今回は天ノ星(うち)の勝ちだな。ちょっとヒヤッとした場面もあったが、まぁいい試合だったな」

 と、菊川は今回の試合を締めくくる一言を呟く。

「だが…………来年はもう県大会突破も厳しくなるかもしれねぇなぁ。こりゃあ、勝って兜の緒を締めよってやつかもな」

 それからもう間も無くして、無慈悲なブザーがこの試合を締めくくった。

「109対72で天ノ星学園の勝ち。礼」

「ありがとうございました」

 審判の号令で全てが終わった。

 終わったところを見計らうように、教頭がボクたちのベンチにやってきたことは言うまでもないだろう。

 そう今日この日、天ノ星に敗北した桜辰バスケットボール同好会は部に昇格することなく、廃部するのである。

「まずはお疲れ様だったね。一度は惜しいと思わせてくれる場面もあったけれど、条件は強豪校に食らいつくことではなく、勝利。残念だが、バスケットボール同好会は廃部とさせてもらう」

 教頭は包み隠すことなく、オブラートに包むことはせず、要件をハキハキと話した。

 教頭の言葉に、返す言葉を失うボクたちであったが、予想外の横槍が入ることになる。

「あのー、すいません、部外者の俺が口を挟むのは間違っていると思いますが、ここで廃部にするには惜しいチームですよ、彼女たちは。うちは自慢じゃないが、インターハイ出場が決まっていましてね。おたくもそれを承知で練習試合を申し込んで来たのでしょう?? そんな我々と創部して数ヶ月でここまでの勝負を演出できるなんてことは、そんじょそこらの才能ではできないことです。俺は彼女らの未来が楽しみで仕方ないんですよね。いずれ県大会の決勝で当たることも大いにあるでしょう。いや、必ずあたることになる。それじゃあ、俺はこれで失礼しますね。一絵ちゃーん! 今度はウィンターカップ予選の頂上で会おうぜ。おーし、帰えんぞお前ら」

 菊川はそう言い残し、荷物と選手たちをまとめて体育館を後にした。

 すれ違いざま、菊川はボクに声をかける。

「よう、君。その顔、その目、その髪、試合中、ずーっと誰かに似てるなって思ってたんだよなあ。誰だったかなー?」

「えっと、誰ですか?」

 困惑しながらも聞き返す。

「いや、ごめん。マジで思い出せんわ。また今度会う時に思い出しとくよ。またな」

「は、はあ……?」

 そして体育館を出た後、菊川はこう呟く。

「また会おうぜ、桜庭姫の忘れ形見よ」

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