第70Q vs Amanoboshi Part 10
今回は箸休め回です。
それではよろしくお願いします。
「なんかバスケ部? が凄いことになってるらしいよ!!」
「へぇーマジ? 何が凄いの?」
「いや、なんか今、練習試合やってるらしくてえ、負けたら廃部らしいよ」
「マジ? ヤバいじゃん」
「そうだよ! ヤバいんだよ! 見に行こうよ!」
こういった、そういった、ああいった、桜辰の女子生徒たちが次々と体育館に集まってきていた。
しかし、だがしかし、現在はまだ2分間のインターバル中であり、女子生徒たちは暇を持て余していた。
「え、これ今、何の時間なの?」
困惑したように女子生徒の1人が呟く。
「うーん、なんだろう?」
「インターバルってやつだよ」
2人の会話に入るように3人目の女子生徒が言う。
「インターバル?」
「そうそう」
「なにそれ? ウケるんだけど」
どこにウケる要素があったのだろうか。
「いや、ウケるとかじゃないと思うんだけど」
全くもってその通りである。
「それで、インターバルって何?」
「バスケみたいに時間で区切られてるスポーツは休憩時間があるんだよ」
「なるほど、それで?」
「今がそれ」
「つまんなっ」
何とも失礼な女である。
「あ、でも、ほらっ」
女子生徒の1人がタイマーを指差す。
「もうすぐインターバル終わるっぽいよ?」
「ホントだ、あと1分くらいだ」
「待つ?」
「ここまで来たら待つっしょ」
期待と不満と退屈と興味が入り混じるそんな瞳で、女子生徒たちは1秒1秒進んでいくタイマーをじっと見つめる。
「それで、今どっちが勝ってんの?」
ふと、何かに気が付いたかのように、大事なことを思い出したかのように、最も重要なことを1人の女子生徒が尋ねる。
「桜辰が負けてるってぽいよ」
「え、ヤバっ。どれくらい負けてんの? ちな」
「あれくらい負けてる」
得点ボードを指差し、10点差であることを確認する。
「10点差ってなんか微妙じゃね?」
「確かに微妙だね」
「え、バスケの10点差って実際どうなの? 野球とかサッカーだったら、もう絶望的じゃん? バスケはどうなの?」
「うーん、私も中学の体育でやったくらいだから、よくわかんないけど、バスケはワンゴール2点だから、5回シュートを決めれば10点になるよね」
「5回のシュートって簡単に決まんの?」
「バスケは展開が速いスポーツだから、どんな形であれ10点は軽く入るんじゃないかな」
「マジか、じゃあ、接戦ってこと?」
「そうなるね」
「やばたにえんじゃん」
「やばたにえんだね」
やばたにえんとは?
そしてタイマーが0.0秒になったその時、ついに第4Qが幕を開けることになった。
「泣いても笑ってもこれが最後のクォーターだ。気合い入れて行ってこい!!」
神坂先生はボクたち1人1人の背中を強くコートへ押し出すように叩いた。
「あだっ!」
ボクを叩く音だけ異常に強く感じるのは気のせいだろうか。
4人がコートに入る中、神坂先生はボクにこう言う。
「麻倉、この試合がどうなるのかは私にももうわからない。本当に泣いても笑っても、この10分間が最後だ。悔いのないように戦って来い」
「はい」
天ノ星では---
「何やら噂では翠央にコールド負けしたらしいが、嘘だろ。3年が欠けてるとはいえ、10点差まで詰められることになるとはな。あの子たちもまた全国に通用しうる力を持っているようだな。ただ……」
菊川がそこまで口にして、
「経験が足りない」
菊川の言葉の続きを答えたのは守城だった。
「そうだ、力が拮抗した場合、最終的な勝敗を分けるのは経験値の差だ。それを教えてやれ」
「ああ」
天ノ星の選手たちもコートに出揃う。
こうして天ノ星のオフェンスから第4Qが開始された。
ボールは原口から守城へと渡る。
湊がすぐさま駆け寄る。
「お前たちと私たちとの差を今から見せてやろう」
守城が一言そう呟くと、湊は尻餅をついていた。
そして次の瞬間にはスリーポイントが決められることになった。
このシュートが決まったことで、第4Q開始直後から点差は13点に開くことになってしまった。
しかし、だがしかし、シュートをあと7回決めれば追いつけるという気持ちのモチベーションは大きく、ボクたちはまだ少しだけ気持ちにゆとりが持てていた。
それでも気がかりなのは、おそらく桜辰の中で1、2を争う強さを誇っているであろう湊がいとも簡単に、容易く、崩されてしまったことだった。
リスタートしたボールは、相葉、湊、ボクを経由し、漆原へと回る。
漆原は國重との1対1を制し、ゴール下からのシュートを決め、点差をどうにか縮めてくれる。
「うおっしゃー!」
その様子を見ている女子生徒たちはというと、
「なんか凄いことになってんね」
「点取り合戦てやつ?」
「やばたにえん」
「やばたにえんだね」
やばたにえんとは?
原口からリスタートされるボールが今度は玖城に回される。
「ようやく普通にパスが通った。さてと、真裕。そろそろ決着つけようよ」
相葉にゾクリと緊張が走る。
「負けない…!!!」
「その気持ちはいいけど、気持ちだけじゃあ、あたしには勝てない」
相葉も先ほどの、さっきの、湊と同様に尻餅をつくことになった。
「さっきからなんで桜辰の娘らは尻餅ばっかついてんの?」
「あれだよ」
「どれだよ」
「アレキサンダーとかいうやつ」
「なにそれ、かっこよっ」
ボクたちが少しずつ絶望していく中、観覧の女子生徒たちは何とも言えない空気感を放っていた。
私は意外とこういうどうでもいい回を書くのが好きかもしれないと気付きました。
今回も読んでいただきありがとうございました。
次回をお楽しみに!!




