第48Q SuiO vs Amanoboshi Part 2
「佐伯、落ち着いて一本だ」
上木が佐伯にボールを渡しながら、声をかける。
「うん、一本!」
佐伯は人差し指を立てた。
「こっちデス!」
その直後、木谷が明智を振り切り、ボールをもらう。明智もすぐさま、ディフェンスにつく。
「抜かせるか」
「遅いデス」
明智がディフェンスについた時には既に明智は抜かれた後だった。
「え……嘘んっ!!?」
矢田と棚田がダブルチームでディフェンスに当たろうとするが、木谷はドリブルスピードを一気に殺し切り、ストップ&ジャンプシュートでゴールを決めてみせた。
「お返しデス」
「いいぞ木谷、ディフェンスだ! ここを守って追加点だ!」
木谷のキレのあるドライブとシュート、そしてコートにいる誰よりも走り、声を出す上木にチームは勢い付き始める。
ちなみにストップ&ジャンプシュートとは言葉の通りの意味で、キレのあるドライブから勢いを殺し切り、そこから最高打点でシュートを放てるジャンプシュートを打つ流れのことである。
ミドルシューターであれば、誰もが身に付けておいて損のない、どころかかなり重宝するスキルである。
一見、言葉だけ聞くと簡単そうにも聞こえる技なのだが、かなりの高等テクニックであったりもする。
では、ではでは、一体全体何体が高等テクニックなのかというと、それはドライブからのシュートという流れにある。
相手を抜くためのドライブとなれば、やはりスピードを必要不可欠となり、ボール無しの全力ダッシュには及ばずとも、気を張り詰めている相手の隙を付けるスピードは出ていると思っていい。そのドライブで相手を抜くと、必然的にディフェンスはヘルプがやってくる、もしくは抜いた相手が全力ダッシュで追いついてくることになる。
そこで求められるのが、相手を抜いたスピードを100とするならば、一気に0までスピードを落とし切ってからのジャンプシュートなのだ。
だが、そう言うのは簡単だがそのスピードをなかなかに0に落とし切るのが難しいのである。
ちなみに落とし切れないとどうなるのかということに関しては、スピードに乗せられて身体がシュートに跳んだ後も惰性で流れていくことになる。そうなってくると、ゴールへの狙いが正確に定まらなくなり、シュートを決めることができなくなる。
これがストップ&ジャンプシュートというスキルである。
「見事なストップ&ジャンプシュートだったね」
リスタートさせたボールをドリブルで運びながら、芦屋はそう思っていた。
「まぁいい、取り返せばその凄さは薄れるってもんだよ」
芦屋から棚田へ再びボールが渡る。
「ナイスパス」
先制点同様、ゴールを背にしてボールをもらい、ターンで体勢を変えてシュートかと思われた棚田のプレーだったが、ターンするその一瞬の隙を木谷がスティールした。
「マジか!?」
スティールされたボールを松風が捕まえる。
「走れ! 速攻だ!!」
上木の言葉に10人が一斉に走り出した。翠央の5人は点を取るために、天ノ星の5人は点を取らせないために、走り出す。
そしてボールは松風から木谷へ。
木谷はボールをもらうと、ドライブで金木と明智の2人をいとも容易く抜き去る。
「なんだよその速さは!」
「あり得ない……!!」
明智と金木はそれぞれそう思うしかない。
このままゴールかと思われた時、芦屋が凄まじいプレッシャーを放ちながら木谷の前に立ちはだかった。
「そう簡単には行かせない」
「ノンノンノン」
木谷は焦る様子を見せない。
そして芦屋を見たまま、パスを出した。
パスが出された先は木谷の斜め後ろを走っていた上木だった。
「よし!」
上木はそのままダンクを炸裂させた。
上木のダンクはチームを、会場を、大きく沸かせた。
「出た! 部長のゴリラダンク!!」
「部長! ナイッシューです!!」
賑わうベンチを上木は睨み付ける。
すると、ベンチは瞬く間に凍り付いた。凍てついた。
「ナイッシュー、ゴリラ」
佐伯がハイタッチをしに上木に近付くと、上木は、
「佐伯、お前も私に殴られたいのか?」
「ごめん………」
「イェーイ! ゴリラ、ナイスシュートデス!」
佐伯に続くかのようにハイテンションな木谷が上木に駆け寄る。
「木谷ぃいい!! 調子に乗るな!!」
ダンクと同様に、ゲンコツが木谷の脳天に炸裂した。
「ノォオオオオ!! 痛いデース!!」
「ほら、早く戻るぞ。敵はすぐに攻めてくる」
一連の流れを見ていた菊川は、
「やるな、あの7番に4番。7番のネーチャンは4番のゴリラさんのことを見てなかった。つまり走ってくることを信じていたわけだ。お互いを完全に信じ切ってるって感じの連携だな。
信じるってのは言うのは簡単だが、なかなかに難しいプレーだ。仮にお互い信じ合えていたとしても、そこからプレーを合わせるのだって難しい。お手本のような素晴らしいプレーだったな、今のは。よくわかったよ、強いな翠央。おい!」
長々と話した後にベンチの選手たちを見て、誰かを呼んだ。
だが、誰も反応を見せない。
「おい、反応しろよ。お前だよお前」
そう言っても誰も反応しようとしない。
「ったくよお、守城、お前だよ」
「ああ、私か」
「お前しかおらんだろうが、この局面」
「そうか、何か用か?」
「用しかねえよ。いつでも出れる準備しとけ、今回はお前の力が必要になりそうだ」
「わかった」




