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ロウキュー娘♡?  作者: 千園参
第2章 Those who drop the stars 《天ノ星編》
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第57Q Jessica 《SuiO vs Amanoboshi Part 11》

 第4Qが開始された。



 お前と出会ったことを今でも昨日ことのように覚えている。

 私は2年生、お前は新入生の新入部員としてバスケ部に現れた。それが私、上木やちよと木谷ジェシカの出会いだった。

「アメリカから木谷ジェシカデス!! どうぞよろしくデス!!」

 とてもテンション高い奴だと思った。それと同時にあまり絡みたくない奴だとも思った。

 人間、第一印象が大事だと言うが、私にとって木谷の第一印象は最悪だったと言えるだろう。

 そしてこの気持ちは一緒に練習する度に強くなっていった。

「ヘイ、やっぱりアナタはゴリラデス!」

「なんだと木谷!! おい、待て!!!」

 今になって思えば、私の木谷のこのくだらないやりとりも、かれこれもう1年以上続いているのかと感慨深くもある。

 木谷は特に私をゴリラだと馬鹿にした。何故ここまで突っかかってくるのかも疑問ではあったが、木谷が私を馬鹿にするのも無理はなかった。

 木谷は入部したての時から、バスケの本場アメリカから来たということもあって、その実力は翠央の中でも群を抜いていた。きっとその力の枠組みは全国レベルなのだろう。

 練習の1on1においても、木谷に勝てる者は3年生から1年生まで全員含めてもいなかったし、束になっても敵わなかった。

「やっぱり日本のバスケは張り合いがなくて、退屈デス」

 私はそう言われるのが悔しくて毎日のように練習後も居残り練習をした。


 明くる日、明くる年、3年生は夏のインターハイ予選、県大会で敗れ、引退した。

 そして次の日の練習、東堂監督の口から新チームのキャプテンが発表されることになった。

「えっとね、それじゃあね、部長は上木ちゃんにやってもらうからね。よろしく、上木ちゃん」

「は、はい? わ、私ですか?」

「やったね!! おめでとう上木さん!!」

 佐伯はまるで自分のことのように嬉しそうに喜んでいる。

「ちょっと待ってください、監督!!」

 私は東堂監督の元へ抗議しに向かった。

「私は人望もありません。それならば誰からも信頼されている佐伯の方が適任だと私は考えます」

「ワシが君を部長に選んだのはそういうところだよ」

「どういうことですか?」

「自分ではなく他人を優先できる。それによく周りを見ているしね。気配りもできる。確かに佐伯ちゃんもいいけど、ワシは上木ちゃんにやってもらいたいんだけれど、ダメかい?」

「きっと後悔しますよ、私を選んだこと」

 こうして私は翠央高校バスケットボール部の部長に就任することになった。

 副部長には佐伯がついた。

 私はこの部長という肩書きが嫌で嫌で仕方がなかった。仕様がなかった。仕様もなかった。どうしようもなかった。

 部長になってからというもの、バスケ部に行くことが憂鬱になってしまった。

 その理由はよくわかっていた。



 私が心配していたことはすぐに現実のものとなった。

「ゴリラが部長なんて向いてないデス。大人しくウホウホ言っていた方が身の為デス」

 やれやれと言わんばかりに木谷は私を嘲笑った。

 ゲンコツを入れた。

「ノォオオ!! 痛いデス!! 何するんデスカ!!」

「人を馬鹿にするものではないぞ!!」

「このクソゴリラ!!」

 本当に恥ずかしくなるくらいに醜い小競り合いであった。

 やはりと言うべきか、やっぱりと言うべきか、木谷は私のことを部長とは認めていないようだった。誰もが私を部長と呼ぶようになっても、木谷だけは私をゴリラと頑なに呼び続けた。



 それから新チーム初の公式戦、新人戦では木谷の活躍もあってまずまずの結果を残すことができた。

 しかし、だがしかし、木谷に頼っている今の現状が私は情けなく思えた。

 だから、なので、それだから、それなので、これだから、これなので、あれだから、あれなので、私はさらに練習に打ち込んでいった。

 でも、それと同時にこうも思った。私はどうしてこんなにもムキになって練習しているのだろうかと。



 そんなある日のこと、こんなある日のこと、あんなある日のこと、どんなある日のこと、私は東堂監督に呼び出されていた。

「部長はどうだい?」

「やはり私には荷が重いです。特に木谷は私を部長とは認めていないようですし」

「そうなのかい? ワシには木谷ちゃんが誰よりも上木ちゃんを信頼しているように見えるけどねぇ」

「御言葉ですが、監督の目は節穴ですか?」

「上木ちゃん、それは御言葉だよ本当に」

「なら、確かめてみるかい?」

「はい?」

 こういった経緯から、何故か私は監督に呼び出される木谷を体育館の跳び箱の影から眺めていた。

「木谷ちゃん、上木ちゃんとの調子はどうだい? もし上手くいかないようなら、部長の交代も考えているんだけれどね。どうだろう?」

「キャプテンデスカ? 私からは何も言うことはないデス」

「ほう、と言うと?」

「翠央の部長はあの人以外に考えられないデス。真面目で、負けず嫌いで、カッコよくて、勝つために必要な要素が全部詰まってるデス。ただ、反応が面白いのでついついからかってしまうデス、へへっ。でも、大丈夫ブイ! 私が必ずキャプテンに勝利をお届けするデス!!」

「それはいい心掛けだね」

「YES!!!」

「木谷が私を………」

 不思議と前が見えなくなっていた。

 何故急に視界が悪くなったのか、不思議でならない。本当に不思議である。



 そして県大会前日---

「いよいよだね、上木ちゃん」

「はい」

 私と監督が話しているところに偶然居合わせた木谷は私たちの話を盗み聞きすることにした。

「一体、何を話してるデス?」

「上木ちゃんから見て、今の木谷ちゃんはどう思う?」

「木谷ですか、あいつは翠央のエースです。翠央の誰もが認めるエースです。私のことをゴリラゴリラと馬鹿にしてくるのは腹立たしいですが、ですが、私はあいつを、木谷ジェシカを信じています。あいつとなら必ず天ノ星を倒せると、そう思えてならないんです」

「そうかいそうかい、上木ちゃんは初めて部長になったあの日から、とてもいい顔をするようになったね。なら、ワシに見せてくれ、君と木谷ちゃんの絆の結晶を」

「もちろんです」

「もちろんデス」

 盗み聞きした木谷は小さく返事をした。




 第4Q---

 守城が放ったシュートが外れる。

「しまった、リバウンドを頼む!」

 その瞬間、木谷は私の方を見た。

「Hey cap」

「?」

「Now is the time to win us !!! 《今こそ我らに勝利を!!!》」

「ああ、そうだな!! 勝つぞ!!! 走れ木谷!!! リバウンドは私に任せろ!!!!」

 木谷が私のリバウンドを確認することなく、スタートダッシュを切った。

 私は巨大な12番と5番を退け、ディフェンスリバウンドを掴み取ると、野球投げで木谷にロングパスを出した。

「cool !!」

 木谷がそのままフルドライブで駆け上がると、守城がディフェンスに戻ってきていたが、木谷はスピードを緩めることなく、突き進む。

「止める」

「I can't stop anyone」

 木谷が左に切り込むと、守城もその切り込みの速さになんとか間に合わせ、木谷の影に追いついてみせるが、木谷は既に右側に切り込んで守城を抜き去ってしまっていた後だった。

「なんだと? 今、完全に左に切り込んでいたように見えた」

 一連の流れを見ていた芦屋も、

「今完全に2人に分身してたでしょう!? そんなことができるの!? 思い出した、思い出したぞ。あの7番の娘の目、いや、7番だけじゃない。あの4番もそうだ。あの目は忘れもしない、炎村葵ほむらあおい!!!! 奇跡を起こす女の目!!!! あの目をしているうちは最後の最後まで何が起こるかわからない!!!!!」

 試合は最終局面へと差し掛かろうとしていた。

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