第66Q vs Amanoboshi Part 6
「はあ……はあ……まだ第2Q始まったばっかなのに、もう死にそう……なんだけど………」
大隈はどうにか玖城のダンクを阻止したものの、既にガス欠寸前の状態まで消耗していた。
「大丈夫?」
敵であるはずの棚田も心配する有り様である。
「いや、大丈夫じゃないかも………」
「それは不味いね」
「アンタ、敵なのに良い人なんだな………」
「ははは、敵味方の前に私たちは女の子よ? お互いの身体を気遣うのは当然のこと」
「ありがとう」
「どういたしまして」
天ノ星の攻撃はまだ終わらない。
ボールが國重から原口へと渡り、オフェンスが再開される。
そして原口から守城へと渡るはずのボールを再び奪う形で玖城が割り込んだ。
「何やってんだよあのバカは……」
玖城のプレースタイルには菊川も頭を悩ませているようである。
「さっきはヘマしたけど、次は決める」
「今度は止める…!!」
予測不能な動きをする玖城の前には相葉が必死に追走する。
「だから、のろまなアンタじゃ無理だっての!!」
「無理なんかじゃない…!!」
相葉が目の前の玖城に対して、持てる力の全てを集中させ、結集させ、わずかな動き、微妙なフェイク、その全てに食らいついて見せた。
「へぇ! やりゃあできんじゃん!!! でも、あたしを倒すなら、もう一つ足りない!!」
さらにスピードが上がった玖城に、相葉はアンクルブレイクされてしまう。
まるで何かに背中を引っ張られているかのように、後ろへと倒れ、尻餅をつく。
「あたしが通る!!」
「行かせるかぁああ!!」
漆原がスティールに向かうが、右手でついていたドリブルを瞬時に左にクロスオーバーさせ、漆原を完全に出し抜いた。
「真裕より遅えって、もう救いようねぇだろ」
「んだと!?」
一気にゴール下まで侵入すると、そのままダンクの体勢に移る。
しかし、だがしかし、今度はヘルプに走り込んでいた湊が玖城のダンクをブロックした。
「っちっ! おいおい、今度は誰だよ」
「そう簡単にやられるわけにはいきません!」
湊によって弾かれたボールを相葉が丁寧に拾い上げ、速攻に転じる。
「速攻…!」
ボールは相葉から漆原、漆原から大隈へと渡る。
「決める!」
大隈はゴール下のシュートのしっかりと決めてみせた。
「おっしゃあ!」
玖城を連続ブロックしたこと、そして速攻で追加点を決めたことで少しずつ点差が縮まる兆しが見え始めていた。
「とりあえず、落ち着けば大丈夫だから。ゆっくり返そうよ」
明らかに、あからさまに、わかりやすく、落ち着かない様子で、取り乱した様子で、原口がチームに声をかけるが、逆に守城から、
「お前が落ち着いたらどうだ?」と、声をかけられる始末であった。
原口がパスを出そうとすると、またしても玖城が乱入しようとするが、今度はそれを邪魔する形で守城が取り上げた。
「玖城、いい加減にしろ。バスケは個人技をチームに押し付けるスポーツではない」
「なに? 説教するわけ? あたしに?」
「そうだ、お前はまだまだ未熟だ。己の為にではなく、、、、いや、己の為であって良い。己の為に強くなることは悪いことではない。弱くてはどうにもならないからな。ただ、己が強くなることでチームを勝たせるということに気持ちを繋げれる選手になるんだ。強くなる理由の中にチームのことも考えるんだ。今のお前の強さには必ず限界が来る」
そう話す守城の頭には、7番を身につけたある選手のことが浮かび上がっていた。
「うっざ。そういうのマジうざいんだけど」
「ふふ、そうだな。私もらしくないことをした。天ノ星は個人技を極めるチームだ。だが、おそらく玖城、お前の攻撃はもう一度失敗する。二度あることは三度あるからな。ここは私が確実に取る」
守城はそう言うと、ドリブルを突き始める。
「お前の名前は?」
「私ですか? 私は剣崎湊です」
「そうか、お前は良い選手だ。覚えておくよ」
「それは光栄です」
「だが、私がいる間にはその花が開花することはないがな」
次の瞬間、守城は湊を抜き去る。
大隈がヘルプに向かうが、ドリブル捌きでアンクルブレイクされてしまった。
「アンクルブレイクってやつか! マジでどうなってんだよ!?」
大隈が尻餅をつくと、体育館が少しだけ揺れた気がした。
湊と大隈を突破した守城はそのままレイアップを押し込んだ。
第2Qも残すところあと3分程度、どうにか離されまいと追加点を決めはするものの、それを上回る決定力で攻め込んでくる天ノ星のオフェンスに点差はまた少しずつ開き始めていた。
そして残り2分のところで、タイマーが交代を告げた。
玖城 → 前津
選手プロフィール
前津環奈 16番 167cm SF
「おい、玖城。交代だ! 戻ってこい」
「え、あたし!?」
「お前以外に玖城はいねぇだろ。試合の邪魔だ早く来い」
「んだよ」
ブツブツと愚痴を言いながら、玖城はコートを出る。
玖城がベンチに座ると菊川は、
「玖城、お前に足りないのは協調性だな」
「なに? アンタも私に説教するわけなの?」
「そうだ。勝つための説教だ。そしてお前がこの先、全国クラスの選手になるための説教でもある」
「だから、うざいっての。そういうの」
「まぁいいから聞けよ。お前を下げたのにはもう一つ理由がある。ここから試合の流れが変わるんじゃないかと俺は思ってるんだ。お前はよく見ておいた方がいいと思ってな。言葉じゃ上手く説明できないんだが、そうだな」
菊川は歯切れが悪く、言葉を選びながら話す。
「んだよ、ハッキリしねぇな」
「そうだな、多分第3Qにそれは起こる。だから、よく見とけ。諦めないってやつをよ」
「んだよそれ。あーあ、つまんねぇの」




