第49Q SuiO vs Amanoboshi Part 3
「やべぇ、昨日飲み過ぎたら寝過ごしちまったよ……」
二日酔い気味の神坂先生が重苦しい顔と、重い足取りで試合会場へとやってきた。
「うう……どっちが勝ってんだ?」
試合に目を向けると、激戦が繰り広げられている。
「やっぱ観に来て正解だったか。これが全国クラスの試合か」
1分程度試合を観戦すると、
「うっぷ! ダメだ、吐きそう………」
神坂先生は駆け足でトイレへと向かった。
シュパッ---
芦屋が放ったスリーポイントがゴールへと吸い込まれていった。
「おし、絶好調」
ガッツポーズと共にディフェンスへと戻る。
試合は天ノ星が5点のリードを保ったまま、進行していく。
「5点差で3分か、相手の実力を考えると不安な点数ではあるが、まだまだ焦る必要はない。落ち着いて返そう」
上木がそう言いながら佐伯にボールを渡す。
佐伯が木谷にパスを出そうとすると、木谷に対して明智と金木がダブルチームでディフェンスにあたっていた。
「もうっ! 邪魔デス!」
「アンタには試合が終わるまで大人しくしてもらうよ」
しかし、だがしかし、ダブルチームということは、1人がフリーになっているということ。
「舐められたものだ。佐伯殿、こっちでござる!」
そう声を上げたのは松風だった。
まさかの忍者キャラなのは意外であった。
「任せたよ、松風さん!」
「承知!」
松風にパスが渡った時、菊川が声を張り上げた。
「馬鹿野郎! この場面のダブルチームは自殺行為だぞ!!! 戻れ!!!」
「もう遅いでござる。拙者、シューティングガードゆえ、フリーでは決して外さぬ」
松風はスリーポイントを決めて見せた。
「忍、ナイスデス!」
「うぬ」
「松風、よく決めたな」
「松風さん、ナイッシュー!」
木谷、上木、佐伯とそれぞれが松風にハイタッチする。
「ディフェンスはともかく、攻撃力だけなら全国レベルだな。誰一人としてフリーにはできない。翠央か、ここで消えてしまうのは惜しいチームだな。まぁそれも仕方のないことか。勝つのは天ノ星だからな。そこに変更はない」
菊川が冷静に試合を見定める。
「私ならいつでも行ける」
そう言って隣に立ったのは、守城だった。
「いや、まだだな。翠央の弱点はまだある」
「なるほど、あのセンターか」
「そうだ、若林さんだっけか? タッパはそれなりにあるみたいだが、スクリーンアウトが甘いから棚田に押し負けてる。まだ試合開始して間もないが、うちの得点は棚田の押し込みからが多い。あのセンターが今な狙い目だ。突けるところはドンドン突いていい」
「お前って性格悪いよな」
守城は引いたように言う。
「ああ? そんな当たり前なこと今更言ってんじゃねぇよ。それにお前も人のこと言えるタチかよ? 勝負の世界で生きている人間は勝つための戦略を常に練っている。もちろん、そこには相手の弱点をつくことも含まれている。闘う奴は性格悪いくらいが丁度良いんだよ。優しくて相手の弱点つけないような甘ちゃんは勝負の世界に向いてねぇ。俺はお前たちを勝たせるためなら悪魔にだってなるぜ」
そう話す菊川の視線の先には何が映るのか。
「そうか。それで私はいつ出る」
「俺の策ではお前は第3Qからかと思ってるんだよな。第3Qで一気に差をつけるって作戦なんだが、今のメンツでどこまであの7番と4番のコンビネーションに対抗できるかによりけりだな」
「ふむ」
守城は木谷に目をつけた。
一方、その頃、この頃、あの頃、どの頃、コート内では翠央のオフェンスが展開されていた。
「相手のディフェンスもドンドン良くなってきている。というよりは、私たちの攻撃に対応してきている。天ノ星……強すぎる」
そう思いながらも佐伯は一瞬たりとも気を抜くことなく、パスコース、マッチアップしているディフェンスの隙、ポイントガードとして攻めの手を必死に絞り出していた。
すると、上木は強引に走り出した。
「スクリーン! あけちー、スイッチ!」
上木の意図に気づいた矢田が追いかけるのをすぐにやめた。
矢田の声かけが明智の耳に届くかどうかのギリギリのタイミングで、上木のスクリーンが明智を止めた。
木谷はその隙に佐伯からボールをもらい、スイッチした矢田と対面する。
「今度はあなたが相手デスカ」
木谷と対面した矢田は思った---
「完璧なトリプルスレッド、隙が一つも見つからない。近付けばドライブ、詰めなきゃまずいとわかっていても、間合いを詰められない!!」
「いいんデスカ? その距離で。なら、打っちゃいます!!」
木谷はスリーポイントを決めた。
そして棚田がリスタートさせたところで、第1Qの終了を告げるブザーが鳴り響いた。
「なんだか、観ているこっちも疲れる試合だね」
「そうですね」
第1Qが終了したことで、ボクと湊もふぅーと、一息ついた。
自分たちが試合をしているわけではないというのに両チームが放つプレッシャーが、会場全体に緊張感を与えていたのだ。
それにレベルの高いプレーの応酬に、息をするのも忘れるくらい見入ってしまっていたりもした。




