第50Q SuiO vs Amanoboshi Part 4
「トイレから帰ってきたら、第1Q終わってんじゃん………。どっちが勝ってんだ?」
神坂先生が今にも死んでしまいそうな血の気の引いた顔で、電子タイマーの得点を見る。
「30対38で翠央が追いかける展開なのか。てか、第1Qでこの点数ってなかなかにハイペースな戦いやってんだな………。やばい、またトイレ」
再びトイレへと向かおうとしたところを、何者かに通せん坊とまではいかないものの、道を塞がれている。というよりはトイレへの道をディフェンスされている。
「はあ……なんでアンタがいんのよ? 栞……」
神坂先生は深くため息をついた。ついでにため息と共に何かが出そうになったことは言うまでもない。
「やあーやあーやあー! 元気?」
「見てわからないか? どう見ても元気そうには見えないだろ? この私の顔」
「確かにそうね、良い感じに二日酔いの顔してる」
「だから、どいてくれ。私はトイレに行きたいんだよ。もう間に合いそうに……ない……」
「あー、はいはい。確かにここで吐かれちゃ私も嫌だから。早く行ってきて」
「すまん」
「相変わらずだね、一絵は。おっ、あんなところに妹発見」
2分間のインターバル、菊川がメンバーに作戦を伝えている。
「第2Qもこのままでいく。狙い目はセンターだ。棚田からのインサイドプレーで得点を量産していけ。ディフェンスはあえてボールがセンターに集まるように誘導していけ。あの子には気の毒だが、ミスはその場その場でちゃんとケアしないと、次のミスを誘発するもんだ。ディフェンスでのミスは尾を引いて、自分の責任だと感じてボールが回ってくれば、必ず自分が取り返さなくてはと焦るはずだ。その焦りは命取り。しっかり狙っていけ。情けは無用だ」
「「「「「はい」」」」」
翠央は---
「敵の狙いはおそらくだけど、若林ちゃんだね。若林ちゃんも薄々、いや、もう気付いているだろうけどね」
「………」
若林は俯く。
「だが、ワシは変えないよ。若林ちゃんなら、必ずあの子に勝てると信じている。おそらく対戦しているあの子も2年生。同じ2年生、あの子にできて君にできないことはないはずなんだから。勝ちなさい」
「はい」
「うん。他の4人はそうだね、若林ちゃんのリバウンド成功率が今のところ低いからね、普通なら成功率の低いアウトサイドからのシュートは避けるべきなんだけど、ドンドン打っていこう。打たなきゃ勝てないからね。大丈夫、君たちは強い」
東堂は選手たちにニッコリと笑いかけた。
2分間のインターバルが終わり、両チームの選手たちがコートに戻る。
第2Qは翠央のオフェンスから再開される。
松風が審判からボールを受け取り、佐伯にパスを出して第2Qが始まった。
「一度は流れが切れているはずなのに、第1Qと変わらないプレッシャー! 凄い!!」
芦屋の隙のないディフェンスに佐伯は思った。
「いけるでござる!」
ディフェンスの裏をかいて抜け出した松風がボールをもらう。
しかし、だがしかし、すぐに金木も追い付いてくる。
「むむっ、流石に速いでござるな……」
「こっちデス!」
今度は松風から木谷へとボールがまわる。
木谷はフェイクをかけて、ディフェンスの明智を翻弄する。
「シュート? またドライブ? この人のトリプルスレッドにフェイク、隙がなさ過ぎて、一挙一動が全て本当に見えてくる。マジでディフェンスやり辛い!」
明智と木谷の駆け引きは続く。
木谷がシュートモーションに入った。
「打ってくる! いや、これもフェイク? でも、フェイクじゃなかったら? もうわけわかんないよ!!」
明智はシュートブロックのために跳んだ。
シュートフェイクに釣られた明智を出し抜き、木谷がドライブでインサイドに進入する。
そして一気にゴールしたまで進行すると、ヘルプのディフェンスが詰め寄って来ないうちに、シュートに跳ぶ。
しかし、だがしかし、棚田が間に合ってしまう。
このままではシュートがブロックされてしまう、そんな中、木谷はシュートのためにゴールへ向けていたレイアップの手を空中で一度引っ込め、別角度から棚田を避けるようにして、シュートを放った。
放られたシュートはまるでボールが意思を持っていて、自らゴールへと入りたがっているかのように、ゴールリングへと吸い込まれていった。
このシュートに再び会場が沸き立った。
「おおおおおおお!! 第2Q開始早々のダブルクラッチ!!!」
「翠央、全然負けてねぇ!!」
ダブルクラッチとはレイアップやダンクといったゴール下で行うシュートにおいて、それを放つ際、必ずディフェンスがついて回る。元々ついているディフェンスや、ヘルプで現れるディフェンスなどである。
そのためディフェンスもシュートを決めさせまいと必死にブロックへと跳んでくるわけで、そこでディフェンスを回避しながら、シュートを決めたいと思うのは当然である。
そこで用いられる技がダブルクラッチなのだ。
1度目のレイアップシュートやダンクシュートをディフェンスにブロックされそうになった際に、一度ボールを下げ、ディフェンスのいない角度から再び手を伸ばし2度目のシュートを決めるという技だ。
しかし、だがしかし、これは全て空中で行う必要があり、ディフェンスがブロックに跳んでから、自分が着地してしまうまでの極々限られた短い時間。そこでボールを一度下げて、再度放つというテクニックは頭でわかってはいても、なかなかに使いこなすのは難しい技である。
皆様、こんにちは。
日頃よりロウキュー娘を読んでいただきありがとうございます。作者の千園参です。
ここから怒涛の伏線ラッシュ……にはならないですかね。
ただ、実は既に第3章の構想はできていてるので、第3章に向けた匂わせ展開はいくつか出てきます。
ちなみに第3章の今のところタイトルは、
「Blue flame」です。
それでは読んでいただきありがとうございました!
次回もお楽しみに!!




