第69Q vs Amanoboshi Part 9
「君たち超強いんだね、ビックリしちゃったよ」
攻め上がりゴール下で位置取り争いを行いながら、棚田が大隈に言う。
「冗談やめろ、私たちが超強いなら、アンタらは化け物かなんかだろう………」
「あはは、化け物だなんて、レディーに向けて失礼なことを言うね」
「同じレディーだから何の問題もないだろう」
「それもそうだね」
そんな話をしている間ですらも、2人は押し合い互いの絶好の位置を奪い合っている。
そして大隈の一瞬の隙を突く形で、棚田がボールをもらう。
「よし、もらったよ!」
「させるかっての!」
棚田がゴール下でシュートを放とうとすると、大隈はそれを横から手を天高く伸ばし、蠅をはたき落とすかのようにしてシュートブロックした。
「いやいや、やっぱ強いよ?」
「はあはあはあ……」
「だって、普通は私のシュートをブロックできないんだよ?」
「知らねぇよ、そんなこと……」
大隈はこの時、思った。
「こいつ、一応歳上だからこいつって言っちゃいけないのはわかるけど、やけに話しかけてくんじゃねぇかよ。話すだけでも体力消耗したんだよこっちは。もうそっとしとけよ」と。
弾かれたボールを前津が拾ったことで、天ノ星の攻撃が続くことになった。
前津は無理矢理攻め込むことはせず、ボールを一旦、ポイントガードである原口に返し、攻撃の立て直しを図ったようだ。
「うーん、前津には自分で攻めるっていう姿勢が足りねぇよなぁ」
このプレーに菊川はあまり納得していないようでもあった。
そしてこう続ける。
「玖城みたくガツガツ攻めすぎても困るが、自分で点を取る気がない奴ってのは見ててすぐにわかるし、そういう奴は何故かプレーにおいてボロを出しやすくなるんだよなぁ」
傍らに置いてあったペットボトルの水を口に少し含むと、菊川は玖城を呼び出した。
「おい、玖城、そろそろ頃合いだ」
「んだよ」
「第3Qも残りわずか、あれだけあった点差も、今じゃあ8点差まで詰められてしまった。こりゃあ、もう奇跡起きてるとしか言えないだろう。あの12番がまともに機能するだけで、ここまでチームが変わるとは思いもしなかったがな。だが、第4Qからの残り10分での巻き返しは厳しいかもしれねぇ。ここでチェックをかけたい。実力差ってやつを見せつけてこいよ」
「ったく、それなら一回、引っ込めんじゃねぇよ」
気だるそうに玖城がタイマーに交代を申請する。
ボールが外に出たタイミングで、交代が行われる。
選手交代
前津 → 玖城
「調子上がってきたみたいじゃん」
玖城がコートに入るなり、相葉に挑発じみた言葉を投げかけた。
「アンナちゃん…」
「あんま調子乗んなよ雑魚が」
「私はもう負けない…!」
「ふんっ」
相葉の言葉に鼻で笑う玖城。
ボールが原口から玖城へと渡る。
相葉がディフェンスにつくと、これまでに感じたことのない緊張感がコートを走り抜けた。
「まさかちょっと点差詰めたぐらいで、自分が強くなったとでも思ったのか? やめてよね、そんな勘違いすんなよ」
相葉はあっさりと玖城に抜き去られてしまう。
「ヘルプ!!」
大隈が玖城の前に立ちはだかる。
「おお、また会ったね、お相撲さん」
「誰がお相撲さんだよ!!」
「いや、その体型はどう見てもお相撲さんだろうが」
気が付いた時には大隈は尻餅をついていた。
「くそっ! またアンクルブレイクってやつかよ!!」
相葉、大隈を突破した玖城はフリーでダンクシュートを決めた。
玖城が戻り際に相葉の方をポンと叩くと、
「地区予選敗退と、決勝トーナメント出場ってのには、超えられない絶対的な差があんのよ」
そう言い放った。
相葉は拳を強く握りしめた。
「大丈夫、まだ10点差だ。取り返そう」
「そうです、まだ負けていませんよ!」
ボクと湊が悔しさに震える相葉に声をかける。
ボールをリスタートさせ、相葉がドリブルでボールを運ぶ。
これまで以上の集中力で相葉はコート全体を見る。
そして《へい》や《こっち》なんて言う、パスをくれという合図を出していたわけではない。
けれど、相葉の観察眼は湊のスクリーンによって、一瞬だけフリーになったボクを見逃さなかった。
「ナイスパス!」
スリーポイントを決め、点差を7点に縮めることに成功した。
「ちっ、雑魚がよ!」
すぐさま天ノ星は攻め込んできた。
原口が玖城へのパスフェイクから守城へパスを出し、守城がストップ&ジャンプシュートでスリーポイントを決めたことにより、点差は再び10点差を維持することになってしまった。
そこから8点差と10点差を繰り返す展開が続き、試合は拮抗状態となっていた。
そして遂に点差は縮まることのないまま、第3Q終了を知らせるブザーが体育館内に響いた。
試合をしている時には全く気付かなかったが、インターバルに入り、ベンチに戻ろうとすると、体育館内は試合を見学しにきた桜辰の女子生徒たちが溢れかえっていた。
「え、いつの間にこんなに」
「凄いですね」
「こうなると尚更、負けられないな」
「…」
さっきまでの、先程までの静かな体育館とは打って変わって、観覧客がザワザワとしている、ましてや同級生や先輩たちが観ているというのは、なかなかに落ち着かないものであった。




