第51Q SuiO vs Amanoboshi Part 5
天ノ星のオフェンス---
「私だって負けてられないっす。負けっぱなしじゃ終わらないっす。チームのために、翠央のために」
意気込む若林だったが、棚田のスクリーンアウトは想像以上に強く、まるで動かない岩山を押しているかのように感じられた。
そして第1Qの時、同様に良いポジションを奪われると、そのままボールをもらい、シュートを決められてしまうのだった。
「また私で失点………」
「若林、落ち着け」
落ち込む若林に声をかけたのは、部長である上木だった。
「部長。でも、私」
「焦れば敵の思うツボだ。仕方あるまい、次のディフェンスはマッチアップを交代しよう」
「え、待ってください! 私はまだできるっすよ!!」
「だから、落ち着けと何度も言わせるな馬鹿者。別にお前を見限ったわけではない。お前に教えたいことがあるんだ。だが、それは言葉で伝えるよりも実際に見てもらった方が早い。これが練習ならばよかったんだがな。とりあえず、次は私に任せておけ」
「うっす………」
佐伯がリスタートさせ、翠央が攻め込む。
「へい! こっちデス!」
ディフェンスでは若林からの失点はあるものの、オフェンスではミスすることなく、なんとか点差を開かせることなく、持ち堪えていた。
「くそ! また抜かれた!! この娘、強過ぎない!? もしかして守城と同じか。それ以上?」
明智は木谷のオフェンス力にそんなことを考えずにはいられなくなっていた。
矢田がヘルプに現れると、十分に引きつけたところで、上木にパスを出し、上木がシュートを決めた。
「よし! ナイスプレーだったぞ、木谷!」
「お安い御用デス!」
そのプレーを見て、菊川は---
「おうおう、やるな翠央。いや、マジで。あの7番のネーチャンはダンクやダブルクラッチ、場合によってはスクリーンアウトによるリバウンドもと、インサイドプレーもできる上に、スリーポイントやミドルのアウトサイドプレーも警戒しなきゃならない。シンプルだが、オールラウンダーってのは一番やりづらい相手だな畜生。それに7番のネーチャンを止めるためにヘルプにいくと、まわりの選手に確実に沈められる。お手本のようなプレーだよ全く」
素直に拍手した。
「ディフェンスだ! 戻れ戻れ! 若林、マッチアップ交代だ!」
そして棚田のディフェンスに身長差が10センチ近くもある上木がついた。
「マジ? そんなことして大丈夫なの? なに? やけってこと? まぁどっちにしても私が押し込むことに変わらないけどね!」
スクリーンアウトで棚田が上木を押し込もうとするが、上木は全く動かない。
「!? この人、ビクともしない!! マジでゴリラかよ!!!?」
「おい、お前。今、私のことゴリラかよって思っただろう」
「え?」
「私はゴリラではない!」
今度は逆に上木が棚田を押し出してみせた。
「ちょっ! ちょっとなにこれ! 押し負ける!!」
上木は棚田を無力化することに成功した。
その様子を見ていた芦屋は、
「棚田を持ってしても抑えられないのか。さすが翠央のゴリラってわけか。なら、ここは!」
フェイクで佐伯を躱すが、すぐさまヘルプに現れた木谷にボールをスティールされた。
「しまった!?」
「油断したデスネ!」
木谷はそのままドライブで突き進み、レイアップシュートを決めた。
その間、オフェンスを木谷に任せ、上木は若林に声をかける。
「相手は身長が高い。だから、どうしても重心を相手の高さに合わせてしまいがちなんだ。これはこれからお前がどんな敵と戦う時にも言えることだ。お前のその癖は桜辰のセンターと戦った時にも出ていた。知らず知らずに相手に釣られてしまうんだお前は。だから、落ち着いて。練習でやっていることをそのままやるんだ。敵に合わせてやる必要なんてどこにもない。お前のプレーで、お前の強みで、あのセンターを討ち取ってやれ」
「はいっす!!」
「おっ、マッチアップ戻してきたのか」と、菊川。
菊川が言ったように、天ノ星のオフェンスにおいて、ゴール下の攻防は再び若林と棚田に戻っていた。
「これが私のやり方っす!」
若林のディフェンスは見事に棚田を抑えつけている。
「別人かよ」
「こっちが本当の私っす」
「そうみたいだな」
金木がシュートを放つと、松風の指先がシュートに触れた。
「むむ、チップしたでござる! リバウンド!!」
チップとはシュートブロックの際に指先がシュートに触れ、少しだけ軌道が変わること。基本的にチップされるとシュートは入らないと思った方がいい。
放たれたシュートはリングに弾き返される。
「このディフェンスリバウンドは私が勝つっす!!!」
棚田を押し負かし、若林が見事にディフェンスリバウンドを制した。
「よし! よくやったぞ若林!! 速攻だ!」
「はい!」
若林はボールを全力で投げ、既に走り込んでいた木谷にボールを渡した。
「若ちゃん、ナイスパスデス! 若ちゃんが繋いだチャンス、逃さないデス!」
仲間から託されたボールは強烈なダンクとしてゴールされた。
「うぉおおおお!! これで4点差!!!」
会場は大歓声が吹き荒れる。
「守城! 準備しろ! ここからが本当の勝負だ!」




